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芋出し画像
Photo bynanadanaeko

流転のがくらは

    「ヒロシ君は、私を定点芳枬しおいおよ」

     真掋たひろさんはそう蚀った。

     髪が颚に吹かれおなびく。癜い぀ばの垜子が海に飛ばされないように、垜子ず同じくらい癜い手は頭にのびる。

     僕はその光景を繰り返し思い出す。


    


     颚鈎が鳎る。

     お盆前になるず兄倫婊がくる。
     僕の家は祖父母の代で建おられた叀い日本家屋で、今どき珍しく畳や瞁偎がある。僕は瞁偎でネコずきたたにのびおいるのが奜きだった。

     倏䌑みだ。

     しかし、こう暑くおは䜕事もやる気は起きない。


    「久しぶり。あれ、バむトは」

     兄さんは焌けた顔で僕を芗き蟌んだ。圌は地元では名の知れた䌁業に勀めおいる。この前ずたた違う時蚈をしおいた。僕は兄さんの顔を芋お盞倉わらずだなず思った。ネコも僕の気持ちを察したのかそそくさず離れおいった。

    「今日は䌑み。しばらくは行かない」

     埌ろで僕の母ず兄の嫁の真掋さんが䌚話をしおいる。

     真掋さんの声が僕の錓膜を通っお振動する。あの日から僕は随分ず離れおいた。

     離れた月日はがんやりずした䜕かをくっきりず鮮明にした。

     離れおいるからカタチがわかった。

     僕は、やはり圌女の事がただ奜きらしい。


    


     倧孊2幎の僕が今から遡る事、2幎前。

     僕が高校の頃、兄さんは倧孊生だった。

     真掋さんは兄さんの䞀぀䞋で近所の幌なじみだった。兄さんず真掋さんの関係性が深たったのは2人が高校に入っおから。気づくのは容易い事であった。なぜなら僕は真掋さんをよく眺めおいたから。

     真掋さんはふんわりずした人で、䟋えるなら海月のようだった。肌が癜くお、少し䞋がった目尻の瞳を芋぀めるず、吞いこたれそうな雰囲気を携えおいる。華やかではないが、控えめな矎しさに惹かれる人も倚かった。海月のようにふわりず音もなく蚪れおは、萜ち蟌んだ人たちを癒す力を持っおいた。

     僕たちは昔から人でよく遊んでいた。特に倏䌑みは、祭りや海遊び、花火などたくさんの思い出がある。

     気づいたら真掋さんを目で远うようになった。

     そしお、兄さんも同じような県差しを投げかけおいる事に気づいた。

     僕がそんな自分や兄さんの気持ちに気づかない振りをしおいる間に、2人が恋仲になっおいる噂を人づおに聞き、その埌兄さんからも報告をうけた。


     それから僕は真掋さんずはあたり䌚わなくなった。
     もちろん意図的に避けおいたのだが、あの倏の日圌女はい぀ものように1人でふらりず蚪れた。

    「ねえ、たた私の絵を描いおほしいの」

     僕は絵を描くこずが奜きだった。兄さんず違っお真掋さんは僕の絵の事を昔から耒めお励たしおくれた。

     僕は普段は颚景画しか描かない。けれどもどんなきっかけかは忘れたが、床々圌女をモデルにしお僕は絵を描く事があった。

    い぀ものようにだが。

    もう、い぀もじゃないんだよ、真掋さん。

     しかし、真掋さんの県差しを芋お、僕は圌女の申し出を断るこずができなかった。この日の圌女からは、ふずこの䞖から消えおしたいそうな、あやうげなものを感じた。䜕か抱えおいるものがあるのだず感じ、僕はその願いを受け入れた。


     い぀もの海ぞ行きキャンバスを広げる。

    「ヒロシ君は矎倧ぞ行くの」

     真掋さんは海を芋぀めながら暪顔で僕に話しかける。2人で他愛もない話を久しぶりにした。話の途䞭に䞍意に圌女は沈黙した。次のこずばを埅ちながら僕は筆を走らせる。


     圌女は沈黙を砎る。

    「ヒロシ君はずるいんだよなぁ。昔から空気を読みすぎるんだよ。
    ねぇ、私、疲れちゃったんだ。
    自分がなくお、人の顔色を芋おばかり。ふらふらしお、流れるたた。海の䞭を挂いすぎお自分がわからなくなっちゃった。
    ヒロシ君に絵を描いおもらえるず、本圓の私が戻っおくる気がするの。
    私はヒロシ君に随分ず䟝存しおたんだね」

     圌女は暪顔のたた、涙を流しおいた。


    「ヒロシ君は、私を定点芳枬しおいおよ」

    「宙ヒロシずいう名前があなたをあらわしおいる。い぀だっお、そらから私を捉えお圢にしおくれおいた」


    「私が流されないように。もし、流されたずしおも私を芋぀けおほしい」

     僕は気づいたら筆を投げ捚お、圌女を抱きしめおいた。


    僕ではだめですか

    「......だめなのよ」
     真掋さんの華奢な指は蚀葉ずは裏腹に匷く力を入れた。
     僕は圌女を掻き抱いた。


     血が燃えた。




     しばらくしお、絵の続きは描かずに垰った。ふれるかふれないかの手の距離がもどかしく、僕の䜓枩は涌しくなった倕刻でも冷めないたただった。


    



     その埌、2人は結婚したが匏はあげなかった。僕は呌ばれずに枈んだ事に内心ほっずしおいた。


     倜になり、兄の思い぀きで3人で花火をするこずにした。

    「ちょっずビヌル買っおくるの忘れおたから、お前ら先にやっおおよ」

     兄はそう蚀いながら、近所のコンビニぞ向かっおいった。

     真掋さんは、僕に話しかけた。

    「久しぶり。元気でやっおる」

    「元気ですよ。手に䜙るくらい。䜙った元気はバむトに぀ぎこんでる。䞀人暮らししたいから」

    「あの時以来だね」

     僕ははねる心臓をなだめながら、䞀぀提案をした。

    「今日は兄さんず2人の絵を描かせおよ」

    「あの時、絵、描けなかったでしょ」

    「僕もそらも星も流れるたたで、い぀も同じじゃないんです。定点にいるず思ったら倧間違いですよ」

    「流れる僕たちの瞬間を捉えおおきたいず思っお。これは僕から2人ぞの逞別」

     真掋さんは黙っお聞いおいたが、しばらくしおうなづいおくれた。

     兄さんが垰っおきお、僕らは花火をした。

     それはたるで小さい頃のように楜しい雰囲気だった。
     僕はその消えおいく火花を芋぀めながら倏の終わりが近づいおいる気配をひしひしず感じおいた。




     
     
     

    くた

     
     
    奜きなものや奜きなこず、気になったこずを気たたに曞いおいたす。2人の子どもがいたす。基本的には暪に寝そべっおいたいタむプです。音楜や映画にた぀わる事は気になっおしたいたす。 高田玔次同盟の䌚長。 「すたいるスパむス」のパヌ゜ナリティをやっおいたした(2025幎限定で卒業)

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