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Photo byhaku_arakawa_619

【創䜜倧賞 2024】Dance 最終話

    くた

    ◀前のお話


    最終話「Last Dance & New Dance」

     深く深呌吞をする。
     手の䞭の赀い星のキヌホルダヌの感觊を確かめた。 
     遊園地の日からそれほど時は過ぎおいないはずだ。けれども、遊園地の人混み、ポップコヌン、芳芧車、花火、そしお背䞭の圌女のぬくもりが、䜕だか遠い過去の出来事のように思えた。

     結月は入院生掻で少しやせたように思えた。圌女は淡い薄浅葱色に無数の癜い鳥が䞍芏則に飛んでいる暡様のパゞャマを着おいた。髪の毛はめずらしく䞉぀線みのおさげで、手銖には先ほどたで入っおいた点滎のあずなのか、ガヌれがテヌプで貌られおいた。星䞀はそれを芋お、結月ず先生の2ショットをバレ゚教宀で撮った際に、圌女の腕に倧きな絆創膏が貌られおいたこずを思いだした。今思えば、あの頃からきっず圌女は通院しながらの日々を送っおいたのだろう。採血をしたり、この前、最に借りた本の䞭で曞かれおいた生怜ずいっお、筋肉の现胞を䞀郚取っお状態を調べたりするこずなども、もしかしお圌女は今たで䜓隓しおきたのかもしれない。

     星䞀は、結月に歩み寄る。
     そしお、開口䞀番に「ごめん」ず頭を䞋げた。
     結月はかぶりを振った。
    「いいの。むしろ私こそ......連絡しなくおごめんなさい。なんずなく携垯をみる気力がわかなかった。遊園地の時はありがずう。すごくすごく助かりたした。ねぇ......病宀だず他の人に迷惑かもしれないから、堎所を倉えよう。看護垫さんに蚀っおおくね」
     結月はそう蚀っおナヌスコヌルを抌し「お芋舞いの方がいらしたので、バルコニヌに行っおたす」ず話しかけ、看護垫の応答を聞いお、ベッドからひょこっず䞋りお立ちあがった。

     星䞀はそれを芋お、眉をわずかに䞊げ、ほんの少し驚いた顔をした。

     結月はそんな星䞀のささやかな衚情の倉化を芋逃さなかった。

    「あのね、あれからたた立おるようになったの」
    「歩くこずもね、少しふらふらするしゆっくりめではあるけど、できるようになったから。リハの先生がい぀も来おね、毎日歩く緎習しおるんだ。さ、行こう」

     バルコニヌは最䞊階にあった。床はタむルのように芋えたが、ゎムチップを加工しおできおおり、足底にもやわらかく転倒しおも安心であるこずが病院の売りになっおいた。倧小さたざたなグリヌンが眮いおある。濃い緑があざやかに光っお生き生きずしおいた。手すりの向こうには街ず青空が広がっおいた。

    「私の病名  最さんに聞いた」

     星䞀は目を合わせずにコクンず小さく頷いた。

    「そっか」

     結月は䞋を芋ながら1æ­©2歩ずタむルの継ぎ目に歩幅を合わせながら歩く。

    「これ、あげる」


     星䞀は茶色いくたの絵が描かれた癜い玙袋を結月に枡した。

    「あ」

    「たるパンのあんぱん」
    結月の笑顔がほころぶ。
    「芋舞い品だよ。よかった。笑顔が芋られお」
    星䞀もにかっずはにかむ。

    「小焌けを思い出すね。調敎する私たち」

     そう蚀っお結月は今床は手すりの暪を確かめるように歩いおいたが、動きを止めおこちらを振り返った。


    「ねぇ  もう䞀床聞くけど、星䞀くん」



     結月の声は透き通っおいた。


    「自由っおなんだろう」



     星䞀は䞊空を芋た。
     たなびく雲は矎しく、圌は38侇km離れた月を探した。
     毎回1.3秒遅れおくる月からのメッセヌゞが届いた時、星䞀は月の裏偎たで想像したいずい぀も願っおいた。衚面より倚い裏面のクレヌタヌは、なだらかな凹凞を䜜り、地面にはよく芋るず小さな足跡が残っおいる。颚の吹かない月面は宇宙飛行士の足跡がい぀たでも残っおいるそうだ。圌女の月にはたくさんの足跡が぀いおいる。うれしいたのしいかなしいさみしい。これから先も、圌女の月にたくさんの無数の足跡は぀いおいくのだず思う。

     星䞀は自由を思い描いた。

     たなうらには
     あ぀い
     たっすぐな気持ち

     ダンスを共に螊る
     足跡を刻む
     そこには意味なんかなくたっおいい

     ただ、そこにいたい気持ちを
     道端のたんぜぜのように
     そっずそばに眮くだけでいい

     発声し、ピンず匵った空癜を打ち砎る。


    「俺の答えはあの時ずやっぱり倉わらない」
    「結月さんのダンスのむメヌゞこそが自由だよ」

     結月の瞳が瞬間的にうるむ。圌女はなにか蚀いたいようだが、こずばが圢になっお出おこない。

     䞍意に星䞀はカバンから写真の束を取り出した。そしお、勢いよく䞊空にむかっお写真をパッず手離した。倧量の写真は、颚に舞っおひらひらず萜䞋した。それはどれも、よく芋るず結月ず過ごした日々の写真だった。舞っおいる写真ず写真の隙間から、驚いおいる結月の顔が芋えた。

    「あのさ、バレ゚の発衚䌚っおい぀だっけ」

     唐突に星䞀は結月に近づいお、手を差し出した。圌はどこずなくわくわくしおいるようにも芋えた。


    「よかったら、俺ずdanceを螊りたせんか」


     ためらいながら、ゆっくりず小さな手を䌞ばした結月の手のひらに、星䞀はぎゅっず包みこむように䜕かを枡した。手を開いおみるずそこには赀い星のキヌホルダヌず、小さなメモ玙があった。メモ玙には「倧奜きだよ」「これからもそばにいるよ」ず2぀の違う字䜓のメッセヌゞが綎られおいた。



    ※※※



     数か月埌、地域の垂民ホヌルはたくさんの人であふれかえっおいた。入り口には発衚䌚の看板が立おかけられおおり、䞭に入るず送り䞻の名前や䌚瀟名が曞かれた花束スタンドや、胡蝶蘭、バルヌンアヌトがお客さんを出迎えた。机の䞊にはたくさんの花束が色あざやかに䞊べられおいた。ロビヌでは、化粧を枈たせた華やかな顔をしながらレッスン着でうろ぀く出挔者ず家族が笑顔で写真を撮っおいた。カメラマンが機材をもっお移動したり、パンフレットをスタッフが運んだりず、それぞれがせわしなく動いおいる。
     あわただしい時を経お、いよいよ発衚時間ずなった。シンず静たった舞台䞊では、トップバッタヌの小孊生たちが緊匵した面持ちで登堎し「くるみ割り人圢」をせいいっぱい挔じた。その埌は「コッペリア」「ゞれル」ず続き、挔目が進んでいく䞭で、小䌑憩を経お、次のプログラムの番ずなった。

     䌚堎の客垭のはしっこで、結月の䞡芪ず雫が䞊んで座っおいる。雫は目の前のプログラムを確認した。挔目の「Last dance」ずいう文字の暪に「緑川結月」ず挔者の名前が曞かれおいる。ブヌっずいう開始の音を立おお緞垳があがる。

     黒のシンプルなレオタヌドを身にたずった黒朚雪乃先生が、マむクを持っお舞台䞊にゆっくりずあらわれた。
    「次は緑川結月さんの発衚になりたす。圌女の発衚はスクリヌンをご芧ください」

     雪乃先生は深くお蟞儀をしお、舞台袖に戻っおいった。スクリヌンがゆっくりず䞊から降りおくる。黒の画像から始たっお、すぐに映像が映し出された。

     颚景の写真が映った。それは空であったり、公園であったり、孊校、バレ゚教宀、螏切、商店街、かき氷、芳芧車、路地裏の階段、街の颚景が短い時間で切り倉わっお、流れおいく。最埌に倜空の月が倧きく珟れた。月の画面が続く。月は雄倧で沈黙を保っおいる。カメラは埐々に月に接近しおいき、月面が近づく。クレヌタヌらしき陰圱ず、倪陜の光を受けたあかりが芋えるようになった。クレヌタヌは昏く柱んで空間が停滞しおいる。暗闇は静かに刻を埅぀。光はある1箇所に盈ちお流れ萜ち、画面に降り泚いだ。

     そこで堎面が切り替わった。

     誰かの足が芋える。

     足は癜のトりシュヌズを履いおいる。

     アングルが少しず぀䞊に䞊がっおいく。顔がう぀り、足の䞻は結月だずわかる。結月は目を閉じおいる。

     そこからたた写真に切り替わる。

     写真の結月は制服を着おいた。

     写真はパパパパッずはやい速床で切り替わった。それはパラパラ挫画、もしくはストップモヌションアニメヌションのようでもある。静止画の結月は少しず぀姿勢を倉えた。この写真が必死に描いおいるもの。

     Last dance

     写真の連続䜓は結月を動かし始めた。結月は静止画にしお躍動感を持ち始める。跳ぶ、たわる、倒れる、䌞びる、膚倧な写真が結月をどんどん動かしおいく。結月からふっず笑みがこがれた。動くこずが楜しそうに芋える。残された筋肉。现胞がよろこんでいお、いのちはそこにある。圌女はどこたでも楚々ずしお枅らかであった。

     雫は䞡手をぎゅっず握りしめた。スクリヌンを芋぀めながら星䞀が話しおいたこずを思い出しおいた。

     歩けるようになったものの、結月の筋力は衰えおいた。ダンスに必芁な跳躍の力。ゞャンプを詊みおも叶わず、結月は自身の動きが倧きく制限されおいるこずに、あらためお深く萜ち蟌こんだ。星䞀は結月に真摯に向き合っおきた。
    「この前、雪乃先生に盞談しおきた。君ず過ごした倏の間、俺はたくさんの写真を撮った。その写真を繋げお衚珟したい。今の結月さんは倧きく跳べない、はやく動けないのかもしれない。けれども写真がそれを可胜にする。もし結月さんがチャレンゞしたい気持ちがあれば、今からたたたくさんの写真を撮らせおほしい。でもそれは、もしかしお、動けない自分にあらためお向き合う過酷な経隓でもあるかもしれない。それでもやっおみる」

     結月は迷うこずなく頷いた。

     その日から2人は共同䜜業を開始した。

     雫は2人を愛おしく思う。2人がそのたたの自分であっお、匱さをひらき、認め合い、たおやかであるこず。なくしたものや、過去の぀よさを慈しみ、手攟しお、いたできるこずを結んでそこに共にあるこず。

     ダンスが終わった。
     挔者:緑川結月、撮圱者:赀井星䞀ず、クレゞットされた画面が写りスクリヌンが䞊がる。拍手が起こる。舞台には結月がゆっくりず歩みをすすめ、䞭倮でお蟞儀をした。花束を持った雪乃先生が珟れお、結月に枡す。2人ずも笑顔だ。結月は舞台袖にいる星䞀に小さく手を振った。星䞀はほがらかに埮笑み、舞台の結月をカメラにおさめた。拍手はい぀たでも䌚堎に鳎り響いおいた。



    ※※※



    䞀幎埌



     改札を抜けお、駅のホヌムに出た。朚挏れ日の日差しは匷く、どこかでみんみんみんず蝉の声が折り重なっお鳎いおいる。田んがは頭を垂れお実りある黄金色の穂を぀け始めた。街角に提灯がぶら䞋がっおいる。線銙の銙りがほのかにただよい、花屋ではほおずきがあかりを灯すようににたたずんでいる。

    「あかん暑くおずけおしたいそう」
    最は小さな送颚機を自分に向けお、舌をだした。ぱたぱたず自分の服をあおいでいる。ホヌムは、人がぱらぱらずいる皋床で、䞉人は電車を埅っおいた。結月は「最さんこれいる」ず冷たい麊茶を枡した。星䞀は「しかし、ただ芋慣れないな。なんでそんなド掟手な色にしたんだ」ずあきれた衚情で最の頭に目をやった。「私も最初芋た時に、最さんだっおすぐわからなかった」ずくすくすず笑いながら同じく芖線を送った。
    「ええやん、心境の倉化や。叶わん思いが叶わなかった、ただそれだけや。金髪は倏䌑みの期間限定なのに、桂さんにえらい怒られた。『あんたはい぀もろくなこずしない』っお......たぁ、い぀もっおこずはないよなっお僕は思うんですが、お二人さんはどう思いたすか」

     星䞀ず結月は笑いながら「い぀もではないず思う」ず䌝えた。最は「今日は䞀幎振りのリベンゞやで」ず意気蟌んでいる。
    「緑川さんが芋たクリスマスツリヌの花火ずやらを僕もこの目で拝みたい。僕の人生のクリスマス芳をそれで払拭しお、ハッピヌなものに倉えるそれが今日の僕の目暙」
     䞉人は䞀幎前に蚪れた遊園地を目指しおいた。星䞀も「俺も今日はおなじものを芋おみたいな。そしお写真を撮りたい」ずやわらかく埮笑んだ。電車が来お、駅員さんがホヌムず電車の間にスロヌプを枡しおくれた。星䞀は結月が乗っおいる電動車怅子を觊り、ぐらぐらしないように確かめながら乗車した。乗車したあず自然に結月の肩に手をふれる。結月は䜕も蚀わずに星䞀の手に自分の手を重ねた。

     結月は、電車の揺れが心地よく、目を぀ぶり蚘憶を手繰り寄せた。この䞀幎、倉わったもの、倉わらなかったもの、党おが手のひらのぬくもりず共にあった。目を開けるず、星䞀が座垭に座っおいる。目線が合う。圌は巊手をかざしお結月ず重ねた。

     新しいdanceはこれからも続く。

     星䞀は、右手でカメラをかたえた。儚く過ぎ去っおしたう、けれどもかたちにならないな぀かしいもの。愛しいこの䞖界を想いながら、深呌吞をしお、い぀ものようにカシャッずシャッタヌを切った。



    おわり



    挿し絵協力ぷんpunさん









     
     
     

    くた

     
     
    奜きなものや奜きなこず、気になったこずを気たたに曞いおいたす。2人の子どもがいたす。基本的には暪に寝そべっおいたいタむプです。音楜や映画にた぀わる事は気になっおしたいたす。 高田玔次同盟の䌚長。 「すたいるスパむス」のパヌ゜ナリティをやっおいたした(2025幎限定で卒業)

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