
朝の勇者
平日の朝。
わが家は闇に包まれる。
妻の……機嫌が悪いのだ。
ボクの起床から遅れること10分。
妻が魔王のごときオーラを放ちつつ起きてきた。
その目はすでに死んでいる。
「おはよう」を言うのも憚られるほどのご機嫌ななめっぷり。ななめ過ぎてひっくり返りそうになる。
決して怒っているわけではない。
ただただ暗く、空気が重いのだ。
このボクですら話しかけるのを躊躇するほどに。
触らぬ神に祟りなし。
ボクは空気となり気配を消している。
朝のボクは無力だ。
時が過ぎ去るのをじっと待つことしかできない。
だが──
この朝の魔王に唯一対抗できる者がいる。
ボクにもできないことを平然とやってのける者。
それは…
─ ビーグルの勇者 ─
モンちゃん‼︎

モンちゃんは躊躇なく魔王に近づき、心の扉を鼻先でこじ開ける。
尻尾をブンブン振り回しながら、無邪気にペロペロ攻撃!

たまらず魔王の手が動き、モンちゃんを撫でてしまう。
その瞬間、闇は晴れ、妻の口元に笑顔が戻る。
ああ、勇者モンよ。
ボクでは救えない朝を、そして妻を、毎日おまえが救ってくれている。
ありがとう。
これからもお母さんこと…頼んだぞ!

〜おまけ〜
最近、モンちゃんは引戸を開けることを覚えた。
その先にあるのは、魔王が眠る寝室。
ある朝、ボクがちょっと目を離した隙に
トントコトントコ……
階段を上がる音が聞こえた。
しばらくすると、二階から声が。
「モンちゃ〜ん♡ わかったわかったぁ
ん〜ん〜(たぶんペロペロ攻撃されてる)
はいはい起きるって〜!」
ニコニコ顔で妻が下りてきた。
わが家の朝に、平和が訪れた瞬間だ。
ありがとうモンちゃん。
おまえがナンバーわんだ。

〜さらにおまけ〜
いちおう妻の名誉のために言っておこう。
この魔王は平日限定で現れる。
休日は女神のようにごきげん麗しい妻。
朝からニコニコハイテンションガールである。
ああっ女神さまっ
生きるって大変ですね。
