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「花腐し」(備忘録的感想)

※2023年12月執筆

映画を観終わった後で調べたところ、原作はフランス文学者の松浦寿輝が芥川賞を受賞した作品との事だ。
かなり話題になっているので期待して観に行ったが、期待以上の作品だった。

2012年、ピンク映画の監督と女優が心中する。
死んだ監督の桑山の親友で、自身もピンク映画の監督である栩谷(綾野剛)は女優の実家の葬儀に赴くが、女優の両親から罵声を浴びせられ、けんもほろろに追い返されてしまう。
女優の両親は桑山と娘が付き合っていたと勘違いしているが、娘の祥子(さとうほなみ)と同棲していたのは死んだ桑山ではなく栩谷だった。

栩谷は次に桑山の通夜の会場を訪れる。
通夜振る舞いには映画関係者が多数参加しており、現在の映画制作の厳しい環境を嘆いていた。
栩谷も、予算が集まらずに何年も映画を撮っていない。
制作会社の社長の小倉(赤座)も、もう会社をたたむしかないとため息をついていた。

栩谷は家賃の支払いにも窮しており、ある日大家(マキタスポーツ)から呼び出された。
大家は栩谷に、古いアパートを建て替えるのだが、一人だけ立ち退きに応じず居座っているヤツがいる、彼を追い出してほしい、と言った。
栩谷は大家の指示で古アパートを訪ねる。
そこには伊関(柄本佑)という男がいた。
部屋に置かれたノートPCを見ると、ディスプレイに書きかけの脚本が映っており、伊関はかつて脚本を書いていたことがあるという。
栩谷は伊関と映画について話をはじめ、やがてお互いが付き合っていた女について語り始めた。

どこまでが原作に忠実かわからないが、プロットがかなり詳細に練りこまれた作品だ。
二人が付き合った女はどちらも祥子で、上京して小さい劇団に所属していた時期に伊関が付き合っており、伊関と別れた後に栩谷と付き合うようになる。
しかし二人は、物語の中盤まで自分が話している過去の女が、相手とも付き合っていたことに気づかない。
栩谷と伊関が飲みながら祥子の事を語るが、その現在のシーンはモノクロで、二人が祥子と暮らした過去のシーンがカラーで表現されているため非常にわかりやすい。
綾野剛と柄本佑が飲みながら語るシーンは、非常にリアルな演技であった。

そして特筆すべきは祥子役のさとうほなみの演技だろう。
ポルノ映画の女優という設定でもあるため、何度も、しかもかなり過激なSEXシーンがある。
だがしかし、単純にSEXを見せるというだけではなく、祥子が女優としての矜持を持っているという部分がよく表現されていた。
伊関と暮らしていた頃と栩谷と暮らしていた頃で、祥子の人生観が変わっていることも伝わってくる。
そして最後に栩谷ではなく桑山と心中した理由も、演技から想像することができた。
少々ネタバレになるが、この祥子の心情変化が、ラストの栩谷の虚無へときれいにつながる。

難をあげるとすれば、冒頭の映画界の状況に対する愚痴のオンパレードだろう。
原作にはない部分で、監督が自分の体験談を元に書き加えたらしい。
このシーンを強調する事で、栩谷、伊関、そして死んだ祥子と桑山の心理を表現したかったのかもしれないが、ハッキリ言って少々くどくて鼻についた。
祥子は舞台女優出身で映画にこだわっていたわけではないから、映画界についての通夜振る舞いでのケンカは、祥子の心情を強調しているとは言い難い。
蛇足と言わざるを得ないだろう。

しかしそれ以外は、かなり完成度の高い作品だと思う。
これも少々ネタバレだが、ラスト直前に祥子ではない女性たちのエグいSEXシーンがあるのだが、これも栩谷の虚無へきちんと落とし込まれていた。
個人的にはかなり好きな作品だ。


128.花腐し

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ラーメンと競馬と映画がたまらなく好きです。 こんな辺境の文章を読んでいただきまして、本当にありがとうございます!

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