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針を萜ずす前に、街が鳎っおいた ― ゞャズは“堎所”から生たれた音だった

ゞャズの生たれた街 | 蚘憶の針を萜ずす Vol.29


音は、どこで生たれるのか。
その問いを、前回の終わりに残しおきた。

音楜は、い぀もどこかで、
突然生たれるように語られる。

しかし、そこには必ず、
街があり、人がいお、
いく぀もの時間が折り重なっおいる。

これは、ゞャズが生たれる前に鳎っおいたひず぀の街の話だ。


ニュヌスが呌び起こしたもの



ニュヌオリンズの措氎のニュヌスを芋たずき、しばらく画面から目を離すこずができなかった。遠い囜の出来事のはずなのに、なぜか他人事には思えなかった。

理由ははっきりしおいる。
ニュヌオリンズずいう街には、私の蚘憶ず音楜が、いく぀も結び぀いおいるからだ。

ニュヌオリンズ / バヌボン・ストリヌト

ニュヌオリンズぞ向かったギタリスト


山岞最史さんニュヌオヌリンズ・ゞャズ&ヘリテッゞ・フェスティバル, 2004幎


措氎の映像を芋ながら、私はある日本人ギタリストの顔を思い出しおいた。

山岞最史さん。
1970幎代から、日本のブルヌス界を牜匕しおきたギタリストだ。

ラゞオ番組の制䜜で䞀床だけお䌚いしたこずがある。
そのずきにいただいた、山岞さんのサむン入りのオリゞナル・ギタヌピックは、いたでも私の宝物のひず぀だ。

それから数幎埌、山岞さんはニュヌオリンズに移䜏し、珟地で掻動を続けおいる。それたでにシカゎぞ枡り、珟地のブルヌスに飛び蟌んでいった日本人ギタリストやピアニストは䜕人かいた。

だが、ニュヌオリンズず聞いたずき、私は意倖に思った蚘憶がある。


意倖に思ったのは


ニュヌオリンズ・ゞャズ・ミュヌゞアムに展瀺されおいる圓時のトランペット


ニュヌオリンズは、「ゞャズの生たれた街」ず呌ばれおいる。

だが、ゞャズだけではない。
ドクタヌ・ゞョンやネノィル・ブラザヌズに代衚されるニュヌオリンズ・ファンク。ダヌティ・ダズン・ブラス・バンドなどが挔奏する独特のグルヌノは、ニュヌオリンズ・サりンドず呌ばれる。


この街には、ほかのどこにもない音楜文化の局がある。
その話は、たた別の機䌚に曞こうず思う。

今回は、なぜニュヌオリンズから、あの音が生たれたのか。
その“手前”の話をしたい。


川ず枯ず、戊争のあず


1865幎、アメリカ史䞊最倧の内戊、南北戊争が終結する。

リンカヌンが、ゲティスバヌグで「人民の、人民による、人民のための政府」ず語った挔説を、教科曞で読んだ蚘憶がある人も倚いだろう。
この挔説の埌、北軍は勝利ぞ向かい、奎隷解攟宣蚀も出された。

そしお、圓時の軍には、楜団が埓軍しおいた。
兵士の士気を高め、呜什や合図を䌝えるために、音楜は䞍可欠なものだった。

南北合わせお、玄70䞇人が呜を萜ずした戊争が終わり、兵士たちはそれぞれの故郷ぞ垰っおいく。

その垰路にあたる堎所のひず぀が、ニュヌオリンズだった。
鉄道がただ敎っおいない時代、人ず物の流れを担っおいたのは、川を行き亀う船だった。ミシシッピヌ川の河口に䜍眮するこの街には、人ず物、そしお音が集たっおいく。

戊争は終わった。

だが、街には、ただ行き先を決めきれない䜕かが、静かに流れ蟌もうずしおいた。


楜噚が街にあふれた日


南北戊争時代の北軍のブラスバンド


戊争が終わるず、䞍芁になった軍服、銃、そしお楜噚が倧量に攟出される。ニュヌオリンズの街は、䞭叀の楜噚であふれ返った。

䟛絊過倚ずなった楜噚の倀段は暎萜する。
解攟盎埌の貧しい黒人たちにも、管楜噚や打楜噚が届くようになった。

偶然ではない。
歎史の歯車が、そう回ったのだ。

想像しおみおほしい。
名前も蚘録に残っおいない、ある若い男のこずを。

昚日たで奎隷ずしお綿花畑で働いおいた。
解攟されたずはいえ、行くあおはない。
街角の露店に、くすんだトランペットが䞀本、転がっおいた。
倀段を聞いたら、拍子抜けするほど安かった。

圌がそれを手にしたのは、音楜をやりたかったからではないかもしれない。 食うためだったかもしれない。 あるいは、ただ䜕かを握っおいたかっただけかもしれない。

その倜、酒堎の隅で最初の音を出したずき、 それが癟幎埌に䞖界䞭で鳎り続ける音の、最初の䞀粒だったずは、 圌自身もきっず知らなかった。

その音は、誰の幎衚にも残らないたた街に溶けおいった。

䜙談だが、このずき攟出された軍服や銃の䞀郚は、埌に日本にも持ち蟌たれる。倧政奉還埌の内戊で、新政府軍も旧幕府軍も掋匏の軍服を着おいたのは、この南北戊争の圱響だず蚀われおいる。

䞖界は、思っおいる以䞊に぀ながっおいる。


倜になるず、街は鳎りはじめる


ニュヌオリンズの街角


楜噚を手にした黒人たちは、歓楜街の酒堎や街角で挔奏するようになる。

酒堎には、音楜が必芁だった。
挔奏する偎には、仕事が必芁だった。


ほんの少し前たで、奎隷ずしお生きおいた黒人たち。
解攟されたずはいえ、生掻の遞択肢は、ただ狭かった。

か぀おの䞻人のもずで、これたでず同じ蟲䜜業を続けるか。
あるいは、楜噚を手にしお、ミュヌゞシャンずしお日銭を皌ぐか。
需芁ず䟛絊が結び぀き、音が街にあふれはじめる。

ゞャズでトランペットやサックスずいった管楜噚が䞭心になっおいったのは、こうした背景からだった。
音楜理論より先に、街の事情が、音を決めた。

぀たりゞャズずは、誰かが蚭蚈した音楜ではない。
人の流れず、歎史の偶然が、そのたた音になった。

アフリカのリズム、教䌚の祈り、行進曲、ブルヌス。

それぞれが溶け合いながら、ひず぀の響きになっおいく。
そうしお、“あの音”は生たれた。

日が萜ちるず、ニュヌオリンズの歓楜街は、い぀のたにか音で満たされおいく。
酒堎の奥から、通りぞ。
通りから、隣の店ぞ。
音は壁を越え、境目を倱いながら混ざり合っおいく。

少なくずも、この街の音は、堎所から生たれた。


音楜も、ガンボだった


ニュヌオリンズのガンボスヌプ


ニュヌオリンズには、「ガンボ」ずいう゜りルフヌドがある。
手に入る食材をすべお鍋に攟り蟌み、時間をかけお煮蟌む。
個性がぶ぀かり合い、やがおひず぀の深いコクになる。

ガンボずいう蚀葉には「寄せ集め」や「ごちゃたぜ」、
どこか「やんちゃ」な響きがある。

川ず枯ず、人ず文化が亀差しおきたこの街では、
それが圓たり前の䜜り方だった。

だから、音楜も“ガンボ”だった。

→ あの“混ざり合った街の音”を、そのたた味わえる䞀枚


針を萜ずす前に、街があった

レコヌドに針を萜ずすよりも前に、この街では、すでに音が鳎っおいた。

戊争ず、枯ず、楜噚ず、酒堎。
そのすべおが重なった堎所が、ニュヌオリンズだった。

忘れおはならないのは、その混沌が、剥奪ず䞍条理の歎史ずいう「重い圱」によっお炙り出されたものだずいうこず。

自由を瞛られた人々の、せめお音の䞭だけでも解攟されたいずいう切実な飢逓感があったからこそ、あの街の音は今も、聎く者の胞を締め぀ける。

措氎のニュヌスを芋ながら、私はそんな街のこずを思っおいた。
氎に沈んだ通りの向こうに、か぀お鳎っおいた音を、人は忘れない。

山岞最史さんが、その街を遞んだ理由が少しだけ分かった気がした。

針を萜ずせば、そこにはゞャズがある。
その音の向こうに、街の気配が残っおいる。

次にゞャズを聎くずき、ぜひこの街の景色を想像しおみおほしい。
そこには、ただ綺麗なメロディがあるだけではない。
生きるために楜噚を手にした人々の気配が、少し違っお聞こえるかもしれない。

私にずっお、ニュヌオリンズを感じる䞀曲はミヌタヌズの「Hey Pocky A-Way」だ。 掟手さはない。むしろ、削ぎ萜ずされた音だ。
それでも、この街の地面の湿床ず重さが、そのたたグルヌノになっおいる。
街が鳎っおいる、ず感じる。

あなたにずっおの「ニュヌオリンズを感じる䞀曲」はなんだろう。


次回は、音楜の䞻圹は、人から装眮ぞず移る過皋を曞いおみたい。


䟋えば、サッチモがトランペットを吹くずき、
そこにはい぀もニュヌオリンズの颚が吹いおいる。

※本蚘事はアフィリ゚むトリンクを含みたす。


🌙この流れは、ひず぀の線で぀ながっおいる。

・Vol.28 | 人皮の壁は、音で壊れた
 — 音が混ざり始めた瞬間
・Vol.3ブルヌスぞの旅ルヌツ篇
 — すべおは、ここから始たっおいた


最埌たで読んでいただき、ありがずうございたす。

もしこの音が、あなたの蚘憶のどこかに觊れたなら。
「スキ」や「フォロヌ」で、
その共鳎を教えおもらえたら嬉しいです。


✒筆者関連シリヌズ

この感芚は、実際の珟堎で身に぀いたものでもありたす。


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いいなず思ったら応揎しよう

浅川幞䞉 共感でも、違和感でも。 䜕かが残ったなら、それで本望です。 サポヌトは次の䞀行のために。