
第3話「ヒマワリの種」 — 現行犯・男の告白・結末

現行犯だった。
通報は近隣住民。 「また、あの家から土を掘る音がする」と。
夜中の庭。 スコップを振り下ろしていたのは、ひとりの男。
逃げる様子はなかった。 むしろ、来るのを待っていたように手を止めた。
「……遅かったですね」
男はそう言って、乾いた手で土を払った。
掘り返された地面から出てきたのは、人骨だった。
しかも、一体じゃない。
二体、三体――
そのすべての“胸のあたり”に、 何かが埋め込まれていた。
黄色く、乾いた――ヒマワリの種。
「なんで、こんなことをした」
刑事が問うと、男は少しだけ笑った。
「育ててたんですよ」
意味が分からなかった。
「ちゃんと選んでるんです。 “戻ってきたがってる人”だけ」
「……何を言ってる」
「ヒマワリ、知ってますよね」
男は、掘り返した土を指でなぞりながら続けた。
「太陽の方を向く花。 でも、本当は“光”じゃなくて―― “記憶”を追ってるんです」
男の供述は、終始、淡々としていた。
死者の胸に種を埋める理由。 埋める場所。 選ぶ基準。
すべてが、妙に“整っていた”。
「芽が出るんですよ。 ちゃんと、あの人たちの場所から」
男は、庭の奥を見た。
そこには、いくつものヒマワリが咲いていた。
季節外れの、満開。
鑑識の結果、 遺体と植物の関連性は否定された。
科学的には、ただの偶然。
ただの、異常者の犯行。
――そう処理された。
だが。
後日、押収品の中から一枚の写真が見つかる。
咲き並ぶヒマワリの前で、 知らない人間たちが立っている。
笑っている。
全員、身元不明。
ただ一つ、共通していたのは――
全員が、“失踪者”だったこと。
写真の裏には、こう書かれていた。
「帰ってきただけです」
事件は、それで終わった。
庭は更地にされ、 ヒマワリもすべて処分された。
けれど。
数ヶ月後。

何もないはずの土地に、 一輪だけ、花が咲いた。
誰も植えていない。
誰も水をやっていない。
それでも、その花は
ずっと同じ方向を向いていた。
――まるで、誰かを見ているみたいに。