【過去話まとめ】ちょっと元気になれる3話
今日の気分で歩く3つの物語
今日ご紹介するのは、
ちょっと笑えて、心が少し軽くなる森の3話。
マダム・ザマスの講座と、メイとお嬢様が少しずつ仲良くなっていくお話です。
□ 1. レシート大作戦
ここは森のはずれにある、
マダム・ザマスの自宅兼教室。
今日も朝からマダムの声が高らかに響き渡る。
「さあっ、森の住人たち。
今日はレシート大作戦ザマス!」
参加者の机の上には、各自が自宅から集めてきたレシートの入った袋が並んでいる。
モコは、周囲を見渡しぽつりと言った。
「……これ、見たことあるモコ。
メイの家にいっぱい落ちてるモコ」

「ちょ、ちょっとモコ!」
メイが慌てて、モコの口をおさえる。
教室に、小さな笑いが走った。
◾️マダム・ザマス式3分類とは
マダム・ザマスは、目の前に3つの箱を置いた。
「さあっ!森の住人たち。
今日はレシートを3つに分けるザマス!」
「あれ?たったの3つでいいんですか?」
メイが反射的に尋ねた。
「いい質問ざます」

◾️なぜ3つでいいのか
食費、日用品、外食、趣味、服……
細かく分けようと思えば、いくらでも増やせる。
「初心者が一番つまずくのは、項目の多さザマス!」
メイが、はっとした顔をする。
「途中で止まってそのまま放置するやつ……」
マダムはうなずく。
「だから最初は、3つで十分ざます」
マダムは黒板に大きく書いた。
① 毎月、勝手に出ていくお金(固定費)
家賃、光熱費、通信費、保険、サブスクなど。
② 生活を回すためのお金(変動費)
食品、日用品、交通、仕事、病院など。
③ 感情が動いたお金(感情費)
外食、カフェ、旅行、推し活、便利家電など。
メイが、レシートを一枚つまむ。
「じゃあ、夕方になると疲れてお弁当で済ませちゃうのは……」
「感情費?」
「そうざます」
「じゃあ、無駄遣いってことだよね?」
マダムは首を振った。
「違うざます。疲れた自分を助けるためのお弁当なら、それは無駄遣いではないざます」
メイが、自分のレシートを見る。
「じゃあ……、
感情費って悪いお金じゃないんだ」
「もちろんざます」
レシートを見るときに大切なのは、
「これは無駄」と裁くことではない。
「お金が、どこへ流れているのか」
まず、それに気づくこと。
「今日は3つに分けただけで合格ざます!」
マダムはいつも厳しい。
でも、メイはなぜか少しだけ肩の力が抜けた。

□ 2. メイのちょっと得した日

メイの部屋には、相変わらず服や未開封の雑貨が散らかっている。
でも、レシートだけは違った。
家計講座に参加し、透明な袋に入れるようにしてから、床に散らからなくなっていた。
「これ、家計のためっていうか、部屋の治安が守られてない?」
「一石二鳥じゃん!」
メイは袋を軽く抱え、
ちょっと得した気分になる。
その日の週末。
「マダム〜、最近前より散らからなくなったんです。レシート大作戦のおかげかも!」
マダムは穏やかに微笑んだ。
「いい変化ざます。家計は数字だけではなく、
生活動線の問題ざますから」
メイは笑顔でうなずいた。
ある日──
久しぶりに街を歩いていたら、
たまたま可愛いお店を見つけた。
ガラス張りの小さな店で、
棚には色とりどりの焼き菓子。
クッキーも、ケーキも全部、
ちょっとどころじゃなく可愛い。
「……なにここ!」
メイは足を止めて、そのまま吸い寄せられるように中へ入った。
甘い匂い。やわらかい照明。
木の棚に並ぶクッキーは、
ひとつひとつ丁寧に包まれている。
(え、待って)
(かわいすぎない?)
ピカピカのショーケース。
ぎゅっと並んだお菓子と、
ガラスの中で、やさしく溶ける色。
「これはさすがに……映えすぎでしょ!」
そこで、ようやく値札に目がいく。
「……あ、ちょっとお高い」
そう思ったのに、
なぜかすぐには店を出られなかった。
一歩前に出て、また一歩戻る。
それを何度か繰り返し、
迷った末に、一番小さな袋に目を留めた。
「まあ、最近頑張ってるし。これくらいなら…」
会計を済ませ、レシートを財布にしまう。
店を出る前に、買ったばかりの袋を手に
パシャリ。

「かわいすぎる♡」
袋を持ち直し、
ほんの少しだけ立ち止まって考える。
「でもこれ、一人で食べるのは、
ちょっともったいないかも……」
(どうせなら、誰かと……)
「あっ!そうだ」
「久しぶりに顔見に行っちゃお」
店の外に出ると、午後の光が街をやわらかく染めている。
メイは来た道とは違う方向へと歩き出した。
□ 3. はじめての来客

昼下がりの午後。
アパートの前に、ひとつの人影があった。
メイだ。
「確か、この辺だったよね……」

「居るかな……」
コンコン。
少し間があって、ガチャリと扉が開いた。
「あら!まあ!メイさん!」
扉の向こうから現れたのはお嬢様。
その顔が、ぱっと明るくなる。
「お久しぶりですわ」
メイは少し照れたように笑う。
「元気してた?
近くまで来たからさ、寄ってみた」
「もちろんですわ。どうぞ」
靴を脱ぎ、部屋に入る。
その瞬間、メイの足がピタリと止まった。
「あの……今、ちょっと立て込んでおりまして」
お嬢様は視線を少し逸らす。

メイはくすっと笑った。
「うん。見ればわかる」
「大丈夫、うちといい勝負だから」
「えっ」
「むしろ、うちの方がひどい日あるし」
「まあっ」
「座れる場所、ある?」
「あっ、こちらなら……」
ダンボールをどけて、ようやく腰を下ろす。
「一人暮らしってさ。
気抜くと、すぐこうなるよね」
「本当に……。屋敷にいた頃は、
考えたこともありませんでしたわ」
「そっか、お嬢様だったんだっけ」
メイは少し驚いた様子で部屋を見回す。それから、ふと手元の紙袋に目を落とした。
「あっ、そうだ。これ、お土産」
「まあ!なんて可愛らしい」
お嬢様は嬉しそうに袋を受け取ると、しばらく包み紙を眺めていた。
「せっかく来てくださったんですもの。お茶くらい、お出ししますわ」
そう言って立ち上がる。慣れない手つきで淹れた紅茶が、二つのカップに注がれた。
「……ちょっと……ぬるいですわね」
メイもひと口飲んで、笑った。
「いやいや。十分美味しいって」
その言葉を聞いて、お嬢様は嬉しそうにカップを両手で包んだ。
「クッキー、美味しいですわね」
午後の光の中、二人の楽しそうな声が、弾むように部屋へ広がっていった。
この森をもう少し散歩する🐾

▶︎今日はどんな気分?
・ちょっと笑える3話
・疲れた日に読みたい3話
・のんびりした3話
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