暮らしの森|アツコがハギレを大事にする理由
─小さな布が生まれ変わるまで─
暮らしの森には、森の素材を使って服や小物を仕立てる工房があります。
そこにいるのが、“森の仕立て屋”アツコ。

アツコは、いろいろな素材を眺めながら、形や手触り、色の組み合わせを考えるのが好きです。
森の中で、壊れたものを直したり、仕立てたりしているうちに、アツコの工房には少しずついろいろなものが貯まってきました。

アツコのハギレ箱

アツコの工房には、ハギレがたくさん入った箱がある。
作品を仕立てたあとに残った布を、アツコは捨てずに取っておく。
どれも捨てるには惜しいけれど、一つ一つでは小さすぎて使い道の決まらないものばかり。
横で見ていたメイが、その中から小さな一枚をつまみ上げた。
「アツコさん、こんなに小さい布まで取っておいて、 使い道あるの?」

「あら、使い道はちゃんとあるのよ。今日はこの小さな布たちでバッグを作りましょうか」
そう言うと、アツコは箱の中のハギレを作業台の上に広げた。
黒、白、灰色、茶色。
布の形や大きさ、厚みも全部バラバラ。
アツコは小さな布たちを手に取り、色や形を見ながら一枚一枚並べていく。

「この布は薄いから、少し頼りないわね」
そう言って、今度は別の布を手に取った。
「こっちは厚みがあるから、バッグの底に向いているわ」
その様子を見てメイは目を丸くした。
「布にも、向いてる場所があるの?」
「ええ。だから、どの布をどこに使うか考えるのも、大事な仕事の一つなの」
形も、大きさも、みんな違う。
それでも並べてみると、不思議とひとつの景色に見えてくる。

やがて工房に、ミシンの音が響き始める。
布を重ね、縫い合わせ、形を整える。
そこにファスナーが付き、ポケットが付き、
ばらばらだったパーツがひとつの形になっていく。
そして完成したのは、いくつもの布がつながった、ショルダーバッグだった。

「どの布にも、ここへ来るまでの時間があるもの。役目を終えたものにも、新しい道が待っているのよ」
アツコはバッグをメイに渡した。

「わぁ♡素敵〜」
◆
その日、アツコのハギレ箱は軽くなった。
けれど、箱の中にはまだたくさんのハギレが残っている。
次はどんなものに仕立てようか。
ハギレ箱の蓋を閉めるアツコの手は、もう次の布を選んでいた。
(終)

どれも全部、大切に読んでいます🥹
【あとがき】
シルバーウィークに、少しまとまった時間があったので、貯まっていたハギレの断捨離をしました。
今回のお話は、そこから生まれた物語です。

相棒はミシンです🧵
こんな小さなハギレ、
取っておいてどうするんだ😅
そう思うこともあるのですが…

柄を合わせていくと、
あのハギレたちが
素敵に見えてくるんですよね


いかがでしょうか?
自分で言うのも何ですが、
『元、手のひらサイズのハギレ』とは思えぬ出来栄えになりました🤭
【創作の裏側】
ご飯粒から始まる物作り

私、物作りが好きなんですけど、
『三つ子の魂百まで』とはよく言ったものだなぁ、と思う幼少期の体験を少し。
これは私の創作の原点にもなっています。
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