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ことばの音色、「はい どうじょ」

    1歳半になる娘が、「はい どうじょ」を初めて披露してくれたのは、4月21日のことだった。

    ​その日の朝、私の手に持っているものを見つめ、「はい どうじょ」と言う娘。
    欲しいの?と聞くと、「うん」と頷くので渡してみる。
    すると、嬉しそうに「はい どうじょ」と、小さな手のひらで返してくれた。

    ​お昼ご飯の準備中。私の箸をサッと取ったかと思えば、「はい どうじょ」とニコニコ笑顔に。
    どうやら、まだ「ちょうだい」は覚えていないらしい。

    彼女にとって「はい どうじょ」は、「はい」と「どうぞ」が組み合わさった二語文ではなく、まだ分かちがたい一つの音色なのだろう。

    ​翌日、
    娘の「はい どうじょ」は、さらなる広がりを見せた。
    私が持っているものを取るのではなく、自ら「はい どうじょ」と、物を手渡してくれる。そんな姿が見られるようになったのだ。

    ​例えば、机に置いてある私のスマートフォン。
    一生懸命に背伸びをして、机にあるスマホを手に取る。そして、ペタペタと私の方へ走ってきて、嬉しそうに「はい どうじょ」と渡してくれる。
    私が「ありがとう」と答えると、ペコっと頭を下げて満足そうにしている。

    ​他にも、様々な物を手に取っては、「はい どうじょ」と得意気に渡してくれるようになった。

    ​物のやり取りというコミュニケーションを通して、彼女の中で「渡す楽しさ」が芽生えたのだろう。
    その対象は、私だけにとどまらず、お気に入りのぬいぐるみにも向かっていく。

    ​おもちゃや積み木を「はい どうじょ」と、ぬいぐるみに渡す娘。
    それがちゃんと、手元に挟むようにしているのが愛らしい。

    ​コップのおもちゃも、ぬいぐるみの口につけ「はい どうじょ」をしては、今度は「おいちー」と私を見て、ニコニコしながら遊んでいる。

    ​私も隣で、娘のマネをする。

    ぬいぐるみにコップを近づけ、「はい、どうぞ」をすると、娘もまた「はい どうじょ」と応える。

    今度は、ぬいぐるみのホッペに人差し指をあてて「おいちー」と交える。

    それは以前、私が食事の際に教えた「美味しい」の仕草だった。

    ​言葉を覚えていく過程を知ると、日常のあちこちに、優しさや愛がこぼれていることに気づく。
    こうして一つ一つ、言葉を自分のものにしていくのだなと、彼女の小さな手のひらを見つめながら、感じている。

    ​ペタペタ 
    「はい どうじょ」

    あどけない彼女の表情に
    私の顔も、また、ほころんだ


     
     
     
    介護も育児も、一人ひとりの背景を知ることから始まる。 育児のこと、介護現場で得た気づき、日常などを発信していきます。 かつてヤングケアラーとして生活した視点も大切にし、そっと寄り添えるような言葉を届けていきたいです。 14年間、介護現場で勤務。 介護リーダー&ケアマネ経験者。

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