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Photo bytomoji8988

夜眠れないときに最後に電話した相手

    孝輔

    TVをみていて素人の大学生が

    「この前夜眠れなくて友達に電話したときに…」と

    普通にしゃべっているのを観て

    衝撃的に思い出した

    僕もむかしむかしあるところで夜眠れないときに友達に電話した夜があったことを。

    もう十年以上も夜眠れないときに友達に電話していないことを。

    「そういえばむかしむかし

    夜眠れないときは友達に電話してもいい時代があったんだっけ

    僕もむかしむかしそんなことをした事があったなあ」と

    そんなことをしばし懐古した。

    もちろん

    彼ら彼女らの多くはだいぶ前にそれぞれ結婚したし

    その多くにはさいきん子供がいたりもするしで

    気軽に電話したりできないから、話したい気持ちを圧し殺してすごした夜も二十代のころは少なくなかったはずなんだけど、

    いつの頃からか「夜眠れないときに友達に電話する」っていう行為そのものが

    僕の中で葬り去られた。

    っていうか「やってはだめなこと」の一つになった。

    もちろん必ずしも結婚した友達ばかりではないので話そうとおもえば

    電話する相手がいないわけではなかったのにね。

    もちろん夜眠れないときに友達に電話したって
    何ひとつ、これっぽっちも解決しない、

    という現実的な解釈ならたぶん
    TVのなかの大学生だってきっと知っているのにね。

    でも彼らは夜眠れないときに友達に電話する。

    誰かとつながってるととりあえず安心するのか、

    それはわからなくもない。

    でもほんとは誰ともつながってなんかいない。

    生まれて死ぬまで誰かは誰かと、つながらない。

    絶望的にそう思うようになったからなのか。

    夜眠れないときに電話するなんて子供のすることだから。

    夜眠れないときに電話するほどさびしい人だなんて誰にも思われたくないから。

    …ほんとは誰とも
    これっぽっちもつながってないから。

    そんなこんなで、おとなは夜眠れないときに電話なんてしちゃいけない、

    なんだか自分のなかで二十七歳ぐらいのころに
    勝手にそう決まったようだ。

    だから僕は夜眠れないときに
    友達に電話したりなんかしない。

    僕が夜眠れないときに
    最後に電話した相手が誰だったかもう思い出せない。

    (了)

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    当記事「夜眠れないときに最後に電話した相手」が400スキを突破したときに書いた、読者様へのお礼の記事です。


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    孝輔

     
     
    花、虫、季節のうつろい、むかしの恋。 徐々に大人になりゆく娘との生活。 そんなものを短歌に詠んだり、エッセイや小説に仕立てています。 誰かの心に深くお届けすることができたらうれしいです。 ※記事の著作権は放棄しておりません。