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好みの違いもいずれは…

    #創作大賞2025
    #エッセイ部門

    友人からもらった日本酒を飲みながら、本を読んでいる。
    時折雨戸を叩く風の音が聞こえる意外は静かな夜だ。

    まさか自分が日本酒を飲めるようになるとは思わなかった。
    10代の頃、いたずらにビールを飲んで気持ち悪くなり、それ以来自分は酒が弱いのだと思っていた。

    それから酒の席でも、飲んでいるふりをしてごまかしていた。
    それが、好みの違いだと知ったのは、たまたま隣に日本酒好きの友人が座ったときだった。
    気分が良かったのだろう、勧められるままにお猪口に口をつけた。
    うまかった。
    それから何杯か飲んだが、気分が良くなることはあっても、頭痛をおこしたり、足元が怪しくなることもなかった。

    好みもあるし、体に合う合わないというのもあるのだろう。
    あれ以来、酒の席では日本酒を口にすることが多くなった。
    父は酒飲みだったが、もっぱらビール党だった。
    「息子と酒を飲むというのが、オレの夢だったのに、お前はそれを壊した」
    ビールを飲めない息子に、父は寂しそうにつぶやいた。
    酒の弱さを10代の息子は、申し訳ないと思った。

    また雨戸を風が叩いた。
    小さなグラスに酒を注ぎ、仏壇の前に置いた。
    父は日本酒が苦手だったが、それはこの世のものだろう。

    グラスを合わせると、これまでと違うやさしい音を雨戸が鳴らした。

    父との思い出エッセイ集【物語的起承転結版・最新版】

    以上のリンク。

    他のエッセイは、

    紘野涼のフリーハンド紹介 

    はこちらにあります。

     
     
     
    観察型コラムニスト/エッセイスト| 試合と日常の「流れ」を書く 「スワローズ観察日記R」 「紘野涼のフリーハンド」

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