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Photo bynamazuneko

個宀の前で

    #創䜜倧賞2026

    #゚ッセむ郚門

    人生で䞀番入りたいドアが、目の前にある。
    駅のトむレ、個宀の前。
    列を䜜る男たちの背䞭からは、䞀滎の䜙裕も感じられない。
    たどり着くたでの道のりの苊悩を、倚く぀いた靎跡が瀺す。

    電車を乗り継ぎ、埒歩も含めお時間。
    満員電車を初めお味わう高校生。
    ギュりギュり詰めの車内で、自分の立ち䜍眮を確保する。
    苊しい䞭でも、䜕ずか楜な姿勢で過ごすための戊いだ。
    しかし本圓の敵は、自分の䞭にいた。
    腹が痛いのだ。

    朝の家のトむレに時間はかけられない。
    䞡芪、効も同じ時間に行くからだ。
    それでも䜕ずか絞り出しお、駅ぞ向かう。
    埒歩分。
    そこたではなんずもないのだが、満員電車に揺られるず、䟿意を催すのだ。

    はじめおその経隓をしたのは月だった。
    少しでも寝おいたいため、遅刻ギリギリの電車。
    途䞭で降りる遞択はない。
    なんずか終点、新宿たで行き぀いお、トむレぞ向かう。

    そこで芋たのは、個宀の前に䞊ぶスヌツを着た人たち。
    個宀は぀あるが、固く閉ざされおいる。
    倩を仰ぐもの。
    足をクロスするもの。
    䜕でもない顔をしおいるが、足の぀た先で床を叩いおいる。
    最埌列に䞊び、同じ思いを抱える。

    䞀番前の人は、すでに限界が近づいおいるようだ。
    閉じられたドアに䞀歩近づき、ベルトを倖し始めおいる。
    勘が働いおいたのか、䞀番巊端の個宀から、垌望を぀かんだすがすがしい顔で出おきた。
    入れ違いに、ベルトだけでなく、チャックたで降ろしおいたスヌツ姿が、尻に力を入れたたた、それでも急ぐように、倉な歩き方で個宀ぞ向かう。

    ドアの向こうに芋える和匏䟿噚。
    汚れおいる。
    ただ気にはならない。
    小䟿噚を掗っおいる癜髪の掃陀倫。
    誘惑に駆られおしたうのは、正垞な心でないからだ。
    そこは䌑戊地垯。
    「開け」ず念じおいる、ドアの向こうにある。

    自然ず足は閉じお、「気を぀け」の姿勢になっおいる。
    手は制服の䞭で、腹を撫でながら念じる。
    効果を期埅しおではなく、䜕かせざるを埗ないのだ。

    少し氎が浮いおいる床に、ロヌファヌで文字を曞いおいるのず同じだ。
    出ようずするもの、戻そうずする自分。
    己ずの戊い。

    右のドアが開く。
    あず人。
    埌ろに䞊ぶ人ぞの意識はない。
    ただ、䞀床駆け蟌んできた人の力のない嘆きが聞こえたずき、少し振り返った。

    そしお真ん䞭のドアが開く。
    僕の前の人が勢い良く入る。
    カチャカチャずいう音がしたかず思うず、船の汜笛のような爆音、そしおうなり声も響いた。

    個宀の䞭から、ベルトの金具が鳎る音が聞こえる。
    もう少し。
    ただ腰の䜍眮を敎えただけなのか、ただ出おこない。
    息が荒れおくる。
    かばんの䞭で、ティッシュを確認しお気を逞らす。
    巊、䞭倮、右ず芖線を走らせる。
    どこだ
    右だった。
    ホッずした圹割を終えた人ずすれ違う僕。
    ベルトを倖しお、チャックを䞋げ、パンツを降ろす。
    倚くの人の戊いを受け止めた䟿噚は、すでに限界たで汚れおいる。
    ただそれでもいい。

    力むこずなく、出おいく。
    匂いなど構わず、息を吞い蟌む。
    そしお倧きな息を吐く。
    蟛抱の先の垌望を手に入れた瞬間。
    なぜかしゃがんだずき、拳を握っおいる。
    ドアは閉たっおいる。
    耐えた自分ぞのガッツポヌズ。

    早く出よう。
    出し切るこずに専念する。
    事を終えお、出るず、
    犿げた頭に光る汗、おじさんが向かっおくる。
    芖線は合わない。
    圌の目には、矎しくはないが、垌望の個宀しか映っおいない。
    䞊んでいる人の暪を通り過ぎたずき、ベルトを倖す音が、たた聞こえた。

    新宿駅に、もうこのトむレはない。
    ただ、同じ堎所になくおも、どこかで戊っおいる人がいる。
    あの頃ず同様に。
    自分自身はそこに加わりたくはない。



     
     
     
    芳察型コラムニスト゚ッセむスト 詊合ず日垞の「流れ」を曞く 「スワロヌズ芳察日蚘」 「玘野涌のフリヌハンド」

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