
たばこを持つ手
実験授業の準備室
テーブルの上には缶ピース
紫煙天井に向かってゆらゆらと
背中がおいしいというように
夏はランニングシャツ
渡り廊下でなびいた白衣だけ
授業の挨拶はなし
チャイムが鳴るとさっさと出ていった
迷惑にならないいたずらで
正座させられていた僕たちを
笑いながら通り過ぎた
言葉の上げ足を取ると
褒めてくれて
笑いを膨らませた
説教中に
トイレへ行きたいと手が上がる
笑って
もう終わりだと背中を向けた
どんなに小さくても
嘘やごまかしは
だれでも平手が飛んだ
グレてた同級生のリーゼント
毎朝掴んで怒鳴っていた
愛車を大事に乗っていた
愛妻弁当を自慢する
おかずをこぼしたシミのあと
白衣はたばこ臭かった
卒業式には
ネクタイ締めて
校門で生徒に囲まれて
ひとりひとりに
がんばれと
握手にすべて応えてた
きっとひとりになったとき
腫れた手に缶ピース
たばこを吸いながら
ネクタイ緩めていただろう