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Photo bymatsuda2772

朱色の塔

    玄関を出て、
    重い門を押して、
    家の前の坂道に出る。

    雨の日は運動靴が染みる。
    雪の日は滑るのが恐い。
    晴れの日はビルの隙間から、
    朱色の塔が見える。
    この下った道が、僕の当たり前だった。

    小走りに教室へ向かう。
    絵を描き、積み木を並べて、
    空想の街ができていた。

    坂道は昔のままだ。
    ただ今は、なだらかだ。
    空想の街のその後かもしれない。

    しっぽを振っていた犬のいた庭。
    面影残さず、見上げるビルが建っている。

    雨が落ちてきた。
    靴の上で粒が跳ねた。
    折り畳み傘がワンタッチで開く。

    変わり過ぎた街で、
    動いていないはずの朱色の塔が、
    一瞬、視界から消えた。

     

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    観察型コラムニスト/エッセイスト| 試合と日常の「流れ」を書く 「スワローズ観察日記R」 「紘野涼のフリーハンド」

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