
朱色の塔
玄関を出て、
重い門を押して、
家の前の坂道に出る。
雨の日は運動靴が染みる。
雪の日は滑るのが恐い。
晴れの日はビルの隙間から、
朱色の塔が見える。
この下った道が、僕の当たり前だった。
小走りに教室へ向かう。
絵を描き、積み木を並べて、
空想の街ができていた。
坂道は昔のままだ。
ただ今は、なだらかだ。
空想の街のその後かもしれない。
しっぽを振っていた犬のいた庭。
面影残さず、見上げるビルが建っている。
雨が落ちてきた。
靴の上で粒が跳ねた。
折り畳み傘がワンタッチで開く。
変わり過ぎた街で、
動いていないはずの朱色の塔が、
一瞬、視界から消えた。