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Photo byosanpo117

誰のための花

    紫陽花が雨に濡れていた。
    おそらく庭だった場所に咲いていた。
    淡い色が寂しそうに見える。
    おそらく庭…そう書いたのは、壁や門柱がそのままになっていながら、その土地にあるはずの家がなかったからだ。
    まだ建物を壊したばかりなのだろう。
    均されていないのが土の波打ちから伝わって来る。

    見てきたものがなくなるのは辛いことだ。
    そこにあったものがなくなる、いなくなる、いつも目に入っていたものが消えることは、どこかせつない。
    親しい人はもちろんのこと、建物であっても、自然のものでも、目の前から消えるのは寂しいものだ。
    それが自分の意思で壊すのでも辛いことなのに、抵抗することもできずなくなってしまうのはどんな想いだろう。

    壁に囲まれた家があったであろう場所に、私は思い出を持たない。
    ただ車窓に向けた視線がとらえただけだ。
    他にも樹木があったような雰囲気はある、それだけ広い土地だった。
    しかしその姿はない。
    少し季節外れの淡い色が、雨が、余計に寂しさを感じさせた。

    ただ、そんな思いに関係なく、紫陽花は沈黙してそこに咲いている。

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    観察型コラムニスト/エッセイスト| 試合と日常の「流れ」を書く 「スワローズ観察日記R」 「紘野涼のフリーハンド」

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