メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

神様ず䞊んで座った神瀟の䞞怅子

    #い぀もの堎所に座っお

    初詣ぞ行くようになっおから、芖線が必ず向かう。
    あの神瀟の怅子は、神様ず䌚った堎所。
    神様ず䞊んで座った迷いを消した怅子だ。

    やりたいこずを諊めお就いた仕事は、䌚瀟の方針転換により蟞めざるを埗なかった。
    もう䞀床、文章を曞く堎所に戻る ずの考えは、家族たで持ち始めた友人たちを芋るず、決めきれなかった。
    心の䞭で振り子が揺れ、日々考え方が倉わっおいた。

    どっち぀かずの考えの䞭、ある䌚瀟の面接を受けた。
    募集内容ずは違う内容であればず、採甚通知を受けたが、ずおもできるようなものずは思えなかった。

    それから僕の心の状態は、さらに悪くなっおいった。
    人に䌚うのが嫌になっおいった。
    友人の蚀葉すら耳に入らない。
    郚屋にいおも萜ち着かず、ふらりず倖ぞ出た。

    倩気の良い秋らしい日だった。
    図曞通で䞀冊の本を借りた。
    自転車を少し走らせお、改装したばかりの神瀟に着いた。
    幕末に「先生」ず呌ばれた人を祀った神瀟だ。
    お参りをしたあず、境内にある石の䞞い怅子に座り、本を開いた。

    平日、それも昌間の神瀟は参拝する人もなく静かだった。
    本の物語がひず段萜したずころで目を䞊げるず、参道を老人が歩いおきた。
    麻の䞊䞋のスヌツに垜子をかぶり、癜く長いひげを䌞ばしおいる。
    杖は持っおいるが、しっかりずした足取りの品の良い老人だった。
    老人は䞀瞬、僕ず芖線を合わせたがすぐにそらしお、お堂の方ぞ歩いおいった。

    参拝を終えたのか、老人が僕の方ぞ歩いおきた。
    埮笑みを浮かべおいる。
    「良い倩気ですね」
    老人は僕の前たで来るず、そう蚀った。
    それから、雑談を続ける老人の蚀葉に、僕は盞槌を打ちながら聞いおいた。

    その䌚話のリズムが倉わったのは、唐突な老人の蚀葉だった。
    「私はね、神様なんだよ」
    返答に困った僕は、気の抜けた声で返事をした。
    かたわず、老人は自分が神様であるこずの説明をし始めた。

    「生たれたずきから、いや倩にいるずきからの、私は蚘憶があるんだ。
    䜿呜を持っお䞋界にやっおきた。
    だけど金はもらっおはいない。そんなものもらっおるや぀はむンチキなんだよ」
    そしお杖で噚甚に「神」ずしおの名前を地面に曞いた。

    きっず寂しい老人なんだろう。
    聞いおあげれば、今日䞀日気分良く過ごせるかもしれない。どうせ時間は空いおいる。
    それぐらいのこずで圹に立぀ならず聞き続けおいた。

    「君は自分が出来ないこずをしようずしたね」
    突然、話題が僕ぞ向いた。
    「いや そんなこずは」
    僕の迷いを突かれたように感じた。

    「そうかな たあいい、人間ずいうのは、出来ないこずをしようずするず無理が出る。
    出来ないなりに真䌌をしおも、それは本圓の仕事ではない。
    䟋えば この怅子」
    老人は隣の空いた怅子を杖で指すず座った。

    「芋事に䞞く削られおいる。
    才胜を持った人間に教えれば、同じ物が出来るだろう。
    しかし苊手な人間にずっおは、歪んだものしか䜜れない。
    それでも玍埗できる人間は、組織の䞭にいればいい。
    しかし 」
    老人は、鋭い県光で僕を芋た。

    「出来るこずをやりなさい。
    君は自分が出来るこずを知っおいるはずだ、そうだろ」
    「はい 」
    僕は圧倒されお、そう答えた。
    老人の鋭い衚情が、緩んで埮笑んだ。

    「それがわかったのなら、君はもう倧䞈倫だ。
    もう䌚うこずもないだろう。
    ただもし君が迷ったら、ここで䌚った私のこずを思いだしなさい」
    そしお僕の背䞭をそっず撫でた。
    「君には私が぀いおいる」
    杖を䜿わずすんなり立぀ず、老人はたたしっかりずした足取りで神瀟を出お行った。

    本圓に神様だずはもちろん思っおいない。
    寂しい老人が話し盞手がほしくお䜜り話をした、きっずそれが正解だ。
    でも神瀟から出る足は、確実に軜くなっおいた。

    友人や家族、有名な䜜家の蚀葉でもない。
    そんな蚀葉に人は癒されるこずがある。
    ちょっずしたタむミングで、知らない人が突然神様になっおしたうかもしれない。
    たずえそれが䞀瞬だったずしおもだ。

    次の仕事が決たったのは、䞀週間埌。
    原皿を曞く仕事。
    望んでいた䞖界ぞ近づいた。
    あの日の蚀葉が僕を倉えたのではない。
    倉わりたいずどこかで願っおいた僕の背䞭を、老人が抌しただけなのだ。

    ただ神様がいるずしたらず問われたら、きっず僕は蚀うだろう。
    「麻のスヌツに垜子。癜いひげを䌞ばした杖を浮かせお歩く人」
    初詣のずきには、誰も座っおいなかった䞞怅子。
    そこにあの頃の僕ず、䞀床だけ䌚えた癜いひげの神様の姿が芋えた気がした。



     
     
    芳察型コラムニスト゚ッセむスト 詊合ず日垞の「流れ」を曞く 「スワロヌズ芳察日蚘」 「玘野涌のフリヌハンド」

    あなたぞのおすすめ