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Photo byzhenmei

橋の上の自由

    #創作大賞2026

    #エッセイ部門

    日本橋川と立派な名前がついた川だが、濁りは橋を映しはしない。
    その上にかかる鎌倉橋にいつもその人はいた。
    屋根は首都高速。
    朝は、その前を通り過ぎる通勤の人に興味を示さず、紙袋に入れてある新聞を、一紙ずつ取りだしては読んでいる。

    日が暮れた頃通ると、どこを見ているのか、その視界を遮る人々がまったく目に入っていないように、ただ一点を見つめている。
    まるでそこに根が生えているようだ。
    いつも同じ所に座っている。

    あの人は自由なのだろう。
    けれど孤独を抱えている。
    それでもどんな理由があるにせよ、
    あの人はああいう生き方を選んだ。

    ゲームではない。
    リセットするとはああいうことだ。
    誰の目も気にせず、興味も示さず、濁った川のそばで、ただ生きている。
    「自由になりたい」
    自由な姿になるのに怯えて、満員電車で同じ場所へ通っている自分には言えない。

    自由は手の届くところにある。
    けれどきっと思い描いた姿ではない。
    安易に口にできない、「自由」とはそういう言葉なのだろう。



     
     
     
    観察型コラムニスト/エッセイスト| 試合と日常の「流れ」を書く 「スワローズ観察日記R」 「紘野涼のフリーハンド」

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