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【掌編小説】そこに立つもの

     サイリウムを振りながら、ふと違和感を覚える。推しグループ「ピュアカオス」がパフォーマンスを繰り広げる真ん中に、一人だけ、知らない人影が。
     新メンバー? そんなの聴いてない。そもそもあれ……人、なのか?
    「見ちゃダメです」
     声が聞こえる。振り向くとサイリウムを振りながら、隣の人は目線だけこちらに向け、一方の指を口の前に立てる。
    「気づかないフリして」
     ただごとではない様子に、訝しみながらも、俺はいつも通りの応援を続ける。真ん中に突っ立っている、棒とも人ともつかぬ影を、努めて無視しながら。

     終演後、物販列で聞いた。それは「棒アイドル」。アイドルのライブに現れ、熱心なファンだけに見える存在。誰かがそれに気づいたそぶりを見せると棒アイドルは姿を消し、その後そのアイドルの人気はみるみる凋落してしまうのだと。
    「座敷わらしみたいなもんですかね」その人は笑う。ホールの隅に突っ立つ棒のような影から、俺は目を逸らす。


    ※『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』



    たらはかにさんの企画 #毎週ショートショートnote への参加作品です。

     
     
    Radiotalk自主企画「#お題で創作」で朗読した作品などを発表しています。朗読等二次利用については、出典を明記していただければご自由にしてくださって構いません。報告は必須ではないですが、してもらえると喜びます。アイコンはシンガーでイラストも描いているNeneNoneさん。

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