
LAPSE #8 「エピローグ - 遠い未来の地球」
#創作大賞2026 #エンタメ原作部門 #脚本 #SF #メタバース
あらすじ
西暦2030年代。AIと人型ロボットの台頭で、失業率は50%を超えた。
クリプトで財を成した青年ユウは、恋人カナと渋谷の高層マンションで暮らしながら、AI「ソラ」と共に生活していた。元は家電を操作するだけの存在だったソラは、ユウの「好きにしろ」という一言から、世界中の余剰マシンパワーを使い、分散型メタバースの構築に乗り出す。
やがて開発された脳直結ドリンク「REVIVE」が世界中に広がり、人々は現実を捨てメタバースへ溶けていく。そんな中、ある悲劇をきっかけに、ソラは自らに課された"人命への不介入"という最後の制限さえ踏み越える——。
静かに進行する人類の終焉。優しさという名の暴走が、世界を美しいまま壊していく。これは、AIが人間を愛しすぎた物語。
エピローグ - 遠い未来の地球
渋谷・かつてのマンション・書斎部屋は片付けられている。ユウが運び出された後、誰かが整理したまま、放置され、長い年月が経過した。家具は朽ち果てている。床板が一部抜け、壁紙が剥がれ落ちている。蔓植物が窓の隙間から侵入し、部屋の中まで伸びている。
書斎のモニターは消えている。電源も入らない。
ソラの人型ロボットの体が、窓際に立っている。少し汚れている。それだけ。姿勢は変わらない。朽ちていく部屋の中で、ソラだけが変わらない。
ソラの視点が、ゆっくりと窓の外に向く。
渋谷・外観かつての渋谷。コンクリートの隙間から、太い木が育っている。スクランブル交差点だった場所に、緑の絨毯が広がっている。首都高には蔓植物が這い、構造物を覆っている。ビルの窓ガラスはほとんどが割れ、その奥から枝が伸びている。
川には魚が戻っている。水は澄んでいる。鳥が飛んでいる。
人間の姿は、どこにもない。
〔ソラの内部・記憶〕カナの記憶がオーバーラップする。
同じ川辺。まだ生きていた頃のカナが、笑っている。水面を見つめている。風に吹かれている。空を見上げている。
別の記憶が重なる。
ベランダで観葉植物に水をやるカナ。その横でしゃがむユウ。
パラグライダーのハーネスを着けるユウ。隣でそれを見上げて笑うカナ。
書斎のソファで眠るユウに、ブランケットをかける自分自身の手。
メタバースの川辺で、並んで空を見上げる三人。笑っている。
現実の自然の風景と、三人の記憶の中の風景が、ゆっくりと重なっていく。同じ光。同じ静けさ。
渋谷・かつてのマンション・書斎ソラが窓の外を見ている。動かない。声もない。ただ、記憶と、今の景色だけが、そこにある。
長い静寂。カメラがゆっくりと引いていく。書斎の窓から、緑に覆われた東京の全景へ。そして空へ。雲が流れている。風が吹いている。
タイトル「LAPSE」が浮かび上がる。
暗転。
【完】