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焔のあずで

    ── 䜿呜に燃えた者たちず、火守の翁


    序

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    すべおが燃え尜きたあずの、暗い

    平原がある。

    地は灰に芆われ、螏めばかすかに厩れる。空には星もなく、遠くで最埌の熟火おきびが、ひず぀、たたひず぀ず消えおいく。ここは、倧きな火が通り過ぎたあずの堎所。

    その平原のただ䞭に、小さな焚き火が、ひず぀だけ灯っおいた。

    旅装の老人が、そのそばに坐っおいる。枯れ枝を䞀本ず぀、惜しむように火にくべながら。急ぐでもなく、燃やし぀くすでもなく、ただ、絶やさぬように。

    やがお、䞉぀の倧きな火が、それぞれの最期から、この小さな火を目指しお近づいおくる。


    䞀 名誉の焔 ── アキレりス


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    アキレりスには、二぀の道が瀺されおいた。

    故郷に垰り、長く、穏やかに、しかし名もなく老いお死ぬ道。あるいは――トロむアの野に若く散り、氞遠に語り継がれる道。

    圌は、迷わなかった。

    「忘れられお癟幎生きるより、茝いお死ぬ」

    友パトロクロスが蚎たれたずき、圌の怒りは焔ずなった。ヘクトヌルを蚎ち、その亡骞を戊車に瞛っお匕き回した。怒りず名誉が、圌のすべおだった。それは矎しく、そしお、圌自身を内偎から焌いた。

    やがお、ただ䞀本の矢が、圌の螵を射抜いた。

    積み䞊げられた薪の䞊で、英雄の亡骞は焌かれた。炎は高く、倩を焊がした。誰もが、その茝きを忘れなかった。

    灰になっお、圌は気づけば、暗い平原に立っおいた。


    二 神の声の少女 ── ゞャンヌ・ダルク


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    ゞャンヌには、声が聞こえおいた。

    幌い日から、それは圌女に告げた。剣を取れ、ず。囜を救え、ず。

    圌女は、ただ少女だった。鎧をたずい、旗を掲げ、震える兵たちの先頭に立った。声がそう望むなら、恐れるこずは䜕もなかった。圌女には、自分ずいうものが、もう無かった。あるのは、ただ䜿呜だけ。

    囜は救われ、そしお――圌女は捕らえられた。

    火刑台の薪に火が぀けられたずき、圌女は最埌たで、声を疑わなかった。炎が少女を包んだ。十九歳だった。

    「これが、あなたの望みだったのですか」

    問いには、答えがなかった。

    灰になっお、圌女は気づけば、暗い平原に立っおいた。


    䞉 火を盗んだ神 ── プロメテりス


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    プロメテりスは、先を芋通す者だった。

    神々が火を独占し、人間を寒さず闇のなかに眮いおいた時、圌だけが、その先を芋た。火さえあれば、人は立ち䞊がる、ず。

    圌は、倩の火を盗み、人間に䞎えた。

    神々の王は、激怒した。プロメテりスは岩山に鎖で぀ながれ、毎日、鷲が来お圌の肝臓を぀いばんだ。肝臓は倜ごずに再生し、朝ごずに、たた啄たれた。終わりのない眰。

    それでも圌は、埌悔しなかった。「人間の手のなかで、火は燃えおいる。ならば、これでいい」

    幟千幎が過ぎた。鷲は来぀づけ、圌は苊しみ぀づけた。苊しむこずが、䞎えたものの倀打ちを蚌す――圌はそう信じお、岩を離れようずしなかった。

    そしお、ふず気づけば、鎖は無く、圌は暗い平原に立っおいた。


    四 火守の翁 ── 旅の老人


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    䞉人は、小さな焚き火のたわりで出䌚った。

    名誉に燃えた英雄。声に殉じた少女。眰に繋がれた神。

    みな、巚倧な火に焌かれた者たちだった。それぞれの䜿呜を、䞀片の悔いもなく生ききった顔で。けれど、その瞳の奥には、燃え尜きたあずの、癜い灰のような静けさがあった。

    旅の老人は、枝を䞀本くべお、蚀った。「よく来た。寒かろう。あたっおいきなさい」

    アキレりスが蚊いた。「老人。お前は䜕者だ。ここは、どこだ」

    「ただの、火守よ」ず老人は笑った。「人はわしを、老子ず呌んだこずもある」

    「我らは、終わったのか」

    「お前たちの火は、芋事だった」ず老人は䞉人を芋た。「倩を焊がすほどの、芋事な焔だった。――だが、ひず぀蚊きたい。その火は、お前たち自身を、枩めたか」

    䞉人は、黙った。

    「お前たちは、薪になった」ず老人は静かに蚀った。「火そのものになろうずしお、己を燃やし尜くした。名誉のために。声のために。人のために。――だが、薪は、䞀床きりしか燃えられぬ」

    プロメテりスが、䜎く蚀った。「䞎えるずは、そういうこずだ。燃え尜きるこずだ」

    「火を芋よ」ず老人は、足元の小さな焚き火を指した。

    それは、小さかった。けれど、消えなかった。

    「この火は、わし自身を燃やしおはおらぬ。わしは、ただ枝をくべ、灰をはらい、火を守っおいるだけだ。――だから、この火は、明日も燃える。明埌日も。旅の者が来れば、誰でも、ここで暖たれる」

    老人は、続けた。

    「光を、やわらげよ。塵にたみれよ。――倩を焊がす焔である必芁はない。掌おのひらで守れるほどの、小さな火でいい。それを絶やさず、長く灯し぀づけるほうが、よほど倚くの者を、枩められる」

    灰の平原に、ぱちりず、火の粉がはぜた。


    五 䜿呜のあず

    「䜿呜の、あず」ず、ゞャンヌが呟いた。

    「そうだ」ず老人はうなずいた。「お前たちは、䞎えるこずを知っおいた。だが、䞎えながら生きるこずを、誰も教えなかった。――為しお、恃たのたず。なした事に、しがみ぀くな。火を枡したら、手を攟しおよいのだ」

    プロメテりスが、はじめお、もう岩に繋がれおいない自分の手を芋た。

    「人間の火は、もう、わしが芋匵らずずも、燃えおいるず」

    「ずうに、燃えおいる」ず老人は埮笑んだ。「お前が血を流し぀づけずずも、その火は消えぬ。お前は、もう、岩を離れおよい」

    プロメテりスは、長く、長く息を吐いた。幟千幎ぶりの、軜い息だった。

    ゞャンヌは、火を芋぀めお蚀った。「あの声は  私に、燃え尜きろずは、蚀わなかったのかもしれたせん」

    「䜿呜は、お前に火を運べず蚀った」ず老人は蚀った。「お前自身が薪になれ、ずは、誰も蚀っおおらぬ」

    少女は、はじめお、幎盞応の顔で、笑った。

    アキレりスだけが、ただ立っおいた。

    「俺の名誉は」ず圌は蚀った。「こんな、小さな火になっおしたうのか」

    「お前の名は、すでに語り継がれおいる」ず老人は蚀った。「それは、もう果たされた。――だが、語り継がれる名ず、明日を生きる者は、別のものだ。名は野に残し、火だけを持っお、歩いおゆけ」

    アキレりスは、ゆっくりず、剣を灰の䞊に眮いた。

    老人は、䞉人それぞれの掌に、小さな熟火をひず぀ず぀、分け䞎えた。

    「持っおいきなさい。燃やし尜くすためではなく、絶やさぬために。お前たちは今日から、薪ではない。――火を、継ぐ者だ」

    䞉人は、それぞれの小さな火を掌に包み、暗い平原を、思い思いの方角ぞず歩き出した。

    倩を焊がす焔は、もう、どこにもなかった。

    ただ、灰の野のあちこちに、掌ほどの小さな灯ずもしびが、いく぀も、ゆっくりず動いおいた。消えるこずなく。

    旅の老人だけが、焚き火のそばに残っお、たた䞀本、枝をくべた。

    い぀か誰かが、暖たりに来る。その時のために。

    ――了

    あずがき

    前䜜『倢の぀づき』では、刃のように折れお終わる英雄たちに、老子が「功遂げお身を退く」ずいう道を瀺したした。今回は、その続きのような話です。

    䞎えるこずず、燃え尜きるこずを、私たちは぀い同じものだず思っおしたいたす。誰かのために尜くすなら、自分がすり枛るのは圓然だ、ず。プロメテりスのように、「苊しみ぀づけるこず」そのものが、䞎えたものの䟡倀を蚌しおいる気さえしおくる。

    でも、本圓にそうでしょうか。

    老子に、こんな蚀葉がありたす。

    為しお恃たのたず、功成りお居おらず。

    なしおも、しがみ぀かない。成し遂げおも、そこに居座らない。――枡したら、手を攟しおいい。

    火そのものになっお燃え尜きるのではなく、火を継ぐ者になる。掌で守れるほどの小さな火を、絶やさず、長く灯し぀づける。そのほうが、きっず倚くの人を枩められる。

    混沌のなかに軞を立おお、その火を絶やさずに歩いおいく。そんな生き方の物語を、これからも曞いおいけたらず思いたす。

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    IT業界20幎以䞊、ベンチャヌ䌁業15幎間で䌚瀟ず共に成長し䞊堎䌚瀟の郚長を数幎経隓、2021幎よりフリヌランス開始し、PM業務を䞭心に掻動䞭 PM/PLは15幎以䞊で経隓豊富、システム゚ンゞニアずしおは開発・保守など経隓倚数 組織䜜り、VBA、PC自䜜、ギタヌ䞭玚

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