
息子のランドセルを、革の小物に作りかえてもらいました。
入学のお祝いに、祖父母が贈ってくれたものです。最初は小さな背中に大きすぎるくらいだったのに、いつのまにか比率が入れかわって、卒業と同時に役目を終えました。
しばらくは部屋の隅に、そのまま置いてありました。ただ手放すには、六年ぶんの毎日が詰まりすぎている。贈ってくれた気もちと、雨の日も晴れの日も背中にあった働きぶりを、かたちにして残したくなりました。
職人さんの手にゆだねて、半年。財布や小物になって帰ってきた革は、
心なしか前よりつややかに見えました。
使い終えたものを捨てずに、かたちを変えてもう一度暮らしに迎える。着物を仕立て直してきたこの国には、昔からそういう知恵がありました。
あれから一年あまり。革はいまも、毎日どこかのポケットで働いています。
役目を終えても、終わらないものがある。それを教えてくれたのは、職人さんの手だったのかもしれません。
*このエッセイは、マガジン 『言継帖(ことつぎちょう) 〜身近な美しさを、百年先へ〜』 に収めています。はじめから読んでくださる方は、こちらからどうぞ。