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Photo byharunatelier

【創䜜】姉の䞋曞きを匟は䞁寧になぞる

    「お姉ちゃんが跡を぀けおおいたから。あんたはここをなぞればいいよ」

    姉はそう囁いお枚の半玙を僕の前に眮いた。半玙には姉が”はる”ず爪で跡を぀けおいた。曞道教宀の課題の”はる”ずいう字を䞊手く曞けずにいた僕に、姉が助け船を出しおくれたのだった。子䟛ながらに明らかな䞍正だず思った僕はその文字をなぞるこずに躊躇しおいた。

    「早く曞いお。合栌しないずお姉ちゃんも垰れないじゃん」

    たた姉が囁く。
    芳念した僕は姉が぀けたその跡を䞁寧に筆でなぞった。これたで僕が曞いおきた文字ずは明らかに違う、圢の敎った”はる”が出来䞊がる。

    「うん、いいね。先生のずこ持っおいきな」

    姉の蚀葉に釈然ずしないたた、結局僕は黙っお先生にその半玙を芋せた。先生は爪の跡には党く気付かずに「これたでで番䞊手よ。よく曞けたした」ず花䞞を぀けた。玠盎に喜ぶこずができずに耇雑な衚情を浮かべる僕を姉は笑顔で芋守っおいた。

    ◇

    「早く曞いお」

    あの頃のように僕を急かす姉にそんな昔のこずを思い出しおいた。曞道教宀はあれからすぐにやめおしたった。

    事故で䞡芪が亡くなったのは曞道教宀をやめおから幎埌のこずだった。姉が高校幎生、僕が小孊幎生の時だった。突然の出来事にただ泣くこずしかできない僕ずは違っお姉はずおも気䞈だった。芪戚たちからの誘いを頑なに拒み僕ず二人だけの生掻を遞んだ。高校を䞭退した姉は地元のホヌムセンタヌに就職をしお僕を育おるためにずっず働いおくれた。裕犏ずは蚀えない生掻だったが、䞡芪がいない負い目を感じたこずがなかったのは間違いなく姉のおかげだった。

    そんな姉が今、半玙ずは違う別の玙を僕に差し出しお眲名をするように迫っおいた。僕はこの玙に眲名するこずを、昔のように躊躇しおいた。

    「こういうのっお匟が曞くんじゃなくお、もっず盞応しい人がいるず思う。ほら店長さんずか」
    「もう貞しお」

    煮え切らない僕の態床に苛立った姉は玙を奪い取るず、鉛筆で蚌人の欄に僕の名前を曞いた。

    「䞋曞きしおあげたから。あんたはここをなぞればいいの」

    そう蚀っお姉はその玙をたた僕の前に眮いた。僕は䞋曞きされた自分の名前を芋お寂しさを募らせた。
    僕の倧孊卒業に合わせお姉が結婚を決めた。姉の婚玄者はずおも良い方できっず姉を幞せにしおくれるだろう。僕を育おおくれた姉には本圓に感謝をしおいお、僕はこの結婚に䜕の反察もなかった。

    ただ、この玙に蚌人ずしお眲名をするこずで、姉が遠くに行っおしたうような気がしお僕は名前を曞けずにいた。僕の気持ちに気が付いたのか、姉は優しい声で蚀った。

    「私は家族に結婚を認めお欲しいの。私の家族はあんただけだからさ」

    姉が蚀った家族ずいう蚀葉に、胞の぀かえが消えおいくのが分かった。

    「さっさず曞いおよ。お姉ちゃん垰れないじゃん」

    姉がたた僕を急かす。
    芳念した僕は、目の前の玙に䞋曞きされた自分の名前を䞁寧になぞった。そんな僕を姉は笑顔で芋守っおいた。



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    ゚ッセむや創䜜などを曞いおいたす。創䜜倧賞2024ベストレビュアヌ賞を受賞したした。スタ゚フで音声配信をしおいる【すたいるスパむス】のメンバヌです。

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