森の備忘録p.2「グラス草」
この森に来て二日目。
二日目といっても寝て起きたからそう言ったが、洞窟の中も外の森も依然として、明るいままであった。
一日のサイクルが長いのか、そもそも昼夜など無いのか、時差ボケのような不快感を感じながらも、今日も森へ出る。
昨日と同じ岩壁沿いを、今日は反対の方向へ進む。
しばらく歩くと、信号機の実をまた見つけた。
群生してはいないようだが、さほど珍しくは無いようだ。
一つだけ収穫して進む、残りは戻る時で良いだろう。
実を食べながら進むと、食べ切る間もなく、目当ての物を見つけた。
グラス草
ワイングラスが地面から生えている様に見える草。中には水が入っていて飲むことが出来る。
時間が経つと中身が増える。
根元に数枚の葉があり、そこから逆さの円錐状に透けてグラスに見える部分が広がっている。
ワイングラスと言うよりは、脚の短いシャンパングラスといった方がより表現が近い。
20cmくらいの高さの草で、一本当たりに蓄えられた水は100ml程度だろうか。
見渡すと周辺にも何本も生えており、根元の葉が緑色の草と茶色の草があった。
緑色の方から匂いを嗅いでみたが、顔を近づけても匂いはせず、水に指を浸し舐めてみると味もほぼ無い。
茶色の方も同じく匂いは無かったが、味には少し酸味があった。
緑のグラス草を1本引っ張ってみると簡単に引き抜くことができた。
根元の葉の裏側一面に生毛の様な根が生えているだけで、太い根は無かった。
時間が経つと水が増えるとあったので何本も抜くのは勿体無いが、グラス草は全体が硬く水を飲むには今は抜くしかない。
ゴクっと飲むと寝起きの喉に水分が染み渡るのが分かる。我慢できずに次々と飲んでしまった。
酸味のあった茶色のグラス草も摘んで飲んでみたが、すごく薄いレモン水の様な味がして美味しい。
飲み終わったあと、念の為、グラス草は同じ場所に植え直しておいた。あとで飲むために茶色と緑色を一本ずつ摘んで持って帰る事にした。
帰りにまた、信号機の実をいくつか収穫して、洞窟に戻った。
そして、本に向かう。
グラス草
ワイングラスが地面から生えている様に見える草。中には水が入っていて飲むことが出来る。
草の色によって味が違う。
緑色:無味無臭。普通の水。
茶色:少し酸味がある。
さっぱりして美味しい。
時間が経つと中身が増える。
書き終えた後、考えを巡らせる。
持ち帰ったグラス草も、飲み終えたら洞窟の前に植え直しておこう。
植え直したグラス草にも、水が湧いてくれるのなら洞窟の近くに何本か植えておきたい。
そうで無いのならグラス草を抜かずに飲む為にストローの様なものを探した方が良さそうだ。
収穫した物を入れる袋の様な物も欲しい。
そんな事を思いながら、また、本のページをめくる。