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ガララの物語:フェンネ嬢のご依頼 - 1 -



これが「ガララの物語」の本です






この日ガララは朝っぱらから、せわしなく動き回っていました。
ハンカチにスコップに虫眼鏡に・・・、こまごまとしたモノを机の引き出しから取り出しては 探検用のリュックに詰め込んでいきます。

身支度する彼の横には 小さなコオロギの姿があります。
彼女の名はリリク。
ガララの大切な家族です。
くっつきすぎて邪魔にならないよう気をつけながら、彼の支度する様子をただじっと見守ります。



「じゃあリリク、行ってくるよ。」
ガララはリリクのおでこにキッスをしました。
リリクは挨拶を理解しているのかいないのか、触覚をユラユラさせています。
この揺らし方はきっと 寂しい時のはずなのです。

実はこの日、ガララは「踏み込むのは危険」と言われているコガネ山へ向かう予定をしていました。
なぜわざわざそんな恐ろしい場所へおもむくのかといいますと、ご依頼の品を調達するためです。
ここの住民はみな、必要なものは物々交換をして手に入れているのです。

ガララの提供品は 彼の大好きな「石」。
今回 トレードするのはフェンネというミラージュサーカスの看板娘で、見目麗しい白毛のキツネです。
彼女は「シルクジェム」という名の、ミルク色に煌めくたいへん稀な石をお求めとのことでした。


いつも慎重で怖がりなガララです。
危ない山へ向かうには、精一杯 勇気を振り絞らねばなりません。
本心では家にいて アクセサリー作りを続けたかった彼ですが、しかし取引を受けたからにはまっとうせねば・・・。
残りの作業はいつものように、仕事を手伝ってくれる虫「ワーカーバグ」にお任せすることにいたしましょう。

ガララはクラフトゾウムシ1号・2号を工房へ呼びつけました。
そして 現在作っているロケットペンダントの図案を見せて、いくつか加工をお願いしました。

二匹はさっそく加工素材の平べったい金属片にとまると、そのゾウのように長い鼻を表面へ押し当て なぞるように器用にデザインを彫り始めました。

“おっと!バグたちへのご褒美を忘れてはいけないな。”
今度はキッチンへ向かいます。

皿を床に置くと、スイーツ棚から取り出した小振りのバケツを逆さにして その上で振りました。
バケツからは樹液ゼリーがブルブル、プルン!
皿に飛び出し、踊るように揺れています。

このべっこう色のダンシングゼリーに ホイップクリームとチョコレートをトッピングし、仕上げにヘビイチゴの実をテッペンに飾って…。
これで 樹液ゼリーアラモードのできあがり!

ヨダレが垂れましたので腕で口元をグイと拭いとると「お腹がすいたらリリクと三匹で仲良くお食べ。」
模様彫りに集中している二匹の後ろ姿にそっと声をかけます。



ガララは石探しに必要なペンデュラムをキャビネットから取り出しポッケへ入れると、リュックを背負い ピョンピョンピョンッ!
バッタにも負けないジャンプ力で 勢いよく玄関から飛び出していきました。

当てにならない地図と野性のカンを頼りに、目的地へ向かってズンズンと進みます。




「我々は 金バエと銀バエ でございやす。
誰に頼まれるでもなく用語を解説して差し上げます。」

「ワーカーバグ」

ガララなど多くの獣たちは 何か仕事をこなすときに、ワーカーバグというお利口な虫に作業の一部を手伝ってもらうことがよくあるんでゲス。

ワーカーバグはアッシら野良育ちと違い、バグストアという “虫をブリーディングしたり指導する店” で 獣らのお役に立てるよう日々、教育と訓練を受けているスーパーエリートバグでございやす。
例えばクラフトゾウムシは、物作りをする時にその能力を発揮します。

この世界には他にも様々な種類のワーカーバグが存在し、彼らは獣の豊かな生活を支えるために大切な一生を捧げているんでゲスよ。
実に 泣ける話でございましょ?(いろんな意味で)

では!
ブブブ、ブーン・・・!




▶ 第2話


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