
探偵小説・幻想 短歌30首
探偵の推理は告白めいていた真犯人に恋をしていた
記述者に嫌われたため探偵はすべての事件で失恋します
回廊の手すりに傷が二つありそこから先に迫れなかった
冬の日の光あふれる浴室の鏡に綴る殺人予告
薔薇色に埋め尽くされた密室はナイフの柄だけ銀色だった
塔の上の風に吹かれて探偵の外套の下に腕はなかった
「探偵の破滅が見たい」それだけが私が助手を続ける動機
「ぼくたちの名前しりとりできるよね」登場人物達が気づいた
どれくらい深い傷なら残るのか試してみたい古い鋏で
踊り場のメトロノームの針の血はきみを決して許しはしない
血飛沫は終わりではないほらドアの向こうの探偵たちのおしゃべり
午前五時河原で焼いた、きみの血はぬるい何かに変わっていたから
十二月すべての問いは満たされる彼女の喉の傷を除いて
気をつけて車は急に止まれない同じ作家は二人いらない
密室の鍵を溶かして飲み干したわたしは悪い探偵ですか
足跡のない雪の上密室の王を殺しにゆくドローンは
真実に興味が持てず推理中syrup16g聴いてた
熾天使の祝福受けた人はみな夏に死ぬの、と彼女は言った
探偵の生涯癒えぬ傷としてスピンのごとき黒衣の少女
怪盗のシルクハットがデパートの遺失物センターにあります
真実は希釈タイプのため水に1:4で溶かしてください
「きみは血に愛されすぎた」そう告げて助手は最後の引き金を引く
読者への挑戦状の封筒の切手の裏の黒い猫の毛
みずいろの色鉛筆を収集し人を殺せるほどとがらせる
ギルバートすべての針のてっぺんで踊る天使の夢を見せてよ
探偵はほとんど雪でできていて次の推理は十二月です
三日月を紅茶に浮かべ少女らのテラスひそひそ犯人さがし
真夜中の閉架に集う司書たちがチェスで伝える暗殺計画
迷宮は美しかった、そのなかに疲れた探偵ひとり隠して
ほるへ るいす ぼるへす ばらが咲くように裏を表にして醒めてゆく