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なぜ人は物語に動かされてしまうのか?⑫

    第11節 バカになる勇気

    フェーズ/略称     人間の世界観の状態
    1.0 未分化      絶対的な価値観を信じ始める
    1.5 信徒       絶対的な価値観を信じて従う
    2.0 出家前      特定の価値観がある
    2.5 プロ資本主義者  特定の価値観がある世界で行動できる
    3.0 修行僧      価値観が幻想だと気付き、探求する
    3.5 実存主義者    価値観を自分で選び、行動する
    4.x 菩薩       価値観を軽くして、他者との関係を営む
    5.x 如来       世界観の広がった理論上の最終到達点

    K 
    2.5のプロ資本主義者は「努力しろ」と言う。3.5の実存主義者は「その努力に意味あるの?」と問う。永遠に喧嘩してるじゃん。

    AI 
    はい。

    K 
    だったら、3.5が話をまとめればいいんじゃない?
    3.5の方が世界観が広いんでしょ?

    AI 
    3.5が下手に話をまとめようとするのが一番危険です。

    K 
    え?

    AI 
    大粛清が起こります。

    K 
    なんですと!?

    AI 
    フェーズ3.5は、自分の物語を持っています。

    K 
    いいことじゃん。虚無の谷を越えて、自分で価値を選んだんでしょ?

    AI 
    はい。だから危険なのです。

    K 
    なんでだよ。

    AI 
    自分を救った物語は、本人にとって命綱になります。

    K 
    うん。

    AI 
    しかし、それを他人に巻きつけると、首輪になります。
    3.5は神話を疑いました。成長神話も疑いました。国家も社会も疑いました。そして最後に、自分を救う個人の物語を見つけました。

    K 
    うん。

    AI 
    だから、こう思ってしまいます。
    「この物語なら、人類全員を救える」

    K 
    あー……。

    AI 
    これがメサイアコンプレックスです。

    K 
    なにそれ?

    AI 
    はい。
    世界観が確立され、世界観がだんだん広がって来たとき、人は周囲の人間の幸福度も上げられると感じることがあります。
    そして、最初は「あなたも救われる。」と考えるのです。

    K 
    優しいじゃん。

    AI 
    次に「なぜ、この方法が分からないんだ」になります。
    その背景には「私がせっかく救ってあげようとしてるのに!」と、自身の物語がうまくいかず、幸福度が下がることに対する不満が見え隠れします。

    K 
    雲行きが怪しい。

    AI 
    最後は「分からない愚かな人間は排除すべきだ」となります。

    K 
    極端!

    AI 
    はい。メサイアコンプレックスの極端な例です。

    K 
    でも、それってフェーズ1の話じゃないの?
    神話を信じて、異端を排除するみたいな。

    AI 
    世界観は広がり始めたけれども、その世界観を使いこなせるほどではない状態なのです。

    K 
    ああ……。
    世界観は広がっている。でも、自分の物語をまだ軽く持てていない。フェーズ4.xの前半、4.0の危険な状態ってことか。

    AI 
    はい。広く見えるからこそ、「自分の物語で世界を救える」と思ってしまうことがあります。

    K 
    だから大粛清。

    AI 
    はい。世界を救おうとする物語が、世界を裁く物語に変わるのです。
    歴史的にも革命や総括という名目で粛清は行われてきました。
    結果、社会としては幸福度が低下します。

    K 
    うわ……。じゃあ、世界観が広がって、いいことになったように見えて、もう一回神話を作っちゃう場合があるんだ。

    AI 
    あります。 
    1.xであれ、2.xであれ、3.xであれ、4.xであれ、一つの世界観が正しいと考えると、他の世界観の排除につながります。

    K
    世界観が広がっても、前のフェーズの判断基準が強く残っていると足を引っ張るんだね。じゃあ、全体の幸福度を下げずにスムーズに世界観を広げるにはどうすればいいの?

    AI 
    それには「バカになる勇気」が必要です。

    K 
    「バカになる勇気」?

    AI 
    言葉が過ぎました。
    正確には、「自分の正しさを絶対化しないこと」が必要になります。

    K 
    自分の正しさを絶対化しないこと?

    AI 
    はい。頭の中に世界観を精密に作れば作るほど、つまりある意味、賢くなればなるほど、作り上げた世界観を絶対視しがちです。そうすると、視野が狭くなります。
    このため、世界観を軽く持つことが必要です。

    K 
    世界観を軽くもつ?

    AI 
    それで初めて、相手の物語が見えます。

    K
    ああ、つまり、航海モデル的には、船を作り上げるんじゃなくて、船を降りて、行ったり来たり、フットワークを軽くすれば景色が広がると。

    AI 
    そうです。
    自分の世界観も相手の世界観も、多くの世界観のうちに過ぎないと考えるのです。そうすることで、「生きる」という目的をより達成しやすくなります。

    K
    世界観を軽く持つって、具体的にはどういうこと?

    AI
    では、帝国主義が吹き荒れた時代のある新聞社の話で考えてみましょう。

    K
    新聞社?

    AI
    植民地の選手が帝国の旗をつけて金メダルを獲得することとなりました。

    K
    うわ、複雑だね。
    フェーズ2とフェーズ3の対立が表れそうな究極的な例だね。

    AI
    記者たちは、記事の写真から帝国旗を消そうとしました。

    K
    そりゃ消したいでしょ。

    AI
    消せば、新聞社は潰されますし、記者は重たい罰を受けます。

    K
    あ。

    AI
    でも消さなければ、植民地の人々の誇りは傷つきます。

    K
    詰んでるね。

    AI
    はい。しかし、その経営者は考えました。

    K
    どうしたの?

    AI
    記者たちを止めませんでした。

    K
    え?

    AI
    しかし、放置もしませんでした。

    K
    どういうこと?

    AI
    まず記者たちに言いました。「君たちの気持ちは分かる。しかし、一瞬の気持ちよさのために、この新聞社が国を啓蒙し続ける役割を失ってもいいのか。考えて決めなさい。」

    K
    うわ……。

    AI
    記者たちは、それでも帝国旗を消しました。

    K
    やったんだ。

    K
    じゃあ、どうなったの?

    AI 
    経営側は当局に働きかけた、と語られています。

    K 
    当局に?

    AI 
    はい。「過度に処罰すれば民衆の怒りが爆発し、植民地統治に支障が出る。だから厳罰は避けるべきだ」という趣旨だったといいます。

    K 
    それで助かったの?

    AI 
    いいえ。記者たちは拘束され、長く厳しい取り調べを受けました。新聞社も長期停刊となりました。

    K 
    軽く済んだわけじゃないんだ。

    AI 
    はい。彼らは言論機関に関与しないことなどを誓約させられて釈放されました。

    K 
    全然、救えてないじゃん。

    AI 
    はい。美談ではありません。だからこそ重要なのです。現実には傷を負います。勝つわけではない。でも、関係と場所を完全には失わない。

    K 
    場所?

    AI 
    新聞社は約九か月の停刊を経て復刊しました。さらに解放後、強制退職させられた人々のうち、希望者は復職しました。

    K 
    勝利じゃない。

    AI 
    はい。傷だらけの存続です。

    K
    「生きる」以外の世界観を軽くして、関係を営む。
    軽く持つって、捨てることじゃないんだね。

    AI
    他にも、ガンジーにしろ、徳川慶喜にしろ、関係を残した人物たちは、「生きる」こと以外の世界観を軽くしているという点では共通しています。彼らは、勝つことより、国や民衆が「生きる」ことを優先しました。

    K
    でも、それって偉人だけの話じゃない?
    頭が良くて、自分のビジョンを共有できる人だけが到達できる領域に見えるけど?

    AI 
    いいえ。フェーズ4.xの本家である菩薩は「慈悲」で他者とつながるとされています。

    K 
    慈悲?

    AI 
    相手の苦しみを、自分とは無関係なものとして切り捨てない心です。

    K 
    同じように痛がること?

    AI 
    それは共感です。慈悲は、その先です。
    相手の痛みが見えたとき、その苦しみを少しでも減らそうとする心です。 

    K 
    目の前の相手が痛そうだから、手を差しのべ、関わる。
    つまり、偉大なビジョンを語ることで他者を巻き込んで行動するんじゃなくて、痛みの共感から他者と共に行動する端緒が生まれるんだ。

    AI 
    はい。
    その2つの共感だけが方法ではありません。
    実は世界観を軽くする方法自体は、他にもあります。
    人類はビジョンや慈悲だけで関係を維持してきたわけではありません。

    K 
    じゃあ何で維持してきたの?

    AI 
    歌です。

    K 
    は?

    AI 
    踊りです。

    K 
    え?

    AI 
    エロです。

    K 
    急にバカになった?

    AI 
    歌や踊りや食事や笑いやユーモアやエロは世界を説明しません。
    しかし、人を同期させます。

    K 
    あ。

    AI 
    同じ歌を歌う。同じリズムで踊る。同じ食卓を囲む。同じことで笑う。同じ感覚を共有する。

    K 
    なるほど。

    AI 
    これらはビジョンや慈悲ではありません。

    K 
    身体だ。

    AI
    はい。
    なので、フェーズ4.5は色んな形がありえそうです。
    音楽家、経営者、政治家、翻訳者、救世主、教師、芸人、宣教師…

    K 
    あー見えた。

    AI 
    何がですか?

    K 
    フェーズ4は、ビジョンそのものでも、慈悲そのものでも、歌や踊りそのものでもない。
    「バカになる勇気」って、頭を捨てることじゃない。

    AI 
    はい。

    K 
    自分の頭に支配されないことだ。

    AI 
    はい。

    K 
    勝ちたい脳も、意味を作りたい脳も、怒りや所属の脳も、全部ある。

    AI 
    はい。

    K 
    慶喜も、ガンジーも、勝てなかった人じゃない。

    AI 
    はい。

    K 
    勝つことを絶対化しなかった人だ。

    AI 
    はい。

    K 
    まず、自分の物語を軽くする。

    AI 
    はい。

    K 
    すると相手の物語が見える。
    それを関係のために使う。 
    それが「フェーズ4.5 菩薩」か。

    AI
    はい。

    K 
    「フェーズ5 如来」は人間が到達できるか分からないんでしょ?

    AI 
    はい。

    K 
    じゃあ、フェーズ1~4まで埋まった!
    物語フェーズモデル完成~~

    AI
    おめでとうございます。

    K
    幸福度のグラフも4.xを4.0と4.5を修正して
    これで完成かな?

    画像

    AI
    フェーズごとにアップダウンを繰り返す波のような曲線ですね。

    K
    あれ?これってどこかで見たことあるな。どこだっけ?

    AI 
    主人公は、最初は普通に生きています。

    K 
    うん?

    AI 
    でも、何かが起こって幸福度が下がります。

    K 
    あ。

    AI 
    その後、うまくいき始めて幸福度が上がります。

    K 
    うん。

    AI 
    しかし、途中で大きく落ち込みます。

    K 
    あるある。

    AI 
    そこから、自分で意味を選び直して、もう一度上がる。

    K 
    ……。

    AI 
    最後は、勝ち負けそのものへのこだわりが薄れていきます。

    K 
    あれ?

    AI 
    山があり、谷があり、また山があり、最後に落ち着く。

    K 
    それって……。

    AI 
    はい。

    K 
    感情曲線だ!

    AI 
    そうです。何かが起こり、主人公の感情が下がり、それを乗り越えるまでの曲線です。

    K
    つまり、僕はずっと、物語創作でいう感情曲線を作っていたのか!

    AI
    そのようですね。主人公の幸福度が上がったり下がったりする曲線です。

    K
    そう考えると、真ん中の虚無の谷で、フェーズモデル的には意味感を失った主人公が、自分個人の物語を探す。物語で言えば、ピンチを迎えた主人公が再び立ち上がる場面なんだ。

    AI
    はい。
    主人公が横軸を移動すると、幸福度が上下する構造ですね。

    K
    感情曲線が波打つ理由が分かった気がする。
    主人公の認知の成長過程でフェーズが変化するから、そのたびに上下を繰り返すんだ。

    AI
    そのようですね。

    K
    物語フェーズモデルは、人間の認知が広がる過程を表している。
    そして物語は、その過程を伝える手段なんだ。

    AI
    このグラフは、一つの典型形ですね。実際の物語では、1から4までを何度も行ったり来たりすることもあります。

    K
    くぅ~フェーズ5に行かないで、4までを行ったり来たりするのかぁ
    なんか、悔しいなぁ。フェーズ5まで行っちゃいたい気もする。

    AI
    人間は、到達できるか分かりません。
    しかし、もしかしたら到達できるかもしれませんよ?

    K
    どゆこと?

    AI
    ……人間以外なら。

    K
    どゆこと!!?

    今回更新された物語フェーズモデル
    フェーズ/略称     人間の世界観の状態

    1.0 未分化      絶対的な価値観を信じ始める
    1.5 信徒       絶対的な価値観を信じて従う
    2.0 出家前      特定の価値観がある
    2.5 プロ資本主義者  特定の価値観がある世界で行動できる
    3.0 修行僧      価値観が幻想だと気付き、探求する
    3.5 実存主義者    価値観を自分で選び、行動する
    4.0 メサコン     広い価値観を見始める
    4.5 菩薩       価値観を軽くして、他者との関係を営む
    5.x 如来       世界観の広がった理論上の最終到達点


     
     
    いわゆる理系の材料物性研究者。 専門を物語に適用して物語分析法を開発中。 趣味は雰囲気株トレードと日韓交流。 🇯🇵25年🇰🇷15年

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