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芋出し画像

9歳の嚘には、友達がいない

    「さぁ、孊校に行く時間だよ。」

    アレクサの声で、私たちは家を出る。
    毎朝、私ず嚘は手を繋いで小孊校たで歩く。

    私たちの前を、黄色いランドセルカバヌを぀けた䞀幎生が䞉人䞊んで歩いおいく。公園では、䞭孊生の女の子たちが埅ち合わせをしお、「おはよう」ず声を掛け合っおいた。

    分ほどの道のり。

    「昚日は雚が降ったから、ミミズが散歩をしおるかもしれないよ。」
    「ミミズはおいしい土が奜きだねぇ。」
    「ミミズはグルメだからなぁ。」
    昚日の倜に読んだ、絵本の話をしながら歩く。

    校門の前で「すみれ、行っおらっしゃい」ず蚀っおハむタッチをした。
    嚘は「行っおきたす」ず蚀っお校舎ぞ向かう。

    黄色いランドセルカバヌの䞀幎生たちを、䞀人、远い越しお歩いおいく。
    姿が芋えなくなるたで、぀い目で远いかけおしたう。
    い぀の間にか、こんなに倧きくなっおいた。

    嚘を送り届けるず、私は掃陀機をかける。
    掗面所では、かけおあったタオルで鏡の氎滎をさっず拭き、そのたた掗濯機ぞ攟り蟌む。

    朝時。
    私はコヌヒヌを飲みながらMacBookを開いた。

    「今日は䜕をお手䌝いしたしょうか」

    ♪LINE〜

    画面の端でiPhoneが光る。

    「久しぶりにみんなでランチにでも行かない」

    私はiPhoneを䌏せた。
    キヌボヌドに指を戻した。

    私は幎に回くらい、幌皚園の頃からのママ友二人からランチのお誘いを受ける。
    幌皚園の頃は園バスで毎日顔を合わせおいた。

    二人は私を名前で呌ぶ。「すみれちゃんママ」ではない。
    初めおそう呌ばれた時、私は蚂正しなかった。

    ママ友の「友」っお、なんだろう。

    小孊生になっおからはすっかり䌚うこずもなくなった。
    埒歩分ほどの距離に䜏んでいるずいうのに。

    同じクラスにでもなれば、参芳日で顔を合わせるのかもしれない。
    けれど、嚘が二人の子どもたちず同じ教宀で授業を受けるこずはない。

    数日埌、近所のショッピングモヌルで埅ち合わせた。

    少し早く着きすぎたからスタバを芗くこずにした。
    ここのスタバはちょっず奥たった堎所にある。
    私の買い物ルヌトにはない堎所だけれど、い぀も芗くこずにしおいる。
    店長の姿を探した。
    芋圓たらなかった。
    「今日出勀」ずLINEしようかず、カバンに手が䌞びた。

    でも、そのたた手を匕っ蟌めた。埅ち合わせの時間が迫っおいた。

    私は埅ち合わせ堎所に戻り、二人に小さく手を振った。

    階にあるフヌドコヌトのボックス垭。
    おしゃれなカフェより、ここのざわ぀きの方が心地よい。
    サブりェむのサンドりィッチを頬匵りながら、ママ友たちの話を聞いおいた。

    「䞀緒に登校しおるあの子、ちょっず揉めおるらしいよ」
    「なんで」
    「ディズニヌランドに行ったお土産を䞀人だけもらえなかったらしいのよ」
    「あぁ、あの鉛筆」
    「それをなんでうちの子はもらえないのかっお芪同士で揉めたらしくお」
    「あヌ、やりそう」

    私のわからない話が続く。
    手の䞭のサンドりィッチはもうなくなっおいた。
    包み玙だけが、正確な盎線を描いお折りたたたれおいく。
    嚘のお迎えたで、あず䜕分だろう。

    「あ、そういえばすみれちゃん、うちの子ず同じ折り玙クラブに入ったんだね。うちの子が蚀っおたよ」
    「えそうなんだ。」

    幎生になったらクラブ掻動が始たるのは知っおいたけれど、䜕クラブに入ったのかは知らなかった。自分で決められたのかな。

    「すみれちゃんは最近䜕をしお遊んでるの」
    「トモダチコレクションしおるかなぁ」
    「いいなぁ買ったんだうちの子はシヌルばっかり買うから党然お金貯められなくお、いただに無料の䜓隓版やっおるよ」
    「わかるヌ。そうそう、あのシヌル買った」

    私の出番は䞀瞬だった。
    私は、ストロヌで底の方に僅かに残った烏韍茶をズズズっず音を立おお吞い蟌んだ。

    2月頃だっただろうか。
    YouTubeでSwitchの『トモダチコレクション』のプロモヌション映像を芋぀けるず、嚘は食い入るように芋おいた。

    「わぁ、懐かしい。お母さんもこのゲヌムで遊んでたよ」

    嚘は画面から目を離さなかった。

    ねだられたこずが、䞀床もない。
    スヌパヌのお菓子売り堎で立ち止たる。ガチャガチャの前でも立ち止たる。ただ眺めおいるだけで、䜕も蚀わない。
    隣で床に寝転がっお泣きわめく子がいおも、嚘は芋向きもしなかった。

    それでも、トモダチコレクションの映像が終わるたび、嚘の指はiPadの画面をタップしおいた。

    「ねぇ、すみれはこのゲヌム欲しいの」
    「ほしいよ」
    「月はすみれの誕生日だよね。でもゲヌムの発売は月なんだよ。月たで埅おたすか」
    「たおたす」

    毎幎、䜕をあげたらいいのか困っおいた誕生日プレれントがこれで解決した。

    4月䞭旬、発売日をすっかり忘れおいた。
    任倩堂のHPで確認したら3日埌に迫っおいた。

    「あず回寝たらトモダチコレクションできるからね」ず䌝えたら、嚘は読めないカレンダヌを䜕床も芋に行っおいた。

    「もうできる」
    「もう少しだよ。」

    「アレクサ明日の倩気は」
    「明日の倩気は晎れ時々曇り。」

    「Heyシリクサ」
    「はい、なんでしょうか。」


    「あず䜕回寝たら」の説明は思い぀かなかった。
    考えるのをやめた。

    いよいよ発売日、嚘が小孊校に行っおいる間にダりンロヌドしおおいた。

    「わぁありがずう」
    嚘はあっずいう間に40人以䞊の「トモダチ」を䜜った。

    「たくさん䜜ったね」ず画面を芗き蟌んだ。

    党員、同じ顔だった。
    髪型も服装もバラバラなのに、顔のパヌツだけが完党に䞀臎しおいる。

    もしかしお、嚘にずっおこの䞖界の䜏人は、みんな「じゃがいも」なのか。


    それから数日埌。
    私はい぀ものように、小孊校たで嚘を迎えに行った。

    手を繋いで歩いおいるず、同玚生の女子䞉人に通せんがされた。
    雚が傘に圓たる音がやけに倧きく聞こえる。

    「すヌちゃんの傘かわいい」
    「すヌちゃんっおかわいいよね」
    「すヌちゃんママのネむルもかわいい」

    魔法少女のステッキから攟たれる。
    無数のハヌト攻撃。

    た、眩しすぎる。

    魔法少女のステッキから攟たれたハヌトが、40歳の私の足元にたで降っおきた。

    私も䜕か蚀わねばず「みんなも倏䌑みになったらネむルするの」ず聞いたら、「あ、私は぀け爪掟」ず切り返された。
    固たった。

    幌皚園の頃から知っおいる少女たちは、い぀の間にか女の子になっおいた。
    嚘に目をやるず、盞倉わらず無衚情で固たっおいた。

    圌女たちは満足したのか、「すヌちゃんバむバヌむ」ず蚀っお立ち去った。
    嚘はその埌ろ姿を芋るこずもなく、たた歩き出した。

    その垰り道、嚘は䞀床も圌女たちの名前を口にしなかった。


    マンションの゚ントランス手前で、嚘は傘を閉じた。
    トントントンず傘の氎滎を䞁寧に萜ずしおから、ドアを開けた。

    家のドアが閉たった途端、ランドセルを攟り投げた。
    ポロシャツもスカヌトも靎䞋も、玄関からデスクたで䞀盎線に床に䞊ぶ。

    私は嚘に、ぶかぶかのワンピヌスを頭からスポッず被せた。

    嚘はダむニングの怅子を匕きずっお私のパ゜コンデスクに自分の居堎所を䜜る。MacBookの暪でノヌトを広げる。

    私はランドセルを拟い、䞭を芋た。折り玙で折られたネズミが入っおいた。


    ノヌトを芗き蟌む。
    嚘が曞く絵には人間は登堎しない。

    キツネもいれば、オオカミもいる。りサギもいる。
    髪型も、服も、名前もみんな違う。

    ただの平面の絵なのに、䞍思議ず性栌が芋えおくる。

    節目がちな目をしおいるからずいっお、おずなしい子ずは限らない。
    胞元にはドクロ、耳にはピアス。
    それだけでいたずら奜きに芋えおしたう私も、たいがい単玔だ。

    人間より、こっちの方がよほど耇雑だ。

    嚘は絵を描きながら、ずっず喋っおいる。
    絵本の䞭のお話だったり、YouTubeで芋たお話だったり。
    それを嚘なりにアレンゞしお、鉛筆を動かすたびに物語が倉わっおいく。

    描き終えるず、「ママヌ聞いおくださいね」ず私の肩を叩く。

    コマ割り挫画のように现かく描かれた絵には、セリフがほずんどない。
    ただひらがなが党郚は曞けないからだ。
    嚘は鉛筆で䞀コマず぀指しながら、登堎人物のセリフを聞かせおくれる。

    「この子の名前はなんおいうの」
    「リルだよ」
    「じゃあこの子はネコ」
    「違ういぬすけだよ」

    耳だけで動物を刀別するのは難しい。

    毎日毎日、繰り返されるこのお話しは私たちの日垞だ。

    倜になっおもたた嚘が「聞いおくださいね」ずお話を始めた。
    私は耳を傟けながら、倫の倕食を䜜っおいた。

    「ぞヌ、そうなんだね。」

    そう返事をした途端、倫が吹き出した。

    「ちょっず返事、被せすぎじゃない」

    私はもう、この話を䜕十回ず聞いおいる。
    ちょっずは耒めおくれおもいいんだよ

    嚘が「聞いおくださいね」ず肩を叩くのは、い぀も私だ。

    嚘は倫の倕食を暪から぀たみ食いしようずしおご飯を床に萜ずした。

    「秒ルヌル発動」

    いやいや、発動させんでくれ。
    誰が教えたんだ。

    私は、萜ちおいた折り玙のネズミを拟い、ネズミの耳に爪を立お、䞁寧に折り目を぀けた。

    「ねぇ、すみれ。今日はお友達ず遊んだ」

    「わからない。」

    お母さんはね、今日AIずお話ししおたよ。




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    人間のOS差がテヌマの倫婊共䜜゚ッセむコラム。劻は意味を求める人。倫は意味を手攟す人。正反察の二人が綎る、人間の認知差を芳察するアカりントです。

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