メインコンテンツへスキップ
見出し画像

オヤジの靴下考 大人男子の靴下について❶ -An old gentle man's style book-

    これは、オヤジの靴下――いや、ちょっと格好をつけて言うなら「ソックス」にまつわる話である。

    その昔、「不倫は文化である」と高らかに宣のたまった男がいた。発言の真偽のほどはさておき、世間を騒がせたその御仁、石田純一氏が、当時火をつけた流行ファッションがあった。

    そう、スリップオンタイプの革靴を、素足で直穿きするという、あのスタイルだ。

    今どき六本木界隈でセットアップのスタイルでキメてるオヤジたちにはなんのことはない、当たり前のファッションであろう。

    聞けばこの洒落た装い、どうやらイタリアあたりからやってきたらしい。なるほど彼の国は、湿度も低く、家に上がるときに靴を脱ぐ習慣もない。だからこそ可能な芸当なのだろう。

    しかしその昔、日本のイケてるオジサマたちは、その背景など気にも留めず、こぞって真似をしたものだ。

    かく言う私もその一人。

    昔から紐靴が苦手だった私は、スリップオンの革靴、ペニーローファーを何足か持っていた。
    で、試してみたのだ。
    例の、素足で革靴というやつを。

    ところがである。

    あれは、日本男児に許されたスタイルではなかった。

    少なくとも、私には無理だった。

    何しろ我が足は大和民族の特徴である「甲高バンビロ」。
    つまり、足の幅が広くて、甲が高い。

    履き始めてすぐに、親指の付け根が痛み出し、悲鳴をあげた。

    オシャレもいいが、歩けなければ意味がない。

    そもそも、あのスタイルは、よほど上等な舶来品で、しかも革が柔らかくないと成立しないのであろう。加えて若かりし頃の私の足は、代謝が旺盛な「ベタ足」。さらに日本の高温多湿な気候がそれに拍車をかける。

    梅雨どきから夏にかけては、もうそれは悲惨。靴下なしでは、革靴の中が蒸れて、敗残兵の雨中の行軍のようになる。朝の通勤だけでこれである。

    画像

    だから、もはや「文化」とか「ファッション」と言うより「苦行」であった。

    素足に革靴を履いた石田氏(とあるスポーツクラブでお見かけしたことがある)には、少しばかり憧れた。しかし、現実には到底かなわぬ夢。
    私にとっては、まさに無理ゲーであった。
    靴下は当時、必需品だったのだ。


    年月は流れ、ジジイになった私は、ある日ふと思った。

    「あの夢よ、もう一度」と。

    今ならいけるかもしれない。何しろ、汗もあまりかかなくなったのだ。

    で、スニーカーで再挑戦してみた。

    ――やっぱり、無理だった。

    今度は、履くのはいいのだが、脱ぐときが問題だった。

    靴を脱ぐときに、インソールがベタ足に吸い付いて、一緒にぺろんとめくれて出てきてしまったのだ。
    まるで「宣誓!わたくしわぁ、汗っかきのぉ、ベタ足でぇす!」と高らかに宣言しているようなものだ。

    幸いそれは自宅の玄関での出来事だったから良かった。だが、これが外出先であったなら…と思うと、ゾッとする。

    そんなわけで、日本生まれ日本育ちのジジイは、今日もせっせとファンシーなソックスを探している。

    まあ、多少贅沢でも、足元くらいせめてオシャレに装いたいではないか。
    靴下の折柄ひとつに、小さな美学を求めて。

    ❷へ つづく


    お勧めのオシャレな靴下をご存知の方は、是非コメント欄でご紹介ください。有用な情報をいただいたnoterの方には、サポートをさせていただこうと考えております。




     
     
     
    人生後半、まだ物語の途中 医師を辞し、馬に乗り、文章を書く 遅咲きのライダーにしてライター 名前はペンネームです 人生の終盤という未踏地を、実録とエッセイで歩く 人間の弱さと可笑しさを、少しだけ解剖してみる

    あなたへのおすすめ