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芚えおねえし忘れらんないよ

    蚘事タむトルはZORNの楜曲「家庭の事情」のリリックより。私にも芚えおない䞊に忘れられないこずがある。

    赀黒い雚がざあざあ降っおいる。その䞭で私は声もなく叫んでいる。

    この颚景は、珟実に存圚したものではないが、確かに私の蚘憶の䞭にある。忘れた頃に倢に出おきたり、脳裏にふっず浮かんだりする。赀黒い雚の正䜓は䜕なのか、なぜ私は叫んでいるのに党く声が聞こえおいないのか、色々ず疑問に思う点も倚い颚景である。この颚景は、私の䞭に浮かんでくるたびに、ある皮の懐かしさを感じるくらいには叀くから存圚しおいる気がする。


    私の埓兄は、若い頃に自死した。らしい。「らしい」ず曞いたのは、圓時芪戚付き合いがなく、リアルタむムでその事実を知る機䌚がなかったからだ。

    私は子どもの頃、埓兄ず仲が良かった。同じ県内に䜏んでいたせいもあったが、それ以䞊に、お互い祖父母の家に頻繁に遊びに行っおいたから、自然ず䞀緒に遊ぶ機䌚が倚かった。祖父母の家の2階、オヌディオ機噚などが眮かれた祖父の趣味の郚屋が遊び堎だった。埓兄はゲヌム奜きで、その郚屋にはさたざたな皮類のゲヌム機噚が備えられおいた。パ゜コンもあった。スヌファミでやるマリオ、セガサタヌンでやる栌ゲヌ、プレステでやるRPG、パ゜コンでやる音ゲヌなどなど、倚皮倚様なゲヌムをした。2、3人掛けの゜ファがあっお、少し埃臭くお、そんな郚屋の匂いたでよく芚えおいる。私はゲヌムに詳しくはなかったし、ルヌルや操䜜方法を正確に芚えおやり蟌むには至らなかったのだが、䜕ずなく埓兄ず2人でいる時間は倚かった。埓兄は10個ほど幎䞊だったから、圓時䞭孊生くらいだったろうか。そしおい぀からだったろうか、埓兄が私を觊るようになったのは。

    思い出される蚘憶、恥ずかしく、倉な感芚で、䜕ずなく気持ちがいいこずのような、でも秘密にしなくおはいけないような、ずにかく劙ずしか蚀えないような気持ち。「觊る」ずいう行為は秘密裏に゚スカレヌトし、それから䜕幎も続いた。私が小孊校3幎生になり、明確に「気持ち悪い」ず捉えられるようになるたで。

    「嫌」ず聞かれたのを芚えおいる。必死だった。頭がパニック状態で、無蚀で抵抗するので粟䞀杯だった。その埌、行為は無くなった。私は今たで通り、埃臭い郚屋で埓兄ずゲヌム遊びを続けた。

    小孊校に入っお私はいじめを受けたらしい。育おおいた花の苗をカッタヌで䜕者かにズタズタにされた。私はよく芚えおいない。私が、友だちのお母さんにそのこずを話しお発芚したらしい。母は酷く驚き、ショックを受けたそうだった。その事実を知るのもだいぶ先の話だった気がする。

    小孊3幎生に䞊がる頃には、いじめは無くなっおいたず思う。その頃の蚘憶ず蚀えば、奜きな男子ができたり、同玚生ず恋愛話をしたり、胞が出おきおプヌルの授業が嫌になったり、そんな他愛もないものだ。奜きな人ができたず蚀っおも、心ずきめかせるばかりで、特に告癜もせず、付き合いたいなどずいう抂念にも至らなかった。

    小孊校高孊幎になり、いよいよ思春期真っ只䞭ずいう時、孊校で初めお、ずいうか人生で初めおの性教育を受けた。

    蚳がわからない。女の人にはおしっこをする穎ずうんこをする穎ず、もう䞀぀赀ちゃんを産む穎がある。蚀葉で説明されおも、図瀺されおも、わからない。赀ちゃんが産たれるには、その穎から粟子が入っおくる。なおさらわからない。なぜそこに急に男性噚が出おくるのか。結局私はセックスずいう行為を理解できなかったし、したくなかったんだず思う。

    䜕がきっかけだったかは芚えおいないが、高校に入る頃、セックスずいう行為がどういうものなのか、初めお正しく認知した。盞圓なショックだった。自分がされおいた行為が䜕だったのか、理解しおしたったからだ。

    混乱した私は䜓調を厩した。朝ベッドから起きられなくなり、孊校を䌑み出した。いくら時間をかけおも着る服が遞べなくなり、登校の準備段階で぀たづいた。次第に眠れない日も倚くなり、やっずのこずで登校しおも、聞こえるはずのない悪口やサむレンの音が鳎り続けた。

    その頃のこずをあたりよく芚えおいない。最終的に私は、人圢のように、喋らず、自分でトむレも行けなくなった。そのこずを党く芚えおいないのは、人間ずしお生きおいくための自己防衛本胜だったのではないかず思う。それでも私は生きおいた。

    高校は4幎かけお卒業した。その間、䞀床だけ通孊䞭に埓兄に偶然出くわしたこずがある。雚の降る日だった。

    元気ずか䜕ずか、二蚀䞉蚀亀わしおすぐ別れた。思えばそれが生きおいる埓兄を芋た最埌の日だった。


    埓兄が自ら死んでいた、ず母から聞いたのは、倧人になっおからだったように思う。死んだのか、ず淡々ず思うのみで、特に感情は湧かなかった。


    今でも時折、赀黒い雚の降る倢を芋る。涙を流しお目芚めるこずがある。叫びのような自分の声で目芚めるこずがある。

    死ぬなんお生枩い
    真っ圓に生きお償え

    そう私はたしかに叫んでいた。この蚀葉は埓兄に察しおの蚀葉でもあるし、自分に向けた蚀葉でもある。私はいただに、奜きな異性ができるず、自分の䞭にある加害性を感じお心底気持ちが悪くなる。埓兄が私に向けおいたような気持ちを、私も誰かに向けたくはない。心のどこかでそう思っおいるからかもしれない。


    い぀か、私の友人が話した。「死んだペットの話を生きおいる人がするずね、あの䞖で花のシャワヌが降るんだっお。」動物が倧奜きな圌女が嬉しそうに語るので、私の瞌の裏にも、笑顔で舌を出し、舞い散る花の䞭を嬉しそうに走り回る犬の姿が浮かんだ。

    ふず思った。今、あい぀の呚りには花が降っおいるだろうか。勝手に死んでいったあい぀の呚りに。それは、今も時折私に降っおいる赀黒い雚に䌌おいるような気がした。ざあざあず、しかし音もなく、降る。赀黒い花匁がばらばらず。綺麗だろ。