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『冬鳴(とうめい)』

    新緑の影に侵された小径を歩いていたら、足元に
    「下水道に生まれたいのち」を見た。

    氷菓を食べた直後の歯磨き
    口の中には火薬の匂いがあった

    片手に収まるほどの回数しかない青の記憶には
    いつも雲
    この腕では抱えきれないほど
    この脚では振り落とされてしまうほど


    色に吸い寄せられて
    色々なものを見た

    ぼくには一体何が残っただろう

    新緑も火薬も雲も、全てすり抜けていった
    遠くなっていった
    消えていった


    花を買えば全てが治ると思い込んでいた

    根から腐ったものはもう戻れない


    五月雨
    いつも逃げ場所を探している

    いつも いつも いつも いつも

    聖書にも書いてあったこと

    ぼくには分からない

    どこに縋ればいいのか分からない

    揺れる時は右に左に 上下左右に

    無意識に血管に触って存在を確かめている
    生きている時にしか現れない幻覚


    幻を見続けることが 人の生




     
     
    大学生 詩・日常 ・読書記録・音楽・映画・考え事

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