
定時退社が消えた華金、我が家には「生ゴミ香る肉食獣」が待っている。
昨晩、家の中で飼っている猫のむぎとゆずによって、我が家はまるで空き巣に入られたかのような状態になっていた。
「とりあえず! とりあえず帰ってきてから片付けよう!」
そう決めて、朝は見なかったことにして家を出た。
そう。朝の時点では、私は定時で帰れると思っていたのである。
会社に着いてPCの電源を入れる。毎朝、自分のスケジュールにその日やることを書き込む時間が結構好きだ。すると、自分で入れていない予定がひとつ。
14:00 Zoom会議
事前予告くらいしてくれよお。
しかも本社のお偉いさん参加。
はいはい、またAIコンパニオン山田の出番ですね?と、半分諦めた顔で出席の返事をした。
この時点で、定時退社はほぼ消えた。
さらに昼休みが終わり、「午後は何のおやつを食べようかな」と平和なことを考えていた時だった。
「ごめん……午後、休んでいい?」
職場の1人がダウン。
うおおおおあああ!!!!
もう残業確定なのでね!!! 全然いいよぉ!! 19時でも20時でも残るよぉ!?!?
……と、謎のハイテンションになった。(山田の定時は16時である)
華金のはずだった。
早く帰れたら、荒れ果てたキッチンを片付けようと思っていたのだ。
それが、この結果である。
今朝のむぎは、そんな人間の事情など知らない顔で、自動給餌器を壊そうとしていた。
お腹が空いているのである。
むぎよ。なぜ君は常に腹ペコなのだ。
ゆずは自動給餌器から出たご飯を、お腹がいっぱいになると数粒残す。
すると、待ってましたと言わんばかりにむぎが食べる。
しかも、人間のご飯への執着もすごい。
一度もあげたことなんてないのに、「もらえるかもしれない」という希望だけで生きている。
先日、親友が遊びに来た時にケンタッキーをテイクアウトしたのだが、その時のむぎは大変だった。
どうにかして一口。
いや、一ミリでもいい。
そんな気迫で、とにかく手が出る。
何度言い聞かせても、叱っても、
「どうにか! そこをどうにか!」
という営業を、私たちが食べ終わるまで続けていた。
でも不思議なことに、お肉やお魚には異常なほど執着するのに、私の食事が納豆、キムチ、豆腐、おひたし、蒸し野菜みたいな健康節約メニューだと分かった瞬間、尻尾を巻いてどこかへ行ってしまう。
なんという猫なのか。
とても肉食動物らしい猫である。
ゆずはその点、何を食べていても気にしない。ゆずの方が野良猫歴は長いのに。
だから昨日、生ゴミを漁っていた犯人も、たぶんむぎなのだろう。
ふわっと漂う生ゴミの香りを嗅ぎながら、私は思った。
「そろそろシャンプーしなきゃねぇ」
そう言うとむぎは、「はて?何を言ってるのやら?」という顔でこちらを見ていた。

でも、今日も元気いっぱいに飛び回って、ゆずを追いかけ回している姿を見ると、やっぱり元気でいてくれるのが一番だと思う。
追いかけられるゆずは、少し不憫だけれど。
雨の日は、仕事に行く足取りも重くなる。
今日みたいに残業続きなら、なおさらだ。
それでも家に帰れば、きっと2匹が待っている。
荒れた部屋も、散らかったキッチンも、また何か壊されているかもしれないけれど、それでも帰りたい場所があるのは、案外すごいことなのかもしれない。
雨の日が少し好きになれるのも、仕事を少し頑張ろうと思えるのも、結局は同じ理由だ。
今日も私には、「早く帰りたい」と思える誰かがちゃんといる。
