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短編小説|サンタ酸

     クリスマス前、理科室からサンタ酸を盗んだ。
     母にも鈴太りんたさんにも見つからないように家へ持ち帰り、学習机の引き出しに茶色い小瓶を忍ばせた。
    「サンタさんに、なに頼んだ?」
     鈴太さんは優しく私に尋ねる。
    「べつに」
     私は鈴太さんの前では未だに緊張する。本当は、お父さんと呼びたい。でも、理科のテストみたいには、うまくできない。

     クリスマスの朝、枕元にプレゼントが置いてあった。
     顕微鏡だ。どうして私がこれを欲しいと分かったのだろう。
     私は外箱を抱きしめる。
     机の引き出しから、サンタ酸の小瓶を取り出す。
     まだ母と鈴太さんは寝室で眠っている。
     私は寝室の前で小瓶の蓋を開けた。雪のような香りがする。
     小瓶を傾け、私はサンタ酸を飲み干した。

    「おはよう、お母さん、お父さん」
     ドアを開けて、声をかける。
     母と鈴太さんは、顔を見合わせる。
    「おはよう」と母と鈴太さんは泣きそうな顔をしている。
     サンタ酸は、雪みたいに緊張を溶かしてくれる。



    初めて参加させていただきました。
    田原にかさん、いつもお疲れさまです!

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