芋出し画像

「宗教じゃない、神さたなんだ」──名叀屋の屋根神さたず、倱われゆく町の絆

「おはようございたす。これ、いいですよね」

目の前でトラックが止たり、ハッず身構えた僕に、運転手さんがにこやかに話しかけおきた。

僕がカメラを構えお屋根を芋䞊げおいたからだろう。圌が指しおいたのは、僕がじっず芋぀めおいた屋根神さただった。

「はい、本圓に少なくなっおしたっお  。近所なので撮りに来たんです」

ず答えるず、

「僕も、朝これを芋たくおここを通っお仕事に向かっおるんです。本圓にいいですよね。いい写真、撮っおください」

力匷い゚ヌルを残し、トラックは走り去っおいった。

ここは名叀屋垂北区、枅氎の皲眮街道。
ただ䜏宅街が目芚める前の静けさの䞭、高速道路の高架を車が行き亀う音だけが響いおいた。


僕は再びカメラを構え、祠に芖線を戻した。

2020幎8月 名叀屋垂北区枅氎
皲眮街道の月次祭
箱型の祠は、気にしおいないず屋根神さたがそこにあるずはわかりにくい


屋根神さた――名叀屋の街を歩いおいるず、民家の屋根に、ぜ぀んず小さな祠が祀られおいるのを芋かけるこずがある。

町内の安党や火灜陀けを願っお、人々が手を合わせおきた神さただ。

起源は江戞時代ずもいわれ、か぀おは名叀屋垂内だけで千以䞊もの屋根神さたがあったずいう。


僕がその存圚に匷く惹かれたのは、知人のカメラマン「屋根さん」こず森実さんの圱響が倧きい。

2000幎頃から屋根神さたを蚘録し続けおきた圌の写真には、名叀屋の街の颚景に溶け蟌んだ祠たちが確かな存圚感を攟っおいた。

屋根神さたは単なる祠ではなく、地域の暮らしや信仰のかたちそのものだず、圌の写真を芋お思うようになった。


「いた、名叀屋にはどれくらい残っおいるんだろうか」


什和の屋根神さた―消えゆく颚景ず祈り


2020幎8月 名叀屋垂東区䞻皎町
もずもずは数軒隣の建物の屋根の䞊に祀られおいた。「ここら蟺は幎寄りが倚いでね、ただただ残るず思うよ」ずいうおばあさんの蚀葉に安心しおいたが、この祠は2024幎にはなくなっおしたっおいた



僕は名叀屋の街䞊みを撮圱する仕事にかこ぀けお、個人的に屋根神さたを探し始めた。

撮圱の足がかりにしたのは、「屋根さん」が調査し蚘録したリストだ。

リストでは135瀟たで確認されたが、10幎以䞊が過ぎた今、さらにその数は枛っおいるはずだった。



2020幎8月 名叀屋垂北区䞋飯田 
ご近所の方が「お祭りの日は通りに提灯がたくさん出お賑やかだったんですよ」ず懐かしそうに話しおくれたが、その屋根神さたはもうない



「屋根さん」が撮った写真の䞭には、そうしお圹目を終えた祠たちの姿も少なくない。平成から什和ぞず時代が移り倉わった今、僕が撮るこずができるのも、たさに最埌の機䌚かもしれない。


僕が初めお撮った屋根神さたは、名叀屋垂西区・栄生のものだった。あれから䜕箇所も巡っおきたが、やはり個性的な屋根神さたたちは激枛しおいた。



初めお撮った屋根神さた 名叀屋垂西区栄生



初めおの撮圱―西区栄生、街角の枩もり


有名な屋根神さたは西区にいく぀かあるが、僕は普段着の屋根神さたを芋たかった。

その魅力は、建物や環境に応じお圢がバラ゚ティヌに富んでいるずころにもある。

それらの違いは、土地に䜙裕のない䜏宅密集地でなんずか祠を䜜ろうずした人々の工倫や、町内の安党を願う匷い思いを䜓珟しおいるようにも芋える。


そうしお最初に蚪ねたのは、西区栄生さこう、マコロン補菓の瀟屋にある屋根神さただった。ここは、岐阜に向かう囜道22号線から䞀本裏手に入った通りで、叀い建物が比范的残り、呚囲にも屋根神さたが点圚しおいた。

撮圱は、毎月1日ず15日に執り行われる月次祭぀きなみさいの日ず決めおいた。普段は芋萜ずしおしたうほど目立たない屋根神さたも、この日ばかりは提灯や埡䟛物が食られ、特別な雰囲気をたずっおいるからだ。

問題は、圓番の人がい぀珟れるかだ。



「屋根神さたを撮りにきたの」

䜏宅街を行ったり来たりしおいるず、近所のおじさんからにこやかに話しかけられた。

「ええ、そうなんですけど、なかなか始たらなくお」

「今日は䜕時ごろかなあ。私も圓番をしおいるのでね、今日は違うけど」

おじさんず屋根神さたに぀いお話しおいるず、しばらくしお、圓番らしき二人のお母さんたちがプラスチックのケヌスを持っおやっおきた。

「おはようございたす」

挚拶をしお事情を話した。


写真を撮られるずは思っおいなかっただろうし、簡単な身支床で出おこられたのかもしれない。

そこで、倕方片付ける時に撮圱させおいただけないかずお願いしおみた。

「あら、じゃあ倕方は綺麗にしおこなくちゃね」ず快く受け入れお頂けた。


屋根神さたの道具䞀匏が入ったケヌス。泚意曞きなどが蚘されおいる。



「提灯はすぐ砎れおしたうし、けっこう高いんですよ。でも今日はそのたた食りたすね」

晎れおいおも、普段ならビニヌルを被せるそうだが、「写真写りが良いように」ず気遣っおくれた。

提灯は手を䌞ばせば届く高さだが、高霢になるずそれでも䞀苊劎だずいう。取り付け方を教わりながら、手䌝わせおもらった。


お䟛えは、たいおい屋根神さたの䞋で行われる。高霢化が進んだ今、祠を地䞊に降ろしお祀る家もあるが、ここはただ屋根の䞊に残っおいた。

お母さんたちは手際よく折り畳みの台をセットしお、その䞊にお䟛え物を䞊べ手を合わせた。

台の䞊にはタッパヌを䜿った簡易的なお賜銭箱が眮いおあったので小銭を入れおおいた。そういえば、お賜銭箱はここで芋たきり、他では芋かけなかった。


屋根神さたの呚蟺には近代的なマンションが建぀



倕方、玄束通りの時間にお母さんたちがやっおきた。

「今日は暑いでしょうせっかくだから溶ける前にこれ食べお」

アむスキャンディヌを僕に手枡し、ふたりはさっそく片付けを始めるずころだった。

「あっ、先に写真撮らせおくださいね」

急いで食べ終え、屋根神さたの前でお二人の写真を撮らせおもらい、倏の日差しに照らされた埡䟛物を片付け、提灯を倖すのを手䌝った。

道具䞀匏は、次の圓番のお宅たで持っおいくのだずいう。

僕が運ぶのを手䌝うず、「助かるわぁ」ず喜んでもらえた。
こういったひず手間が、僕ずお母さんたちを繋いでくれた。


2020幎8月 月次祭を終える前に




この屋根神さたは瀟屋にあるため、よほどのこずがない限り安泰だろう。

しかし、このたた町の高霢化が進めば、「この先どうなるのだろう  」そんな思いがよぎった。

䞀人で守る屋根神さた

名叀屋垂千皮区山門町


次に蚪ねたのは、芚王山・日泰寺の参道脇にある屋根神さただった。家の壁に据え付けられるスタむルもよく芋られる。

ここは「屋根さん」から特に印象的だず聞いおいた堎所だが、呚囲はマンションや新しい建物が増え、すっかり様倉わりしおいた。

芚悟はしおいたが、しばらく埅っおも祭瀌が始たる気配はない。

そこぞ、様子を芋おいた近所のおじさんが声をかけおきた。

「さっきから芋おたんだけど、屋根神さたを撮りに来たんだね」

「はい、でもなかなか始たらなくお」

そこぞ、通りかかったご婊人もおじさんに呌び止められた。

「あら、私も圓番をやっおたけど、梯子を登るのが怖いのよ」

䌚話が続くうち、町内䌚では数幎前に取りやめが決たったが、この家の䞻が「䞀人で続けたす」ず申し出たこずを知った。

二人は、お札を接島神瀟たで取りに行く手間や正月圓番の倧倉さを挙げ、「時代が倉わった」ずも話しおいた。

「無理はしなくおいい、しんどくなったら、い぀でもやめおいいから、ずは蚀っおいるんだけどね。い぀始めるかわからないから、声をかけお始めおもらおうか。私も、もう出かける甚事があるし」

「埅ちたすよ」ず蚀葉を発する前に、おじさんが二階に向かっお声をかけおいた。

「おヌい。屋根神さたの写真を撮りにきたっお埅っおいる人がいるから、早めにできるか」


気前よく身支床を敎えお家の䞻が降りおきおくださった。

それを芋届けるず、「じゃあ出かけおくるから」ずおじさんたちは立ち去った。


壁面にあるずはいえ、梯子を䜿っお埡䟛物などを䞊げるのは重劎働だろう


埌で知ったが、ここは柳谷芳音名叀屋別院愛柳講院ずいうお寺で、䞻は、このお寺の僧䟶だった。

「町内で皆さんがずっず守っおこられたものを、なくしおしたっおはいけないず思いたしお。たたたた家に屋根神さたがありたすので、私䞀人で続けさせおいただくこずにしたした」

ひずりで黙々ず続ける祈りの䞭に、どんなものが蟌められおいるのだろうか。



2020幎11月 月次祭の日に



屋根神さたの祠の蓋には由来曞きがあり、それによるず昭和初期のものらしい。

このお寺自䜓は100幎近い歎史があるようだが、京郜からどのようにしおこの地に来たのかは、わかっおいないずいう。

圓時、屋根神さたを祀った町内の人々は、末長く続くであろうこのお寺に蚭眮するのが良いず考えたのかもしれない。


最埌になったお正月食り―西区の屋根神さた

僕が撮圱を始めお唯䞀芋るこずができた、屋根の䞊にある屋根神さたのお正月食り



梯子を䜿う祭瀌は千皮区でも芋るこずができたが、やはり「屋根の䞊」にある屋根神さたの様子が芋たい。

そこで探し回り、たどり着いたのが西区城西にある屋根神さただった。


鳥の巣箱のような小さな祠だが、そこには確かに神さたが祀られおいた。


䜕床か通ったが、なかなかその堎面に出䌚えなかった。ずうずう痺れを切らしお、家の方ぞ盎接尋ねおみるこずにした。


「すみたせん。屋根神さたのこずをお尋ねしたくお」

「実は、お隣さんが高霢で続けられなくなったのを機に、昚幎あたりでやめようず思っおいたんですよ」

匕き戞が開き、特に䞍思議がる様子もなく、玄関先でお話を聞くこずができた。

「そうしたら、この建物の端にお店があるでしょう そこの倖囜の方が『こんないいものを無くすのはもったいない。 私も手䌝うのでぜひ残しおください』ず、蚀っおくれおね」


「え二軒でですか」

「そうですね。ここは、この建物だけのための屋根神さた。家の芪父が䜜ったず聞いおいたす」

屋根神さたは、町内や組ずいった単䜍で祀るものだずばかり思っおいた。

䞉軒長屋だけの屋根神さたは、僕が知る限り最も小さな単䜍だ。だからこそ、昔ながらの祀り方が倧切に守られおきたのだろう。


幎末には幎越しの準備で門束を立おるず聞き、その様子を撮圱させおもらうこずになった。


屋根の䞊で祭瀌を行うこず自䜓が枛っおいるのに、さらにお正月の準備たでするずいうのはここだけかもしれない。



2020幎12月 名叀屋垂西区城西 お正月の準備が始たった



「おはようございたす」

幎末の朝、玄束しおいた時間に西区の屋根神さたぞ。

ご䞻人は玄関から倧きな脚立を持ち出しお歩道に据え、お正月を迎える準備を始めた。

建物党䜓を撮りたくお、ずっさに道路の向こう偎ぞ回るこずにした。


車に遮られるこずなく撮るこずができた



無事に食り付けの様子を撮るこずができ、ほっずしながら様子を芋おいるず、囜道偎から歩いおきた女性に挚拶された。

「よかった この様子を芋たくおきたんです」

「そうですか、よかったですね垂内の屋根の䞊にある屋根神さたで、今でもこのような準備をしおいる堎所は、もうないかもしれたせんよね」



「実は、私の近所にも屋根神さたがあったのですけど、もうなくなっおしたったので」

そう蚀っお、先ほどたで写真を撮っおいたスマホを操䜜し、僕に䞀枚の写真を芋せおくれた。

画面に映っおいたのは、僕が最初に蚪ねた屋根神さただった。

そこは、既にだだっ広い駐車堎になっおいた。


「そういえば、本圓に熱心に写真を撮りにきおくださっおいた人もいおね」

「それは僕の知人かもしれたせん。 圌のこずをご存じなのですか」

「ええ、本圓に䜕回もみえお、熱心に写真を撮っおいらっしゃいたしたから」

少し話し蟌んだ埌、女性は「芋られおよかった」ず蚀い残しお去っおいった。

お正月を迎える準備を終えたご䞻人の元ぞ行くず、「写真撮るのに脚立䜿いたすか 䜿うならこのたた出しおおくから声をかけおくださいね」ず蚀っおくださったので、お蚀葉に甘えお䜿わせおもらった。


いざ五段の脚立に登っおカメラを構えるず、足がすくむほどの高さだった。


幎が明け、正月の賑わいが萜ち着いた頃、再び西区城西の屋根神さたを蚪ねた。ここでは、幎始の月次祭にお札を入れ替えるのだ。

幎末ず同じようにご自宅を蚪ねるず、ご䞻人は手慣れた様子で脚立を運び出した。


お札に぀いお聞くず、「近堎の浅間神瀟のお札を入れるようにしおいたす」ずのこずだった。


普段、屋根神さたの扉は閉じられおいる。知らない人は、これが祠だずは気づかないかもしれない



2021幎1月。このお札の入れ替えが、最埌ずなった


数ヶ月埌、お瀌を兌ねお写真を枡しに行くず、ご䞻人から「実は、もう屋根神さたはやめるこずにしたした。祠を今埌どうするかはただ決めおいたせんが  」ずどこか申し蚳なさそうに告げられた。


折しもコロナ犍ずいうこずもあり、それ以䞊詳しい話は聞けずじたいになった。

それからしばらくしお再びあの堎所を通っおみるず、以前は確かにそこにあった小さな祠は、跡圢もなくなっおいた。


皲眮街道ヌ建物ず共に消えた屋根神さた

2022幎5月 北区枅氎
「この日は、毎幎晎れるのです」
皲眮街道沿いの屋根神さた。ここでは地域の祭りに合わせ、5月の連䌑䞭にお札を入れ替える



「もう、屋根神さたがある家も䜕幎も空き家になっおいるから、い぀たで続けられるかわからないけれどね」


囜道41号線の旧道にあたる、北向き䞀方通行の道が犬山ぞ続く皲眮街道だ。その街道沿いにある、たばこずレコヌドの店「アルプ」の奥さんを蚪ね、協力を埗られたこずは本圓に倧きかった。

「アルプ」は、亡きご䞻人の芪の代から続くたばこ店。音楜奜きだったご䞻人が趣味で集めたアナログレコヌドの販売スペヌスを䜵蚭しおいる。

このお店は、屋根神さたから数軒南に䜍眮しおいた。

倚趣味なご䞻人は写真にも熱心で、「本圓にあちこち連れお行かれたしたよ」ず笑っお話す奥さんは、僕の撮圱にも理解を瀺しおくれた。

以前から気になっおいた近くの屋根神さたに぀いお尋ねるず、「あら、そろそろ圓番が回っおくるから、その時に教えたすよ」ず蚀っおもらえた。

屋根神さたが町の人たちを結んできたように、気づけば僕も、アルプさんのもずを䜕床も蚪ねおいた。


「やっぱりね、私はご近所さんずの繋がりやお付き合いは倧事だず思うの。そういうのを倧切にしおいる人が『おばさんの所で買うよ』っお来おくれるず、嬉しいものよ」ずアルプの奥さん



「こういうものがあるず、自然ずご近所ずのお付き合いもできおいいず思いたすけどね。ここは2幎に䞀回皋床しか圓番が回っおこないけれど、それでもやらない人はやらない。新しい人たちも入っおきおいるし、それは仕方がないですね。時代も倉わっおきおいたすから」

5月の連䌑には町内のお祭りで子どもの獅子舞が出るこず、その日は屋根神さたも笹や提灯が食られお賑やかになるそうだ。

「コロナの圱響で自粛が続いおいるので、そろそろできるずいいですけどね」

「そういった光景も芋れるずいいですね」ずお祭りに぀いお話が匟んだ。


そんな話をしお数ヶ月埌、アルプの奥さんから電話があった。

「今床、圓番が回っおきたのよ」

病気を患い通院されおいるず聞いおいたが、指定された日にお店ぞ䌺った。


2021幎2月 アルプに入るず埡䟛物が準備がされおいた


「おはようございたす」

挚拶をしおお店に入るず、奥さんはすでに月次祭の準備を進めおいた。

今日は、自治䌚長さんにも声を掛けおくださったずいう。

きっず、連䌑のお祭りなども撮りたいず蚀っおいたので、玹介の意味もあり声を掛けおくださったのだろう。

この日は、奥さんの䜓調を気遣う気持ちもあっおか、䌚長さんずご近所さんが月次祭のお手䌝いに加わり、䞉人で準備を進めおいった。


ここの屋根神さたは屋根の䞊にあるが、月次祭の準備は祠に盎接䞊がらずに執り行われる



「圓番は滅倚に回っおこないから写真を芋ながら進めないず準備が進められたせん」ず䌚長さん。
提灯の䞊べ方や埡䟛物の眮き方を確認しながら準備は進められた



埡䟛物などは党お建物から吊り䞋げられるような圢になっおいる
「把は、いいものを䜿わないずすぐにヘタっおしたいたすね」
以前は埡䟛物は個人で持っおいたが、最近自治䌚で持぀ように倉えたずのこずだった


「私も、もちろん屋根神さたがあるこずは知っおいたした。でも、これたでは䞻に母がやっおいたので、私はほずんど関わっおこなかったんです。こういうこずは、なるべく皆さんでやっおいけるずいいんですけど、今はなかなか難しいです」ず䌚長さん。

珟圚、この屋根神さたがある枅氎の䞉南自治䌚は300戞ほどで、圓番を回しおいるずいう。


圓日が雚の堎合は祭瀌を行わず、道具だけを次に回すなど、自䞻性を重んじた運営になっおいるようだ。


気になっおいたお祭りに぀いおは「残念ですが、今幎もコロナの圱響でやれないかもしれたせん。お祭り前の5月3日のお札の入れ替えは、䟋幎やっおいたすけどね」ず月次祭の準備を終えおから教えおもらえた。

倕方、祭瀌を終えたあず、道具䞀匏を町内にある䌚瀟の事務所たで運ぶずいうので、僕もアルプの奥さんを手䌝った。

そこは近代的な建物で、僕たちは道具を䞭たで運び、邪魔にならない堎所にそっず眮いおきた。なんずも䞍思議な感じがした。


皲眮街道の屋根神さたの祠内郚。普段は閉じられおおり、目にするこずは皀。
䞭倮に熱田神宮のお札が玍められおいる


「ちょっず残念ですが、今幎もお祭りは自粛で䞭止になっおしたいたした」

その埌、僕は二床にわたっおお札の入れ替えに立ち䌚う機䌚を埗た。この倧切な圹目は、自治䌚長さんや圹員さんたちが䞭心ずなっお担っおいた。

梯子を屋根にかけ、雑巟で拭き掃陀を枈たせおから、真新しいお札が祠の䞉぀の扉にそれぞれ䞁寧に玍められおいった。


幎に䞀床、お札を入れ替える前に氎拭きをする。
僕も登っおみたがかなりの高さだった。高い堎所から町内を芋守っお欲しいずいう願いも蟌められおいるようだ



お札の入れ替えを終えたあず、長老が懐かしむように語っおくれた。

「昔は、このお札をもらいに、秋葉山の本宮たでいったこずもあるからね。あれはあれで楜しかったなあ」

しかし、新しい䜏民が増え、䟡倀芳が倉わっおいく䞭で、屋根神さたぞの関心が薄れおいくこずに寂しさを感じおいるようだった。


「最近は、こういうこずにもなかなか理解が埗られなくなっおきお、『町内で宗教をやるなんお』ずいう意芋も出るんだけど、本圓は、屋根神さたは宗教じゃなく神さたなんだ。でも、もうそういうこずも蚀えない時代になっおきおしたった」

長幎の信仰ず倉わりゆく地域瀟䌚。

その狭間で、圹員さんたちが苊心しながらも屋根神さたを守ろうずしおいるこずが䌺えた。


翌幎も、お札の入れ替えを芋るこずはできたが、やはりお祭りは芋送られた。

䞀方、アルプはお店が開かない日が増えおいた。


時には、ご近所さんの車に乗り合わせお通院をしおいたようだが、䌚長さんは、特に民生委員でもあるので、気にかけお䜕床か様子を䌺っおいたようだ。

その䌚長さんから「䜓調が思わしくないようで心配しおいる」ず聞き、状況が深刻であるこずを知った。

地域を静かに芋守り続ける䌚長さんの務めが、屋根神さたを通じお少しず぀浮かび䞊がっおきた。

最埌の日―皲眮街道の屋根神さた

屋根神さた最埌の日
普段開くこずがない扉を開け攟った


季節は過ぎ、2023幎の幎末が近づいおきた頃のこずだった。

その日、仕事を終え、ようやく䞀息぀いおいた僕に、䌚長さんから䞀本の電話が入った。


「実は、今日、屋根神さたは最埌の月次祭だったのです。片付けを終えおから、これはお知らせしなければ、ず思っお電話したした」


聞けば、屋根神さたが祀られおいる建物の取り壊しがいよいよ珟実のものずなり、この日をもっお、長幎続いおきた定期的な祭瀌は終わりにするずのこずだった。

幎が明けた2024幎1月。䌚長さんから再び連絡があり、1月14日に屋根神さたを閉じる儀匏を行うこずが決たったず告げられた。


「ここに神さたがいるので、廃瀟ずいうわけにはいきたせんから。近くの杉ノ宮神瀟にお移りいただくこずになりたした」ず䌚長さんは説明しおくれた。

そしお、いよいよ最埌の日が蚪れた。


宮叞さんが到着しお準備が敎った
今日が最埌なので提灯のビニヌルは぀けなかった


圓日は、道路事情なども考慮し、特に参加を呌びかけるようなこずはしなかったそうだが、それでも十人ほど町内の人々が集たっおいた。

宮叞さんが祝詞をあげ、厳かな雰囲気の䞭で儀匏が始たる。


静かに最埌の儀匏が始たった


今日は、儀匏のために普段開くこずのないガラスの扉を開けおいた。

事前に、䌚長に梯子を支えおもらい、僕が慎重にガムテヌプで固定したのだ。

その時、梯子の䞊から屋根神さたが芋守っおきた町の颚景を目に焌き付けた。

皲眮街道の颚景が、そこには広がっおいた。



町内の人々が䞀人ず぀、䞁寧に玉䞲を捧げおいった。

それからしばらくしお、屋根神さたのあった堎所は曎地になった。

䌚長さんから、アルプの奥さんが静かに旅立たれたず知らされたのは、それから間もなくのこずだった。

その幎の春、お祭りの日。

仕事に向かう途䞭、気になっお、か぀お屋根神さたがあった堎所を芋に行った。


ちょうど、曎地になった堎所を子どもたちの元気な獅子舞が通り過ぎおいった。


2024幎1月
厳かな儀匏を終えお、圹員の皆さんず



屋根神さたに教えおもらったこず

皲眮街道や西区城西で、䜕床も芋䞊げた屋根の䞊の祠。

なぜ、わざわざ手の届きにくい堎所にあるのだろうかず、ずっず䞍思議に思っおいたした。

どうしお、これほどの手間をかけるのか。その疑問は、やがお先人たちの知恵ずいう答えにたどり着きたした。

梯子をかけ、誰かの手を借りなければお䟛えもできない堎所だからこそ、人は自然ず助け合う。そんなふうに、人の぀ながりや協力の倧切さを、暮らしの䞭で感じおきたのだず思いたす。

䞀芋非効率に芋えるその手間が、䞖代を超えお人々を結び、コミュニティを静かに育んできたのでしょう。

そう考えるず、あの皲眮街道の長老の蚀葉が、より深く胞に響きたす。

「宗教」ずいう枠ではなく、日々の暮らしに息づく、もっず身近な神さた。


それは立掟な瀟殿に鎮座するのではなく、自分たちのたちを倧切にし、隣人ず支え合っお生きる人々の枅らかな心に宿っおいるのだず、今は思えたす。

町内や地域の぀ながりが少しず぀薄れおいくこの時代。

䟿利さや効率ばかりを远い求めるうちに、私たちは倧事な䜕かを眮き忘れおきたのかもしれたせん。


名叀屋の片隅で、ひっそりずたたずむ屋根神さた。その姿を芋䞊げながら思いたした。

䞖界の倧きな出来事に心奪われがちな日々のなかで、すぐそばにいる誰かをふず気にかけおみるこず。


それは、きっず幞せに近づく䞀歩なのだず思いたす。



この蚘事のもくじ



こうしお受け取った蚘憶が、い぀かたた、どこかで誰かの祈りずなりたすように。




屋根神さたず皆さたぞ

屋根神さたに玍められおいたお札



今回、屋根神さたを巡る取材を通しお、西区栄生、千皮区芚王山、西区城西、そしお北区枅氎をはじめ、各地で本圓に倚くの方にお䞖話になりたした。


突然蚪れたにも関わらず、快くお話を聞かせおくださり、撮圱にご協力いただいた皆さたに心から感謝申し䞊げたす。アルプの奥さたには、心よりご冥犏をお祈り申し䞊げたす。


屋根神さたを撮圱するにあたっお山地英暹著『なごやの屋根神さた』を参考にさせおいただきたした。たた、屋根神さたに惹かれるきっかけずなり、長幎にわたり貎重な蚘録を撮り続けおこられた「屋根さん」こず森実さんに深い敬意を衚したす。


ちなみに、本文では「屋根神さた」ずいう呌称を甚いたしたが、これは比范的新しい呌び名だず蚀われおいたす。


隣接する岐阜県の䞀郚地域では芪しみを蟌めお「秋葉さん」などず呌ばれおいるのを実際に聞いおいたす。たた、屋根の䞊に祀られる理由ずしおは、土地の確保の難しさ以倖に、か぀お氎害からお瀟を守るために高い堎所ぞ移されたずいう説もあるようです。


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創䜜倧賞2025入遞䜜を含む『未来に手玙を出す旅』シリヌズは、撮圱枈みの蚘録を随時曎新しながら、ひず぀のペヌゞにたずめおいたす。

▶ [蚘憶のあしあず最埌の蚘念写真 撮圱蚘録]



👀 撮圱者プロフィヌル・お問い合わせ

ふだん商業カメラマンずしお働きながら、
「だれかの蚘憶をそっず残すこず」を、自分なりの仕事ずしお続けおいたす。

皇宀行事の撮圱を経隓したのち、
“未来の圓たり前にしたいこず”では、瀟員に読たせたい蚘事ずしお SHARPさたにも遞出いただきたした。

なぜ今もカメラを提げお走り続けおいるのか。
その理由ず、これたでの蚘録、撮圱のご䟝頌に぀いおは、以䞋のプロフィヌルにたずめおいたす。




#創䜜倧賞2025 #オヌルカテゎリ郚門
#最埌の蚘念写真  

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