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#135 「いつか」を「いつ」にする

    「いつか、加賀屋に泊まりたい」

    ずっとそう思っていた人が、いま、その建物を自分の手で解体している。

    和倉温泉の散髪屋さんで、そんな切ないお話を聞きました。

    予定になかった、和倉温泉

    能登出張 2 日目の木曜日。穴水駅で華子さんとお別れした後、のと鉄道に 30 分ほど揺られ、和倉温泉駅で下車しました。

    当初の予定では、金沢市内のビジネスホテルに泊まる予定でした。値段は安いし、翌日の観光にも便利です。

    それを直前で変更したのは、せっかく穴水まで足を延ばすなら、この機会にしか行けない場所へ行きたかったから。また、微力ながら、2 年前の震災被害を受けた地域に貢献したいという気持ちもありました。

    和倉温泉で営業を再開できている旅館は、まだ半分ほど。私が泊まった宿も、一部設備は復旧しておらず、震災復興関係者専用の宿泊プランが用意されているなど、震災の影響を感じさせる状態でした。

    夕食なしのプランだったので、チェックイン後、晩ご飯のお店を探しながら温泉街を散策することにしました(知らない街を歩くのは、私の趣味です)。

    そんな私の目に、あのおなじみの回転ポールが飛び込んできたのです。

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    正式名称は「サインポール」と言うそうです

    実は、能登へ出発する前日に髪を切る予定が、ちょっとしたトラブルで流れていました。この日の昼も、七尾駅での乗換待ちの時間に 3 軒ほど回ったものの、どこも混んでいて断念した経緯があります。

    そんな状態だったため、ふらっと入ってみることにしました。

    お話好きの店主さん

    建物は真新しいプレハブの仮設店舗で、Google マップにも情報は載っていません。60 代くらいの女性の店主さんが、ひとりで切り盛りされていました。

    時刻は 18 時の少し前。「まだ大丈夫ですか?」と聞くと、「営業時間はゆるくやってるから、全然いいよ〜」と通していただきました。

    いつも私が利用している格安カットとは違い、1 時間以上かけて丁寧にカットとシャンプー、顔剃りまでしてもらうその間、ずっと会話が続いていました。

    話題は震災当時のことや、現在の復興の状況、地元のサッカーチームを観に行ったときの話など、多岐にわたります。

    その中で私が最も印象に残ったのが、加賀屋の話でした。

    加賀屋の「いま」

    私は知らなかったのですが、現在の加賀屋の建物(本館)は修復不可能と判断され、今年の 4 月から解体作業が始まっています。

    解体には 5 年ほどかかる見通しで、同時並行で新しい建物を建設し、2027 年度末の営業再開を目指している状況です。

    以下に関連動画を載せます⬇️

    この解体作業に携わる人もときどき髪を切りに来る中で、そのうちのお一人がこんなことを話していたそうです。

    ずっと、「一生に一度でいいから加賀屋に泊まりたい」と思っていた。それなのに、まさか自分が加賀屋の建物を壊す仕事で来ることになるとは……

    値段的にも安くはないので、「いつか」と先延ばししていたことを、激しく後悔されていたと言います。

    解体にあたっては、吹き抜けのロビーや客室、立派な内装を実際に目にすることになるはずです。憧れの旅館を自分の手で壊すのは一体どんなに切ないか、言葉では表しきれないと想像します。

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    加賀屋の内観写真(楽天トラベル HP より)

    私と加賀屋

    実は私にとっても、加賀屋は「いつか泊まってみたい旅館」でした。

    きっかけは、前職時代に副社長が勧めていた『加賀屋の流儀』という本を読んだことです。

    「日本一のおもてなし」の哲学を学べる良書で、私なりに一言で要約すると、「結局マインドがすべて」ということになります。

    お客様を心から大切に思うマインドがあれば、従業員個々人が自発的に考える。お客様の状態に気づく観察力も磨かれる他、細かいスキル等も勝手に習得していきます。

    加賀屋の従業員は、とにかくマインドを徹底的に鍛えているという話が印象的でした。

    この本を読んだことで、私にも「いつかは加賀屋」という思いがありました。ただの旅行としてではなく、サービス業のプロから学ぶという意味も含まれます。

    しかし、解体作業員の方と同じく、これまでの加賀屋の建物(本館)に泊まることは、もうできません。「"いつか" は来ない」というその現実を突きつけられた気分でした。

    思い出す一句

    少し話は変わりますが、「いつかは来ない」と聞くと、私は思い出す俳句があります。

    テレビ番組『プレバト!!』で「紙袋」がお題だったとき、梅沢 富美男さんが詠んだ次の句です。

    桐の花 いつかは来ない 紙袋

    プレバト!!で芸能人が詠んだ俳句を徹底紹介するブログより

    紙袋は「いつか使うだろう」と思って取っておく物の代表格です。実際には、使うペースより増えるペースのほうが速いので、どんどん溜まっていきます(わが家のあるあるです)。

    一方で、植物の桐は成長が早く、切ってもどんどん伸びる。その桐と重ねて、紙袋が増えていく様を詠んだ句です。

    もう 6 年前の放送のようですが、他の句はほとんど覚えていない中、この句だけは印象に残っています。

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    桐の花(ChatGPT で生成)

    おわりに

    今回は幸い、加賀屋そのものが無くなるわけではありません。『加賀屋の流儀』を読むと、本当に一流の方々なので、きっと見事に復活すると信じています。

    だから、営業を再開したら必ず行きます。「いつか」ではなく「いつ」を決めるために、このあと妻と話すつもりです。


    最後にひとつ、質問です。

    皆さんには、「いつかしよう」と思ったまま置いてある予定はありますか?

    やりたいこと、行きたい場所、会いたい人、伝えたい言葉。

    よかったら、そのうち一つだけ、具体的に「いつ、やるか」を決めてみてください。

    5年後や10年後の後悔を、ひとつ減らしてくれるかもしれません。




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    ▼ 浩平のプロフィール
    ・コーチ 4年目(2026年8月現在)
    ・京都大学工学部 / 同大学院 → 技術職 9年 → 教育ベンチャー 3年 → 独立
    ・座右の書:Atomic Habits
    ・好きな習慣:早起き / 読書 / 内省 / 筋トレ

    「理系院卒 → 大手終身雇用」というレールを離れ、ライフコーチとして独立しました。「良い習慣づくり」をテーマに発信しています。

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    「時間がかかるものほど、いい」 このマインドを持てた人から、三日坊主を卒業できます。累計 1,800 回超のコーチング伴走で見えた「続く人の共通点」を、Podcast で毎日発信中。 コーチ4年目|3児の父|朝活|TOEIC 965|座右の書は『Atomic Habits』

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