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【noteでBL企画】秋の味覚、まだ出てるけど?

    なみ様の#noteでBL 企画に再び参加です。
     今回の企画の詳細記事はこちら↓ 

     今回のお題は
    「秋の味覚」「本当にあった怖い話」「パンツはき忘れた」

     出演者は「凪いだ世界のシグナル」から。
     要はいつもの二人です。

    まぁ、とりあえず本編行きましょうか。


    【秋の味覚、まだ出てるけど?】

     引っ越しの荷ほどきも、ようやく終わりが見えてきた。
     シグは湯船の縁に腕をかけ、ぐでっとした体勢のまま長く息を吐く。
    「……んー、今日も疲れた……引っ越しって、なんでこんなに体力吸われんだか……」
     浴室の窓の向こうで、風が唸っている。金属の何かが、どこかでカランと鳴った。
     風が強い夜は、音の距離感が狂う。
    「……風、強いな。ここの風呂場、音響くんだな……」
     ふと肌を撫でた冷気に、シグはわずかに眉を寄せた。
     湯の温度は変わっていない。体の芯も温まっているはずだ。
     それでも、なぜか首筋にひやりとした気配が残る。
    「……さっさと、身体洗って出るか……」
     ぼそりと呟き、湯船から立ち上がった瞬間。

     ――とぷん。

     湯の中で、大きな水音がした。何か、拳ほどの大きさのものが落ちたような音。
     反射的に振り返る。
     波紋がゆらいでいた。けれど、誰もいない。
     ――そう思った矢先だった。
     湯船の奥、湯船の端に寄せた巻き取り式の風呂蓋の下から、何かが――ずる、と現れる。
     黒く濡れた長い髪。青白い肌。
     そして、その“顔”が、虚ろな目を真っすぐシグに向けていた。
    「うわあああああああああああ!!!!!!」
     シグは、滑りそうになりながら脱衣所へ逃れる。
     棚からバスタオルを一枚取り出すと、それを肩にかけ、風呂場を後にした。
     揺れる水面には、何かが居た気配だけが漂っていた。

    ⋄✦✧◇◆◇✧✦⋄

    「ただいまー……って、電気も点けてないのか。シグ?」
     買い物袋を手に、玄関の戸を開けたナギは怪訝そうな顔のまま、リビングへと進む。
     暗いままのリビングに入ると、シグがソファの背後からひょこっと顔を出した。
     肩にはバスタオルをかけてるところを見ると風呂上がりのようだが、その顔は蒼白で、とてもではないがリラックスタイムを過ごしたようには見えなかった。
    「ナギ……風呂場……女がいた……」
     シグの言葉が、ナギの思考を止めた。
    「……は?」
    「いやほんとマジで!! 湯船から! 覗いてきて!! 目が合ったんだって!!」
     買い物袋をローテーブルに乗せ、ナギは小さく息を吐く。だいたいの状況は理解できた。 
    「……とりあえず確認するよ。君はそのまま、何も触らず待ってて」
     首にぶら下げていたマナレンズを装着し、ナギは風呂場へと足を運ぶ。
     脱衣所と風呂場を仕切るすりガラスが、視えない向こう側との曖昧な境界線の様に思えた。
     ナギは戸を開け、風呂場へ足を踏み入れる。
     先程まで使用されていたわりに、空気は妙にぬるかった。
     普段は心地いい風呂場特有の湿気も、今は不快感の方が強い。
     鏡と湯船を見渡しながら、ナギは指先で宙を探った。
    「……なるほど。結界の層、ちょっと歪んでるな。これは……」
     宙を探っていた指を一度唇にあて、そのまま流れる様に印を結ぶ。
    「死を封じる――Mun・Yrムン・ユル !」
     ナギの指先が青白い光を帯び、結んだ印が宙に浮かぶ。
    「よし、接続じゃなく“接触”に切り替わってるね。――さて、そのままログアウトしてもらおうか。――場を、整える……Zan・Beorcザン ・ベオーク!」
     宙に浮かぶ印が青白く燃え、風呂場の空間にノイズが走るようにひずみが生じる。
     空気が一瞬冷たくなり、そしてすっと、霧が晴れるように澄んでいった。
    「――はい、おしまい」
     ナギは小気味いい音で手を叩く。
     そのまま踵を返し、リビングへ戻るとまだ青い顔をしているシグに、笑いかけた。
    「シグお待たせ、もう大丈夫だよ。――“裏層断層りそうだんそう ”、いわゆる霊道って言われてるやつだったよ。この部屋自体が事故物件ってわけじゃないけど、たまたま“あっち”の通り道と重なった瞬間だったみたい」
    「……何だよそれ……普通にやべーやつじゃん……」
     眉間に皺を寄せるシグの隣に座ると、ナギは淡々と話し始めた。
    「たまにあるよ。水場はマナの揺らぎが出やすいから、こういう反響が出やすい。でも意外だな……結構、典型的な幽霊ダメなんだね、シグ」
    「いや、普通に不気味だろ。誰だってビビるわ!」
    「怪異なんて、S.E.R.T.サート時代に散々と対峙してきたんじゃないの?」
    「戦うのと全裸で目が合うのは別問題だろ!! それにS.E.R.T.は魔物専門。幽霊は専門外だ」
     シグの言葉にナギは視線を宙にそらし、考える。
    「たしかに、そうか」
     いつも通りの、落ち着いた様子を崩さないナギに、シグの緊張も解れていく。
    「まぁ……一件落着ってことで、飯にしようぜ。夕飯、何買ってきたんだ?」
    「サンマだよ」
     テーブルに置かれた買い物袋を、シグは手に取り立ち上がった。
    「お、秋の味覚じゃん。早く焼こうぜ」
     嬉しそうに振り返るシグに苦笑いを返し、ナギは視線を落とす。
    「いいけど……その格好で言われてもなぁ」
    「は?」
     不思議そうな表情を浮かべるシグに、ナギは涼しい顔で答えた。
    「……君の秋の味覚、まだ出てるけど?  ……ねぇ、それ、“食べてほしい”ってこと?」
     風呂場から逃げる様にして出てきたシグの着衣は、肩にタオル一枚。
     つまり肩以外は“出ている”状態だった。
    「ちげええええええええええ!!!!!」
     肩に掛けていたタオルを全力で前に回す。
     ナギがくすりと笑い、シグから買い物袋を受け取った。
    「ほら、履き忘れたパンツ履いて、ちゃんと服も着てきて。お風呂場は、もう大丈夫だから」
     ナギは立ち去るシグの後ろ姿を可笑しそうに微笑んで見送り、キッチンへ姿をけした。

    ⋄✦✧◇◆◇✧✦⋄

     キッチンから食欲をそそる香ばしい香りが漂ってくる。
     シグはテレビのチャンネルを適当に切り替えながら、鼻をくすぐる香りに意識を持っていかれていた。
     何か手伝いでもしようかと、腰を上げたタイミングで、ナギがリビングに戻ってくる。手に持つ皿の上には、こんがり焼けたサンマと、大根おろしが乗せられていた。
     ナギはサンマを置き、脇に抱えていたウーロン茶のペットボトルもテーブルに置く。
    「はい、お待たせ。あとはご飯と味噌汁だけだから座ってて」
    「ありがとう」
     そう言ってキッチンへ戻るナギを見送り、シグは二人分のウーロン茶をコップに注ぐ。
     間もなくして戻ってきたナギが向かい側に座ると、二人は挨拶をしてサンマに箸を入れた。
    「美味い……やっぱりこの時期はサンマだよ」
    「そうだね。サンマを食べないと、なんか始まらないよね」
    「わかる。にしても、皮もパリパリだし。ナギ、魚焼くの上手いな」
    「別に、ただグリルに突っ込んだだけだよ」
    「いや、俺が焼くと焼きすぎたりとかさ……つい時間すぎちまうんだよ」
    「ねぇシグ……うちのグリル、タイマーついてるよ」
    「……マジ?」
    「うん」
    「……今度、確認する」
     先程の恐怖など忘れたかのように、他愛のない会話が、心地よい空間を作っていた。
     それでも、ふとシグはウンザリした表情を浮かべ、溜め息をつく。
    「ってか……ろくに身体洗えてないんだよな。けど、さすがに今日は、もう風呂入るの嫌だし……」
    「気持ちはわかるけど、言ってしまえば、逆に今日の方が確実に安全だよ?」
    「は? なんで?」
    「封印したばっかりだから」
    「……えーと、それはつまり、時間が経つとまた起きる可能性があるって事か?」
    「うーん、まぁそういう事になるかな。裏層断層が生じる場所って、別名、霊道って言われるくらいだから、要は道があるんだよ。怪異が生活している、裏層に。道って人通りが多いでしょ? 結界の綻びが生じやすいんだよね。大きな道になればなるほどさ」
    「あーなるほど」
     シグは味噌汁に口をつけながら、ナギにチラリと視線を送る。
    「ちなみに風呂場にある道ってのは……大きそうなのか?」
    「ちゃんと調べてないから確実な事は言えないけど……うーん、ちょっと大きいかも。近くに神社があるでしょ? ちょうど直線状がうちのお風呂場だから条件は揃っちゃってるんだよね」
    「そうか……」
     シグは大きなため息をつく。
    「結局、これから毎日風呂が怖えって事じゃん……」
    「だから、暫くは大丈夫だよ。僕がいるんだし、何かあればすぐ対処するから」
    「まぁ、そうだろうけど」
     ナギの慰めにも、いまいち釈然としない様子のシグに、ナギはいたずらっぽい笑み向ける。
    「じゃあ、一緒に入る?」
     ナギの言葉に、シグは目を丸める。
    「……それ、お前、マジのやつ? 冗談? どっち?」
    「さあ?」
     そう答えたナギは、涼しい顔で味噌汁を啜っていた。


    「秋の味覚、まだ出てるけど?」完 


     という事で、キノコの話でした。
     ……ではなくて、実はこれ、序盤のホラーパートは私の実体験だったりします。
     と言っても生首は見てませんが。
     その手の事に巻き込まれても、目視しちゃうことは滅多にないので。

     前に住んでいた家が、どうもいわゆる霊道が通ってしまっていて、怪現象がちょこちょこ起きる家でした。
     弟の部屋でゲーム中のボイチャ中に変な声が入ったり、2Fなのに窓の外側に手形がついてたり。
     特に弟はこの家との相性が、悪い意味でよかったみたいで、他にも結構はっきりした被害にあってますw

     で、私の被害と言えば件の風呂事件です。
     普通に湯船に入ってて、でもその日は妙に意味もなく怖い感じがして。
     さっさと身体洗って出ようと思って、湯船から上がり、風呂場の椅子に座ってしばらくしてから。

     ――とぷん。

     まさにこの、妙にぬめっとした、ちょっと大きなものが静かに水に沈んだって感じの音が聞こえてきました。
     即座に思いましたね「これヤバいやつだ」って。

     さすがにシグみたいにバスタオル一枚で出る事はしませんでしたが、急いで体を洗って、何食わぬ顔で風呂をでました。
     ここで「いやー怖かったぜ~」って心の中で思うだけで終わるはずだったんですよ。
     でもね、その後に続いて風呂に入った母が出てきた時こういったんです。

    「ねぇ、今日お風呂変だったんじゃない?」

    ~「本当にあった怖い話」完~

     
     
     
    読みは「コハナマナ」、略してハナマナ。 BL小説を中心に、時々エッセイや創作語りなども書いています。 ゲーム・絵・音楽・文章など、好きな表現で日々遊ぶ。 自分の思考整理のための文章も多いですが、どこかで誰かの気持ちにちょっと引っかかれば嬉しいなと思っています。

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