
どこへ行こうか?④
今日も僕は旅を続ける。
大いなる目的地に向かって。
今日も走ってる!
走ってる!
そうすると、道の脇にヒッチハイクをしている女の人を見つけた。
なんだか乗せないと申し訳ない気がして、乗せたんだよね。
そしたら、びっくり!
人の愚痴ばっかり!!
乗せてもらったのに?!
彼女が流したのは、シューベルトの『魔王』。
もう聞いていられなかった。
彼女は「あの人が悪い、この人が悪い、私は何も悪くないのよ」と、僕にキーキー声で語った。
僕はなんだか苦しくなってしまって、「ごめんちょっと体調悪くなったから降りてもらえる?」とパーキングエリアで降ろした。
彼女は「もっと愚痴を聞いて欲しかった」と言いながら降りて行った。
次は、とても大きな男の人。
とっても派手な格好をしていて、すごいなあと思って乗せたんだよね。
彼が流したのは、ロックの激しい曲。
そしたら夢を語ってくれた。
「この世の中を、自分の歌で変えたいんだ。
この流している歌みたいな偉大な曲を作って、僕も一流スターになりたいんだ。」
すごくワクワクした。ずっと話を聞いていたかったけれど…
でも、自分の目的地があるんだって……
もっと話を聞いていたかったけど、彼はピューっと行ってしまった。
次は、四十代ぐらいの会社員のおじさん。
彼が流した曲は、フォークソング。
そしたら、この世の中がどんなに辛くて苦しくて、うまくいかないかを教えてくれた。
そして「昔は良かったなあ、もっと楽しかったなあ」って、昔の話ばかりしていた。
僕は話を聞いていると、なんだか居た堪れなくなって、この世の中に希望もないみたいに、暗い気持ちになった。
彼はやっぱり仕事があるからと、帰ることにしたんだって。
スタスタと肩を落としながら仕事場へと逆方向へ向かっていった。
次にヒッチハイクできたのは、僕と同じぐらいの年の女の子。
もう4人も載せてたからぼくはへとへとだった。
乗せようかどうか迷った。
だけどね一目見た瞬間にね。
僕はこの人しかいないって、なんだか感じたんだよね。
乗せるしかないって。
そしたら近くで見たらその女性は
とっても綺麗で、見惚れちゃった。
ぼくは彼女と話がしたいなと思って乗せた。
だけどそんなことも忘れてしまうぐらいに、彼女はとっても話が面白い。
「あの海は綺麗だった。
あの場所は、とても素敵な人が住んでる」
いろんなことを知っていたし、いろんな人と会ってきたんだって。
この世界をたくさん旅してきたんだ。
僕はこの人の話を聞いていると、なんて素敵で、心が落ち着くんだろうと思った。
そして不思議なことに、僕が目指している目的地と、彼女の目的地が一緒だった!!
彼女がかけてくれたのは、昭和の名曲。
当時一世を風靡した、女の子のアイドルの曲を、楽しそうに歌ってくれた。
僕はまた、その子の歌声に感動して、うっとりした。
そしたら彼女が「一緒に歌おう」と言ってくれたんだ。
だから僕もルンルン気分で、彼女と一緒に歌いながら、泣いた。
なんの涙かは僕もわからなかったけれど、
すごくうれしかったし、心が震えたんだ。
今日も目的地に進むよ。
次はどこへ行こうかな?
―大人のための絵本『どこへ行こうか?』シリーズ―