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地元の味がバズった嬉しさと、我が家の水っぽい鶏肉の悲劇

見慣れたSNSのタイムラインに流れてきたのは、あのバズレシピでおなじみのリュウジさんの投稿。
何気なく目に飛び込んできたテキストを読んで、思わず「おっ!」と声が出そうになった。

なんと、我が香川県が誇るソウルフード「骨付鳥」を絶賛してくれているのだ。

「本場で食べたものが衝撃的に旨かった」
「香川のご当地グルメがヤバすぎる」

そんな言葉とともに、自宅のキッチンで鶏もも肉を使って再現するレシピ動画が添えられていた。

正直、めちゃくちゃ嬉しい。

香川といえば全国的にはどうしても「讃岐うどん」のイメージが圧倒的だ。
もちろんうどんは日常であり、誇るべきソウルフードには違いない。
地元の人間くらいだろうと思ってはいたが、骨付鳥にも強い愛着がある。
あの大胆にニンニクとスパイスが効いた鶏肉に豪快にかぶりつき、溢れ出るスパイシーな脂にキャベツや白飯をどっぷり浸して食らうあの快感。
一度知ったら抜け出せない、中毒性のかたまりみたいなグルメなのだ。
県外の有名人が地元のご当地グルメを好きになってくれて、しかもそれを「ヤバい」「1位かも」なんて熱量で紹介してくれると、なんだか自分のことみたいに誇らしくなってしまう。
画面の向こうでリュウジさんが「おにぎりを脂につけて食うとヤバい」と目を輝かせているのを見て、一人でニヤニヤが止まらなかった。

しかも今回の動画、骨付きのレッグ肉ではなく、どこのスーパーでも手に入る普通の「鶏もも肉」で再現してくれているのが本当にありがたい。
本場の骨付鳥はあのゴツい骨があるからこそ雰囲気が出るけれど、家で一から焼くとなると火の通りが難しかったり、そもそも骨付き肉自体が近所のスーパーに売っていなかったりする。
それを普段使いの鶏もも肉で、しかもフライパンひとつで完全再現しようというのだから、料理好き・骨付鳥好きとしては見逃せるはずがない。

「よーし、今夜はこれで決まりだ!」

動画をしっかりチェックし、胸を躍らせながらスーパーへ走り、鶏もも肉とたっぷりのスパイスを買ってきた。
頭の中ではすでに、パリッと香ばしく焼き上がったお肉と、脂を吸わせたおにぎりを頬張る自分の姿が完璧にイメージできていた。

……できていたはずだった。

いざキッチンに立ち、意気揚々とフライパンで肉を焼き始めたのだが、出来上がったものは私の妄想とは遠くかけ離れた「何か」だった。
まず、皮がパリッとしていない。
それどころか、焼いている最中にお肉からジワジワと大量の水分と脂が染み出してきて、フライパンの中がまるで「鶏肉の薄切り煮込み」みたいな状態になってしまったのだ。
肉はぐんぐん縮んでいき、最初の半分くらいの小さくて分厚い塊に。
お皿に盛ってみても、あの本場のような香ばしい焦げ目はなく、全体的にしっとり、というか、水っぽい。
食べてみると味自体はスパイスが効いていて悪くないのだが、食感が全然違う。
私が求めていたのは、歯を立てた瞬間に「パリッ!」と音が鳴り、そこからジューシーな肉汁が溢れ出すあの骨付鳥のダイナミズムなのだ。
目の前にあるのは、なんだか小さく縮こまった、スパイス風味の蒸し鶏。

やはり、パリっと感がもう少し欲しい


「なんで……? 動画の通りに作ったつもりなのに……」

敗北感に打ちひしがれながら、しなっとしたお肉を噛みしめた。
やっぱりプロの技は違うのか、それともうちのフライパンが悪いのか。一人虚しくおにぎりを残った汁につけて食べたけれど、不完全燃焼感は否めなかった。

しかし、ここで諦めるわけにはいかない。
地元のソウルフードを愛する者として、そしてこんなに魅力的な再現レシピを出してもらったファンとして、このまま引き下がるのはあまりにも悔しい。

落ち着いて自分の手順を振り返り、動画のコツをもう一度丁寧におさらいしてみることにした。
すると、自分の大雑把な性格ゆえに見落としていた「落とし穴」がいくつも浮かび上がってきたのだ。

まず第一に、私は冷蔵庫から出してすぐ冷え切ったお肉をそのままフライパンに放り込んでいた。
肉が冷たいとフライパンの温度が一気に下がり、中に火が通る前に水分ばかりが逃げ出してしまうらしい。お肉は焼く前にちゃんと常温に戻しておかなければならなかったのだ。

第二に、表面の水分(ドリップ)の拭き取りが甘かった。
ペーパーでかるーく撫でた程度で「まあいっか」と焼いてしまったため、その水分がフライパンの中で蒸気となり、自ら「蒸し焼き」状態を作り出していたのだ。
皮をパリッとさせるためには、しつこいくらいにペーパーで水分を抑え込む必要があった。

そして第三に、厚みの調整と切り込み。鶏
もも肉の分厚い部分をしっかり開いて平らにし、筋を切っておく作業を横着したせいで、熱が入った瞬間に肉の繊維が縮み、あの小さくて分厚い塊に変身してしまったらしい。
お肉を押さえつけながら皮目をフライパンにしっかり密着させる工夫も足りていなかった。

要するに、私は「焼き始める前の一手間」をことごとくスルーしていたのだ。
「スパイスを擦り込んで焼くだけでしょ」と高をくくっていた自分が恥ずかしい。
骨付鳥のあのカリッとした食感は、丁寧な下準備という魔法のうえに成り立っていたのだ。

理由が分かれば、あとはリベンジあるのみ。

ちょうどこの休み、まとまった時間が取れる。
これは神様が「もう一度ちゃんと作ってみなさい」と言ってくれているに違いない。
次の休みには、今度こそ完璧な「骨無し骨付鳥」を作り上げるつもりだ。
スーパーで一番立派な鶏もも肉を選び、焼く前にはしっかり常温に戻す。
キッチンペーパーでこれでもかというくらい丁寧に水分を拭き取り、包丁でしっかりと開いて平らにする。スパイスも、ニンニクも、これでもかと強気にすり込むのだ。
フライパンから「パチパチ」と香ばしい音が聞こえ、皮目が黄金色に染まる瞬間を今から想像している。
サイドには、もちろん握りたての塩おにぎりをセットで用意するつもりだ。お皿の底に溜まったスパイシーな鶏油に、おにぎりをどっぷりと浸して豪快に口へ運ぶ——あの至福の瞬間を、今度こそ自分の手で再現してみせる。

地元の味が全国に広がる嬉しさと、料理の奥深さを噛みしめながら。
私の骨付鳥リベンジマッチは、この休みに開幕する。

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