その土地、本当に安全かのう?――あほう老士、造成地にて首をかしげる
わしは、あほう老士である。
普段は呆けた顔をしておるが、
土地を見るときだけは、少しだけ目が鋭くなる。
不思議なものじゃ。
人は、土地を見るとき――
・駅から何分か
・日当たりはどうか
・値段はいくらか
そのあたりばかりを気にする。
まあ、それも悪くはない。
じゃがのう。
それだけで土地を買うのは、
少々“ 勇気がありすぎ ” じゃ。
むしろ、無謀と言ってもよいかも知れぬ。
ある日、若い夫婦に聞かれたことがある。
「この土地、良いですよね?」
見れば、たしかに整った宅地じゃ。
道も広い。日当たりも悪くない。
じゃが、わしはこう聞き返した。
「ここは、もともと平らだったかのう?」
二人は、きょとんとしておった。
無理もない。
“今、平らかどうか”は見ても、
“昔、どうだったか”を見る人は少ない。
■ その土地、誰が平らにしたのか
世の中には、
もともと平らな土地と、
無理やり平らにした土地がある。
後者を、造成地という。
・山を削った「切土」
・谷を埋めた「盛土」
見た目は同じじゃ。
じゃがのう――
中身は、まるで別物じゃ。
■ 盛土は、静かに裏切る
盛土というのは、
人が積み上げた地盤じゃ。
人がやることに、完璧はない。
・締め固めが甘い
・水が入り込む
・時間とともに沈む
そして地震が来たとき、
盛土だけが、すっと動くことがある。
家は無事でも、地面が逃げる。
これほど性の悪い話もない。
■ 擁壁という名の“無言の圧力”
造成地には、だいたい擁壁がある。
立派に見えるコンクリートの壁じゃ。
じゃが、これもまた曲者でのう。
・いつ作られたのか分からぬ
・計算されておらぬ
・ひびが入っておる
そんな擁壁も、世の中には普通にある。
そして困るのは、
壊れるときは、前触れなく来ることじゃ。
しかもじゃ――
建て替えのときに
「この擁壁、安全と証明できますか?」
と聞かれて、
誰も答えられぬことがある。
その時どうなるか。
金が飛ぶ。
なかなか景気よく飛ぶ。
■ 水は、正直者じゃ
水というのは、嘘をつかん。
必ず、低い方へ行く。
造成地では、
・上から水が流れ込み
・擁壁の裏に溜まり
・地面をじわじわ湿らせる
見えぬところで、
じっくりと土地を弱らせる。
水は静かじゃが、遠慮はせん。
■ あほう老士の見方
わしは土地を見るとき、
上からは見ん。
横から見る。
頭の中で、地面を切る。
・どこが削られたか
・どこが盛られたか
・力はどこに逃げるか
それを想像する。
するとじゃ――
土地の“本性”が見えてくる。
■ 誰でもできること
難しいことは言わん。
これだけ見ればよい。
・段差はないか
・擁壁はあるか
コンクリートか石積みかブロック積みかも重要じゃ。
・ひびはないか
・水は抜けておるか
そして、最後に一つ。
「ここは昔、何だった?」
これを調べるだけで、
半分は見抜ける。
谷だったか、尾根だったか。
谷なら、疑ってかかれ。
池だったら、少し覚悟しろ。
■ わしの家の話
ちなみにわしの家は、切土じゃ。
等高線を見ると、尾根に近かった。
おかげで、
杭も打たず、地盤改良もせずに済んだ。
重たい鉄筋コンクリート造なのじゃがな。
財布には優しかったが、
これはたまたま運が良かっただけじゃ。
誰にでも当てはまる話ではない。
■ まとめじゃが、
土地というのはのう、
「今」ではなく「過去」で決まる。
きれいに整った土地ほど、
疑ってかかった方がよい。
造成地が悪いわけではない。
じゃが――
知らずに買うのは、あほうのすることじゃ。
(わしが言うのも、なんじゃがな)
次に土地を見に行くときは、
こうつぶやいてみるとよい。
「ここは、もともと何者じゃ?」
その一言で、
見える世界が少し変わる。
家づくりも、少しだけ賢くなる。
……さて。
それでも買うかどうかは、
あなた次第じゃ。
わしは止めん。
ただ、黙って
首をかしげるのかも--知れぬのう。
!!!!!!!!!!!!!
同じ内容を専門記事として こちら で解説しています。
理解が深まりますよ。
※ あほう老士 は こちら にも出没中です。
=============
ここまでお読みいただき有難うございました。
共感いただける方が多いと嬉しい限りです。
よろしければ フォロー や ♡ を押しておいていただけると励みになります。
また次回もお付き合いください。
※趣味で以下も配信しています
▶ RC住宅を推奨しているのは
こちらのYouTubeチャンネル
▶ 建築施工管理技士を目指す方は
こちらのYouTube こちらのnote
▶ 土木施工管理技士を目指す方は
こちらのYouTube こちらのnote
▶ SFショートやエッセイを発信しているのは
こちらのnote
▶拙著(紙媒体)を紹介しているのは
こちらの出版社
▶電子書籍は
・工務店が語らない13の裏事情
・RC住宅に至る21のエピソード
・木造と同等価格のRC住宅
・家選びに必須の13の検討課題
