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Photo byyukiko160830

真昼の月

    「やっと気づいてくれた?」


    いたずらっぽい声がする。


    お昼を食べに行く道すがら、もう6歳になる娘がずっしりと背中に重い。


    「もう、最後まで気づいてくれないんじゃないかってハラハラしたよ。あんなにわかりやすいヒントをたくさん出しているのに」


    口調とは裏腹に声は優しい。


    「うん。鈍いんだよね。昔から。ぼーっとしてるし」


    見上げると太陽と月が一緒に出ている。


    もう、この何日も太陽と月が昼間の世界に共存しているみたいだ。


    「応援してるって知らせたかったんだ」


    まさか、そんなパワーないでしょ?


    「ふふふ」


    また楽しそうな笑い声がする。


    あれ?Nちゃん?いつの間に仲良くなったの?


    「知らなかったの?みんなこっちでは仲良しだよ。お母さんも一緒」


    「私のことも書いて欲しかったな」


    Nちゃんが少し口を尖らせたようにいう。でも声は笑っている。


    「うん、途中まで描きかけたんだけど、次の絵本に書こうかなって思ってやめた。もう、ストーリーは決まってるんだ。実話は二度と書かないよ。辛いから」


    「うん。どんな風に書いてくれるのか、楽しみにしてる」


    「蝶のお話にするんだ。タイトルとストーリーが決まったから、絵の練習しないとね」


    昔読んだ、森絵都さんの「カラフル」に出てくるお母さんばりに、私は何かに夢中になって、それで、ものにならないとわかると、すぐ諦めて放り出す癖があった。


    「わかったでしょ?時間がいくらあっても足りないって。途中で投げ出したもの、全部やっていくんだよ」


    またいたずらっぽい声がする。Nちゃんだ。


    「いい?合言葉は逆。私は蝶。一人じゃないよ。いつも一緒にいるからね」


    目の前を蝶がヒラヒラと飛んでいく。


    見上げると、月が静かにひっそりと真昼の空に浮かんでいる。


    やっぱりこうなるように進めてきたんだね。


    過去と向き合う旅は終わろうとしている。


    そして、また新しい旅が始まろうとしている。



     
     
     
    【49歳会社員】会社員として働きながら、マインドフルネス講座にも関わっています。 人生を「静かな航海」のように感じながら、日々の気づきを記録しています。 マインドフルネスもその航海の道具の一つですが、それがすべてではありません。

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