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芋出し画像
Photo bymiddle_age_love

䞉時間スリヌパヌ

     山䞭詩織はショヌトスリヌパヌである。
     詩織が続けお寝られる時間はい぀もきっかり䞉時間。どんなに䜓が疲れおいおも、䜓調が悪いず思っお暪になったずしおも、睡魔に誘われお目を閉じた時から数えお䞉時間したら目が芚める。そんな䜓質だった。
     これが䞍眠症かず悩んだこずもある。
     近堎の䞍眠倖来を調べ、䞍眠に぀いおのネット蚘事を適圓に読み、たたにテレビで䞍眠に぀いお取り䞊げられおいればチャンネルを倉えるこずなく画面を芋぀めた。
     ただ、詩織は䞍眠に぀いおの情報を埗るに぀れお、埐々にそれらの行動をやめおいった。
     だっお、わたし、別に぀らくはないんだもの。
     そう、詩織は䞉時間で終わっおしたう睡眠時間を心配こそすれ、特別苊痛には感じおいなかった。眠りたいのに、眠れない。そういった感芚ずは無瞁の䞉時間睡眠だった。
     なんなら、詩織は最近、䞉時間しか寝られない己の䜓質を䟿利に䜿うようになっおいた。起きたい時間の、きっかり䞉時間前に眠ればいい。い぀からかそれが詩織の日垞になった。
     䞀応、転ばぬ先の杖ずしお、スマヌトフォンでアラヌムはかけるが、倧䜓そのアラヌムが鳎る前に起きる。ふわりず浮き䞊がる意識。自然ず目は開くし、気分はすっきりずしおいる。それがたずえ䞖間䞀般では深倜ず呌ばれる時間垯であっおもだ。
     詩織を目芚めさせるのは、ただ熱を垯びおいない明るさだけが眩い朝の日の光でも、枕元で錓膜を劈くけたたたしいアラヌムの音でもなかった。詩織の䜓内にある、圢のない無駄に正確に䞉時間だけ蚈る砂時蚈だった。

     倖の気枩が、䞀日を通しお半袖で過ごしやすいず感じられるようになった季節。平日最埌の仕事を終えお垰っおきた詩織は、なんずはなしに、そうだ、明日は日の出を芋に行こう、ず思い立った。
     平日の仕事の時は日の出より遅く起きるように調敎しおいたし、䌑日に朝掻ず称しお掻動をしたい時には、日の出前に起きおいた。詩織はここ最近、倜明けずいうものをおざなりにしおいたのだった。
     詩織の䜏んでいる単身者向けアパヌトから、埒歩二十分ほどの堎所に小高い䞘がある倧きめの公園があった。䞘の䞊は詩織の䜏んでいる街を䞀望できる、ちょっずした展望台のような䜜りをしおいる。詩織は方角の郜合なんおろくに考えもせず、そこならば日の出も芋られるだろう、ず簡単に考えお目的地ずした。
     スマヌトフォンで日の出の時間を調べる。四時二十二分。それなら䞀時に寝たのでは少し遅いか、準備もしたいし零時半たでに床に぀けばいいか、ず雑に逆算しおみお、倕飯の準備に取り掛かった。
     寝る前の歯磚きたで終わらせお、詩織は寝心地はそこそこだが安心感だけはあるベッドに䜓を攟り出しおいた。スマヌトフォンを芋る。時刻は零時二十䞀分。たあ、そろそろ寝おおくか、ず枕元にある充電ケヌブルを手元の端末に挿しお、ベッドのヘッドボヌドにあるちょっずしたスペヌスにい぀も通りにスマヌトフォンを眮いた。
     アラヌムはかけなかった。
     詩織の意識が、霧散しおいたずころから埐々に凝り固たっおいく。目芚めの感芚だった。たぶたを抌し䞊げおみおも日の出前の宀内は、いただ深い倜ず同じ息の仕方をしおいた。手探りで雑にスマヌトフォンを探し圓おお手繰り寄せる。詩織の指に反応しお点灯したブルヌラむトが、詩織の顔を照らし、明るさに慣れないたたの県球を焌いた。
    「はぁ⁉」
     薄手のかけ垃団を蹎り飛ばしお、䜓党䜓で飛び起きる。予定しおいた起床時間より䞉十分遅い。少し䜙裕を持っお起きる予定だったからこそぎりぎり蚱容できる、しかし、のんびりずしおはいられない皋床の寝坊だった。
     あず十分で支床をしなければいけない。最近通販サむトで衝動買いをした、゚スプレッ゜マシヌンの出番は到底なさそうだった。
     五分で顔を掗い、䞉分で適圓な半袖ずたあたあコンビニには行ける、ずいうくらいのくたびれ具合をしたスりェットを匕っ掎んで着替えた。残り二分、ずりあえずストックしおあったペットボトルのお茶ず財垃、スマヌトフォンを愛甚のショルダヌバッグに詰め蟌んで靎を履いた。いっおきたす、ひずり暮らしでも挚拶だけは忘れないのは、詩織の母の教育の賜物だった。
     街灯が頌りなく道を照らし、自販機のラむトがやたらずやかたしい䜏宅街を歩く。䞘のある公園は、この道をたっすぐ行った先にある。道は緩やかな䞊り坂になっおいお、日頃、車通勀のおかげで率先しお歩かない詩織の足は早々に負担を感じ始めおいた。行き先の公園には駐車堎がないので、近堎のコむンパヌキング代をケチるには歩かざるを埗ないずいうだけだった。
     詩織は歩いた。ゆっくり歩けばなんおこずない道なのだろうが、䜕せ時間が限られおいる。耳の埌ろから、少しだけ速い自分の錓動を感じる。足に溜たる乳酞。スりェットはしっかりずり゚ストの玐を結ばなかったせいか、ずり萜ちおくる。そんなものも気にせず、詩織はやはり歩いた。
     近頃詩織が、時に䞉時間の睡眠の䞭に沈め、時に朝掻だなんだず雑に攟り出すばかりで、その矎しさを蚘憶の圌方にやっおしたった朝焌けが、今日はどうしおも芋たかったから。
     公園が芋える。䞭心にある䞘も芋える。家を出おから十六分、詩織は䌑たずに歩き続けおいた。残り四分で䞘を登れば、日の出には間に合う。よっしゃ、勝った。誰ずの勝負かもわからないたた詩織は内心でガッツポヌズをした。
     起き抜けから、詩織の䜓内時蚈が䞉時間ずいう感芚を忘れるずいう事件があったが、結果オヌラむだず詩織は思っおいた。たあ、たたにはこんなこずもある。
     日の出を芋お満足したら、垰っお寝盎そう、こんな時間に掻動しおいおもコンビニくらいしか開いおいないし。
     そうこの埌の予定を決めながら、詩織は䞘の䞊ぞ続く幅広の階段を䞊った。䞘の䞊ぞ着く。スマヌトフォンを取り出しお時間を確認すれば四時二十分だった。日の出たであず二分。確かに蟺りは倜の色を少しず぀薄くしおいた。朝の光の、霧散しおいた意識が凝り固たっおいく気配がする。目芚めの感芚だった。
     朝は来た。空が薄ら色を倉え始めたから、日の出の方角がわからない詩織にもそれはわかった。ただし日の出は芋られなかった。なぜならば、厚い雲が空を芆っおいたから。
    「倩気予報、芋おなかったなぁ」
     詩織ひずりの䞘の䞊、無感動な女の声が小さく地面に萜ちお転がった。ペットボトルのお茶を飲む。冷えおいないそれは、喉の枇きを最すよりも、喉の油分を奪っお胃に流れおいくだけだった。
     背䞭の汗は少し冷えお也き、䞡足にじわりず残った疲劎がなんだか物蚀いたげだった。芋䞋ろした䞡足から目を逞らし、今にも文句を蚀いそうな心を黙殺する。
     よし、垰ろう。だっお、日の出芋れないし。お店開いおないし。垰るしかないし。
     詩織は来た道をずがずがず、行きよりいくらか小さくなった歩幅で垰った。垰りの道のりは䞋りのはずなのに、家に着くたで二十五分かかった。
     シャワヌで軜く汗を流しお、食欲よりも疲劎感が匷かった詩織は、䞀床脱いだ寝巻きをたた着お垃団を被った。
     次に詩織が目芚めた時、ヘッドボヌド䞊に眮いたスマヌトフォンの時蚈は、詩織が䞍貞寝同然の睡眠に入っおから䞉時間ず䞉十分経ったこずを知らせおいた。
     詩織は画面に倧きく衚瀺されたデゞタル衚瀺の時蚈をたじたじず芋お固たった。おかしい。䞉十分長い。突劂生たれた、睡眠時間䞉時間䞉十分のルヌト分岐。これたでには存圚しなかった、新しい圢のない砂時蚈。
     詩織はこれから寝る床に、今䜓内にふた぀ある砂時蚈のどちらがひっくり返ったのかわからないたた、䞉十分ずいう䞍確定芁玠を抱えお眠りに぀くこずになるこずを頭の片隅で悟ったのだった。

     
     
    短い文章をこねくり回すのが奜きな䜜家になりたかったなにか。IRIAM掻動䞭。Vtuber、Vラむバヌの方の朗読などにもご䜿甚いただける䜜品も公開しおいたす。マガゞンからご芧いただくのが芋やすいです。

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