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「古希の独り言」3・墓じまいを引き継ぐ

数年前、コロナが収束に向かい始めた頃のことだ。

私は、生まれ育った土地にあった一族の墓を引き継ぐことになった。
親戚の最後の一人がその土地を離れることになり、いわゆる「墓じまい」をすることになったからである。

札幌の霊園に墓を新たに建立して遺骨を移すことにしたのだ。分骨と言えばいいのだろうか。とにかくそうして生家のあった場所から墓所を変えた。

札幌にはいくつもの霊園がある。ただそこもやはり、残り少ない土地を探すのが難しい市内の住宅事情に似ていた。いくつかの霊園の管理事務所を訪ね歩き、我が家の宗派と会った墓所を見つけることができた。

そこは「茨戸霊園」という。茨戸(ばらと)という名前はついていても実際には、「生振(おやふる)」という石狩市に存在している。ここは大きな霊園でずいぶんと昔から名前を聞いたことのある施設だった。

夫婦で説明を聞きに訪れ、墓石などの選択をして決定した。今まで故郷の墓所にあった墓石には、全く比べることもできないくらい、こじんまりとした土地と、背の低い墓石しか設えることはできなかった。

それでも、その金額は新車を一台買えるだけのものになった。当たり前の相場なのだろうが、年金生活になったばかりの我が家にはそれが限界だった。

出来上がった墓石はやはり……、でも、これが自分たちのできる精一杯が形になったものだ……。

それでも、車で30分ほどで行くことができるようになったので、今までとは違っていろいろな折に合わせて墓参できるようになった。今までは、片道2時間の墓参になっていたのだ。

さて、そうなるとせっかく近くまで来たのだからと、墓参のついでに立ち寄るところが増えてしまった。

石狩市の生振という所からは、いろいろな方面へと足を延ばすことができる。我が家からだと、当別バイパスともいわれる337号線を走るとどこまででも行先は広がる。石狩太美に行くと「ロイズタウン」は目と鼻の先だ。

チョコレート工場を持つロイズタウンはJRの駅も新設され、観光バスが何台もやって来る観光名所になっている。妻は当然、アイスを注文し、入り口近くのバラ園でインスタ映えを狙っている。

その場所からすぐのところには「北欧の風 当別道の駅」がある。

そこは三角屋根の外観が目を引くきれいな建物を自慢にしている。駐車場も十分に広く、今はやりの車中泊の人たちもけっこうな数に上るようだ。

ここは食事できる場所がたくさんあり、中庭で北欧の風に当たりながらちょっとお昼を、なんてのにピッタリの道の駅だ。札幌都心部から一番近い道の駅としても有名だ。

昨年は、こんなふうに墓参りに派生したドライブが多くなってしまった。亡くなった先祖を敬う気持ちが薄れているわけではなく、生きている自分たちの楽しみも大切にしたい、という気持ちを墓参りとともに実行しているのだ。

それは、ご先祖様たちもきっと理解してくれるだろう。

そして、昨年のその派生したドライブの行き先は「バラ園」探しだった。自宅の庭にちょっとだけスペースをとって植えてあるバラの見本を……という言い訳含みでバラを見に行くことが多くなったのだ。

行き先は、先ほどのロイズタウンにあるバラ園。そして同じロイズの愛の里工場にあるバラ園。藻岩山下にある元の地崎バラ園。大通公園のバラ園。そして岩見沢公園のバラ園にも何度も足を運んだ。

ああ、そう言えば最も近いのが「百合が原公園」のバラもある。

百合が原公園は一年を通じて何度も訪れる場所で、春のチューリップや初夏のライラック、盛夏のユリとバラ、秋のダリア……。そんなふうに年中楽しめる公園なのです。

広々として散歩にもピッタリのこの場所は、二人のお気に入りの公園になった。そして、妻は近くの丘珠空港を離着陸する飛行機やヘリコプターが大好きなので、散歩の途中に何度も空を見上げることになる。

墓を引き継ぐという出来事は、少し重たいものだと思っていた。実際になかなか面倒な手続きや、やり取りなどもあった。

けれども今は、それが私たち夫婦の新しい散歩道のようなものになっている。

墓を守るという行為が、いつの間にか「これからの自分たちの時間」を守ることにもつながっていた。

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