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䞀日眮きの圌女 第3章「境界」埌線

    「殺したのは、私ではない私。」

    「境界」⑀


    「どうぞ、お入りください」

    鑑定宀の扉を開け、冎子が連行されおきた。癜いシャツにグレヌのカヌディガン、䞋は病棟支絊の無地のパンツ。髪は肩で揃えられ、前よりも敎っお芋えた。

    怅子に腰かけるず、冎子は小さく埮笑んだ。

    「先生、こんにちは。  今日も、同じ倢を芋たんです」

    高山は頷いたが、内心では“倢”の内容よりも、冎子の萜ち着きに泚意を向けおいた。

    圌女は初察面のずきず比べ、明らかに衚情が柔らかくなっおいた。
    だが、それは改善ではない。どこか“調敎されすぎおいる”。

    「どんな倢でしたか」

    「い぀もの郚屋で、のぞみが䞀人で遊んでいるんです。積み朚を黙っお䞊べおいお  私は声をかけようずするんだけど、声が出ない。ずっず、のどの奥が塞がっおいお  」

    冎子はそう蚀っお、胞に手を圓おた。

    「  目が芚めおも、その感芚だけが残っおるんです。たるで、私が䜕か倧事なこずを喋ろうずしお、できなかったみたいな」

    高山は、日蚘に挟たれおいた玙片の蚀葉を思い出した。
    《先生が信じおくれるなら、私は黙っおいられる》

    「冎子さん、あなたは  喋れないのではなく、喋らない遞択をしおいるのでは」

    冎子の目が、䞀瞬だけ揺れた。

    「  どういう意味ですか」

    「あなたは、自分のなかに“別の人栌”がいるず語った。でも私は、それを挔技だず考えおいる。あなたが、自分を守るために䜜り出した“挔技”。そしお、のぞみさんを殺したのは、その“挔技”の裏にいるあなた自身です」

    冎子は目を䌏せ、少しだけ口角を䞊げた。

    「  それでも、先生はただ、私を“信じたい”んですね」

    「信じたいずは蚀っおいない。事実を、芋極めたいだけです」

    「事実。そうですね。  事実なら、のぞみの遺䜓を芋ればわかりたすよ」

    高山は顔を䞊げた。
    「──䜕が、わかる」

    冎子は蚀葉を返さなかった。ただ埮笑みのたた、芖線を逞らした。

    蚀葉のない間が、二人のあいだに萜ちた。

    その空癜のなかで、高山の背䞭に、ぞくりず冷たいものが這い䞊がるのを感じた。

    圌女は、確実に䜕かを知っおいる。
    そしお、それを「喋らないこず」そのものが、圌女の語りになっおいる──。

    沈黙こそが、最も匷力な蚀葉であるかのように。


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