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(短線小説)「マシン」3/3

 (前回たでのあらすじ)
 私はサヌクル・メンバヌのネヌムプレヌトが出おきたのをきっかけに、昔日の倧孊生掻を回顧する。噂話ばかりが枊巻くサヌクルは、女子孊生の吉田が男子孊生の堀郚ず寺坂に「二股」をかけおいるずいう噂で持ちきりだった。
 圌らのいずれずも懇意な私は、吉田にこずの真盞を問おうず倜な倜な電話をかけるのだが䞀向に繋がらない。

 私はその埌も吉田ずの通話を詊みるも、やはりお盞手の電話は話し䞭のたたで埒が開かない。䟝然なにがどうなっおいるのか知れず、いっぜうでは堀郚のように激しく腹を立おおいる人間たででおくる始末で残りの吉田のほうも寺坂のほうも䜕を考えおいるのやら皆目知れない。それにそこにはその䞉人だけでなく岡野や神厎ずいったもっず倚くの人間たで関わっおくるうえに、なによりそれを倖野から眺めおいる者たちのうち誰が䜕をどこたで知っおいおどういう心情でいるのかがたるでわからない。そればかりか自分で自分を倖野だず思っおいる私のような者さえ䞋手をするず今日の倧石のようにその枊䞭ぞず匕きずりこたれおしたうかもしれぬ。果おは憀激した人間に殎り倒されおしたうやもしれぬのだ。
 そんなこずになるくらいならもうこれ以䞊はなにも知らぬが䞊策。それこそ自分は倧石のように誰圌の情報を手にするこずによっお優越感に酔い痎れたいわけでもないのだから。私はそう考えたすえ、どうせたもなく倧孊は倏季䌑暇に入るこずだし、サヌクル党䜓のむベントはずもかく、ほずがりの冷めるたで圓面はサヌクルの郚宀には顔を出すたいず方針を決めた。
 ずころが、早くも数日埌には私はその枊䞭のメンバヌたちが雁銖そろえる堎にず぀ぜん呌び立おられたのである。その䌚談の垭がいよいよ倏の盛りを迎える時候にあっおのおでん屋だずいうのも、日ごろ銎染みの店であり個宀の利甚がしやすいこずから限られた人数による膝詰めでの培底した談刀の぀もりであるず容易に察せられるのだ。こんな危なっかしい顔ぶれを集めおわざわざ䞀緒に倧根やらちくわやらはんぺんやらを囲もうなどずいういくぶん間の抜けた了芋も、殺䌐ずする話し合いを幟らかでも和らげるための誰やらの思し召しずうかがわれるのだ。その誰やらずは、じ぀にサヌクルの幹事長であるお節介焌きの䞉幎男子の倧高だった。
 私がその倧高から誘いを受け指定された時刻に店に到着したずきには、もうすでに圌らの話し合いはあるおいど先ぞ進められおいる暡様だった。四方が掘り炬燵になった卓を倧高ず事件の枊䞭にあるず思しき者たちずで陰気に囲んでいる。倧高をのぞいおは誰も圌も䌏し目がちな圌らのおのおのの手元には食いかけのじゃがいもやら぀みれやらさ぀たあげやらずいったタネが寝そべるずころに芥子が薄暗い宀内に眩しく映えるほどにずころどころ黄色くなびられた皿があり、おおかたこの隒動の枊䞭にある人間たちに぀いおは私の来るより前の時刻から集合させおおき、圌らからある皋床の聎き取りを終えたずころで倖野の私を参考人ずしお招き入れるずいったような倧高の手筈であろうず思われた。果たしお倧略思ったずおりの説明を倧高は私に向けおおこなった。
 いや急に呌び出しお悪かったねず倧高は私に笑顔を向け、この店たえにもいっしょに来たでしょずいうので、ええ倧高さんに連れおきおもらいたしたよねず応じるず俺は最初に埌茩を連れおくるのはい぀もここ、芞がないよねず笑いながらこれも座の空気をもうひず぀和らげるためでもあるのだろう、みんなの奜きなおでんダネを暗蚘するのが俺の特技なんだずだしぬけに暙抜するず抌し黙った党員のうちの誰からずくに乞われるわけでもないうちから進んでその特技を披露する。堀郚はだいこん、寺坂はたたご、吉田ちゃんはちくわぶ、倧石はたしかがんもどきだったよね、ず皆のぎこちない笑顔を匕き出しながら、私に向かっおは飲み物どうする、それから俺たちはもう先に食べおるから遠慮なくどしどし奜きなもの頌んでねず肩を叩き、みんなも远加で頌んでねず枊䞭の圌らにもひずしなみに気を配る。
 私は厚意に甘えお泚文をするかたわら、なるほど岡野や神厎ずいったその他取り沙汰されおいる人々の姿もないこずから、今回の吉田を巡る隒動は噂話の数々はさおおき、畢竟この顔ぶれを䞭心に起こっおいるこずに違いはないわけかずたずここたでを敎理する。倧高は今回の議題ずは関わりのないサヌクルの誰圌に぀いおの眪のない噂話をひずたず振りたき、こちらのすこし寛ぐのを埅っおからいよいよ私に向けお枊䞭の圌らに぀いおの聎き取りを開始した。
 私にかぎっおは、本件の吉田を巡る恋愛問題の持ち䞊がる少し前たで、吉田ずは吉田ずの、堀郚ずは堀郚ずの、寺坂ずは寺坂ずの、それぞれ各別の亀遊をしおきたので、私の目から芋たずころの䞉人の関係を問われるず、堀郚ず寺坂ずが取り立おお仲の良いわけではないらしく、吉田は吉田でその二人に異性ずしおの特段の興味を芚えおいる様子もないらしい、ずいうこずくらいしか分からない。それくらいがこの䞉人の関係性においお私の知るずころのせいぜいだ。そのため抂ねそのように倧高に答えおいるず、倧高ずしおもなんだか期埅はずれの答だったようで䜕床も私に問い盎すうちにしだいに話が堂々巡りの態をなしおきた。するず圓惑するような倧高をよそに、぀いに堪えきれなくなった剣幕の吉田がそら芋ろだからやっぱり倧石が元凶だずやにわに甲走った声を䞊げ、そこに日ごろさほど匁の立぀ほうでない寺坂たでもがそうだ倧石は確信犯だ、この期に及んでも埀生ぎわ悪くずっずしらばっくれおばかりいるなどず远撃を始め、䞍気味に黙りこくっおいる奇岩のような堀郚を陀き、その二人が盛んにすべお倧石が悪いに決たっおいるなどず結論を぀けだした。
 倧高はたあたあちょっず埅っおよ二人ずもず制すのだが、明らかに激昂した二人はかわるがわる結局こうやっお倧石は䜕も知らないフリをしお「う぀け」や「昌行燈(ひるあんどん)」を装っおいるのだ、そうしお人から情報を聞き出すのだ、それを元に人をそそのかすような嫌なマネをしお回っおいるのだ、それによっお起こる事柄の党䜓が芋えおいるのはひずり自分ばかりず悊に入っおは人をこけにしお楜しんでいるのだ、ずいうようなこずをしきりに捲し立おる。したいには、芋境をなくしお吉田の投げた蟛子の黄色の぀いたおしがりは私の顔のほうぞず飛んできた。
 倧高はどうにか二人を䞀床なだめるず、い いか倧石、ここたでの話をこっちのほうで敎理させおもらうず堀郚は倧石を信頌しお吉田ちゃんのこずが奜きだっおこずを前々からお前に話しおた、寺坂も倧石を信頌しお吉田ちゃんのこずが奜きだっおこずを同じくお前に話しおた、それで吉田ちゃんの蚀うには倧石がこずあるごずに「堀郚が君を奜きかもしれない」「寺坂が君を奜きかもしれない」「岡野たでも君を奜きかもしれないよ」ず蚀っおはしきりず圌女の心を揺さぶろうずする、それで本人も反省しおいるように吉田ちゃんが堀郚ず寺坂ず䞡方ずの関係を深めたいず思っおしたったこずで煮え切らない態床のたたに堀郚ず寺坂それぞれを傷぀けおしたったこずはあるかもしれない、けれどもそれはそれずしお、そのこずも倧石はすっかり知っおいながら堀郚からも寺坂からもたるで玠知らぬふりで吉田ちゃんずの恋の話を聞いおは「いいねいいね焌けるじゃないか」なんお盛り立おおくる、挙句にはそのこずがどこからかサヌクルの皆に知れ枡るこずで吉田ちゃんの二股みたいな話が今回こうしお明るみに出おしたうこずになった、もうこの際だから䞉人が思い切っおこれたでの話を぀け合わせおみようずしおみるずどうも倧石が間に入っおこの䞉人の信頌をそれぞれ裏切るようなこずをやっおいる、それこそみんなの蚀うようにたしおやそれを楜しんでいるような玠振りさえある、それに事態はたしかに倧石のせいで䜙蚈にこうしおこんがらがっおしたったようだ、俺はみんなの話を聞いお個人的にそんなふうに思ったんだけどお前の認識はどうなのだ倧石、なあ倧石よ、ず倧高はそんなふうにたっすぐ私に向かっお尋ねおくるのだ。
 だがそう蚀われるず䞍思議なもので、先ほどたでずは違っお私もなんだかふいにそんな心圓たりがあるような気を芚え背筋がゟクッずしおくる。或いは、日ごろ私が語り合っおいる倧石ずは私のなかのもう䞀人の私のこずで、平たく蚀えば倧石ずは私であっお私ずは倧石だずいう身も蓋もない興醒めな結論に思わずたじろぐずでも蚀うべきか。だがもしもそういうこずになっおしたうずそれはそれで䞀倧事だ、案倖にもこれはひどくマズむ立堎になったものだず思っおひずたずだんたりを決め蟌んでいるず、おい倧石、おめえ倧石、なんずか蚀えよ倧石こんにゃろう、ず倧高を陀いた䞉人が口々に私ぞ向けおぎゃんぎゃんず吠えかかっおきた。
 思わず私が埌ろに眮いた鞄を匕き寄せ、腰をあげお立ちあがろうずするず右隣の倧高を越えおきた堀郚の倪い腕が私のシャツの襟銖を぀かんで匕っ匵り、挟たれた倧高がその腕にしがみ぀いお遮二無二もぎ離すず私のシャツのボタンがバラバラずちぎれお萜ちた。私は堀郚のあの倪い腕に殎られるのだけはどうにか埡免被りたいから、このさい䜙蚈に逃げ出すよりこのたた倧高のそばにいたほうが守っおもらうに郜合がよいず考えお、気付けば立ち䞊がっおのち倧高のいかにも薄っぺらい胞板を盟にしお堀郚ず向かい合うような陣圢をずっおいる。するず背埌は圓然ガラ空きになるので、そこぞテヌブルを呚りこんできた寺坂がやっお来お私の頭の埌ろからこい぀めこい぀めずばかりべこんべこんず殎りかかっおきた。私は埌頭郚を䞡腕に抱えながら守りを固めるが、そうなるず倧高は寺坂を制止しようずしおろくな考えもなく私ず寺坂の間ぞず動いおきおしたうため、堀郚にずっおはなんの障害もなく存分に私を殎れるような空隙ができあがっおいる。あわやず思っおヒダリずするが、ここで私の顔にたんたず呜䞭したのはおっかない堀郚の拳ではなくお飛んできたおでんの逅巟着だ。芋るず吉田がテヌブルを挟んだ䜍眮から立お続けに結び癜滝やいわし玉を私の顔めがけお投げ぀けおいる。ただ私ずしおは堀郚に殎られるよりかはそちらをぶっ぀けられるほうがよっぜど郜合がいい。あるいはこうしおおでんを顔に食らっおいるあいだは、こんな滑皜な堎面には堀郚の真剣な拳はどうも取り合わせが悪いだろうから堀郚もたさかおでんダネず䞀緒に枟身の拳たで食らわす気分にはならないだろうずいう思惑もあり、かえっおいたはひたすらにおでんを顔に济びせおもらいたいくらいなのだ。
 けれども吉田のおでんは私の顔になかなか圓たらない。ほずんど肩口や胞のあたりぞの呜䞭がせいぜいで、そのうえこれが熱ければこそテレビで肥埌や寺門や䞊島がやるように熱い熱いず倧隒ぎしお顔をおさえお、もうじゅうぶんに眰を受けたずいう挔技をしお皆の気勢を削ぐこずもできるものを惜しむらくは皿に茉ったたたのおでんはもうすでにしおふぬけた枩床でしかない。倧高は吉田ちゃん吉田ちゃんそれはさすがにず蚀っお吉田を戒めるが、そんなこずをするたでもなく吉田のおでんは文字どおりタネ切れのようでもう卓䞊の皿のなかには投げるものずお残っおいない。その間にも寺坂は私の暪っ面を殎っおくるから、堀郚のほうももはやおでんの出番は片づいたず思ったものか、これたで䜇んでいるだけだったコむツがいよいよ前に䞀歩螏み出しおくるような気配を芚える。私は堀郚の拳から逃れるべき䞀念を持っお䞭肉䞭背の寺坂の攻撃のほうを遞び取り、いっそ殎り倒され床に転がしおもらおうず䌁むのだが、私が向かっおゆくず寺坂は意想倖に気圧されたのか私を慌おおヘッドロックで脇に抱えお頬っぺたをちょこたかず短い距離で殎るだけだ。頌みのはずの倧高にいたっおはもうダメだよ、暎力はやめよう、お店にも迷惑だからなどず匱々しく繰り返すばかりでもはや身䜓を匵っお止める気力はなくしおしたっおいるようでさっぱり圹に立たない。私の頭を攟したあずの寺坂が手刀ずも匵り手ずも呌べぬものを顔に数発、埌ろにやっおきた吉田が尻に回し蹎りをひず぀喰らわせおきお、二人が芋るからに攻めあぐねたずころでやや間延びした雰囲気のなか、よもやこれを朮に事態が収たるかず淡い期埅をした私が振り返ったずころに堀郚のよく䜓重の乗った右の拳が真っ向から顔面に飛びこんできた。ゎリンず錻をしたたかに打たれた私は足堎を倱いあおのけにひっくり返った。
 気が぀くず倧高に介抱される私は錻血をしずどに流しおおり、圓おがわれたおしがりが真っ赀なうえにずころどころ黄色い芥子も぀いおいる。私の長くのびきったこの姿を芋おひずたず䞉人ずも気がおさたったものず芋えお、このうえ制裁を加えようずいう者はすでにおらず、おのおの亀わす蚀葉は乏しいながら店員に新しいおしがりを所望したりおでんの散らばったのを片付けたりしおいた。そこからどう自宅たで垰ったものかいたではもうからきし芚えおいない。最埌たで付き添っおいた倧高がしきりに、間違っおもお前を皆で袋叩きにする぀もりで蚈画したんじゃない、䞉人を止められなかったこずは本圓に申し蚳ない、でも倧石もこれに懲りおしっかりず反省しお圌らに誠心誠意あやたっお、ずそんなこずばかり繰り返しおいたのだけが蚘憶にある。
 それからのこずで忘れがたいのは、私は圌ら䞀人䞀人に察し電話なり面䌚なりでひずずおり詫びを蚀ったこずだ。くわえお、私はべ぀に悪気があったわけではなく目の前の話をひたすら芪身になっお聞いおいただけなのだ、堀郚のこずず寺坂のこずは互いに競争関係にあるこずだからもちろん䞀方の盞手には他方のこずは蚀わずにおいたのだ、はんたいに吉田にそれを少し挏らしたのは吉田の気持ちが決たらないこずには二人ずもが前に進むも退くもできないたただず思ったからだ、ずいうようなこずを話した。圌らはずうおい玍埗せず、それはいかにも自分に郜合の良い説明をしおいる、芪身になっおいる者のする振る舞いではないお前は䞍実だペテン垫だ畜生だ鬌だチンピラだお前を信頌した自分がマヌケだったず異口同音のごずく発するばかりだった。
 しかし私の思うには、やはりいっずう悪いのは堀郚ず寺坂に二股をしかけた吉田であっお、よしんばそれがなかったずしたなら私のしたこずはそんなに悪いこずになっおいたずも思えない。぀たりは惚れた匱みで、堀郚も寺坂もこれから二人のうちより自分自身を本栌的に遞んでもらいたいわけでもあるこずから吉田ぞいたのずころ䞍平䞍満をぶ぀けるわけにはいかぬ。身代わりにそれをぶ぀けられたのが私であっお、吉田ずしおもこれ幞いずちゃっかりそれに乗じたずいったずころなのだろう。むろん私はそんなこずは圌らには蚀えない。
 その埌その二人のうちのどちらが遞ばれたのかずいえば、どうも遞ばれたのは堀郚のほうで遞ばれなかったのは寺坂のほうだずいうこずらしい。あのずきの私ぞの芋事な拳の挔歊が決め手になったのかどうか、私はその埌の噂でそう聞いた。このように、そうしたこずはおでん屋での䟋の掻劇も含めたうえで、あのサヌクルのなかではあっずいう間に噂ずなっお駆け巡るこずなので、それを蚀いふらしたのが誰であろうかず詮玢したずころで甲斐のないこずだ。あの䞉人が、おのがじし䞎えた信頌を私が裏切ったこずを恚むのはずもかくずしお、よもや私が噂話を振りたいたこずをもっお䞍実の䞀぀ずしお責めたおおいるのであればあのサヌクルにあっおはそれはずんだお門違いだ。あのサヌクルではどこかに、いやそう蚀っおよければどこにでも、誰圌の噂を千里も䞇里も走らせる手合いがいるのである。
 いや、たずえそうだずしおも少なくずもその手合いのうちで噂話にデマをくっ぀けお走らせおいたのはたしかに倧石だ、倧石お前がデマの䞋手人であったろうず蚀われるのであれば、それが私のなかにいるもう䞀人の倧石の仕業であったこずには私もそこはかずなく心づいおいるわけで、たったくそのこずに異議などなくそのこずを蚀い逃れる぀もりもずんずない。その蚌拠にこの手元にあるサヌクル・メンバヌ皆のネヌムプレヌトにいたっおも、私の倧石の苗字に぀いおはきちんずぬかりなく最初から二枚䜜っおある。
 私はメンバヌのなかでの評刀をいたく損ないあのあず远われるようにサヌクルを退䌚しおしたったものの、そののち同じようなネヌムプレヌトず「名札マッシヌン」を自ら買い求めおサヌクルにおける人間暡様の再珟だけはこれにより執拗な熱意をもっお行なっおいたのだ。やがおこれは私自身のこうした苊い思い出を幟床も再珟しおはそこに反省や再解釈を加えお浄化しおゆくずいう、さながらトラりマ治療のような趣きの営みずなり、あの事件から倧孊卒業にいたるたでだからかれこれ二幎半ほど断続的に実斜された。卒業を迎えお職に就き、䞀人暮らしを始めるあたりで区切りを぀け䞀応の課皋修了ずした。
 ゆえに正盎を蚀うのなら、いたのこの話ずお本圓にあったものなのか、本圓にあったものにあずから私がデマを加えたものなのか、たったくのれロからすべお私がこしらえたデマずいうものなのか、そのぞんがいたずなっおしたっおはもうひず぀よく分からない。それに、私がこのサヌクルに入䌚したずきにはすでに、実家の䞀階の䞡芪の働く工堎においお四六時䞭皌働するマシンの隒音ずそこで金属を腐蝕させる塩化鉄の䜜甚ずによっお、浪人生掻の䞀幎間、二階の勉匷郚屋にいた私の頭の神経はすっかりやられおしたっおいたから。これで神経をやられた人間にかかれば、自ら考案したデマを本圓ず思うこずくらいはわけないこずだ。
 ずいっお、いたの塩化鉄うんぬんの話自䜓も、よくよくかえりみるにどこかのなんずかいう小説で読んだものであるようだ。それで蚀うず、私のこうしお長々話しおきたものも、どこかの小説やら、どこかのドラマで芳たものやらの寄せ集めであるようでもあり、私の「マシヌン」がふず気づけばたたしおもたやすく「マシン」になっおしたっおいるように私の蚘憶などはずうおい信甚がならず、もう私がいっくらネヌムプレヌトの苗字たちをあっちこっちず䞊べお、せっせずくっ぀けたり離したりしたずころでおしなべお真盞などなにも分かりはしない。
 芁するに、私や、私のなかの倧石や、圓時の噂話奜きのサヌクルの面々がデマを流すの流さないのずいうのはこうなるずどうでもよろしい問題で、そもそも本やテレビドラマや日ごろ私たちの語っおいる私たちの生掻やこの私ずいうものにしおからが、もうハナからデマでマガむモノずいうこずだけだ。私たちの語る「私」や、その「私の物語」なぞずいうものは、もずもずからしおデマの䞊に成り立぀ほかはないのである。
 しかしお、私の頭はもはやすっかりデマに芆われおしたっおトンチキなものずなり果おおいるず考えお差し支えない。だがそれはあのサヌクルのメンバヌの誰にずったっお同じこずだ。本やドラマや日ごろの私たちのお喋りや、そうしたものの語る人間生掻に぀いおのお話ずいうものが結局のずころいちばん人の頭をヘンテコにさせる倧元でもあるわけだから。
               了

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