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SS【バラとタンポポ】ひと色展

    ikue.m

    なりたくてなれなかったもの。
    ピアニスト、バレリーナ。

    あの子は、ピアノもバレエも習っていた。
    顔立ちもかわいくて、髪なんかフワッとカールしていて。さらには勉強もできたし運動神経もよかった。
    まるでバラみたいなあの子。

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    それに比べて勉強もできず運動もできず、貧乏だからって習い事もさせてもらえない地味な私は、せいぜいタンポポ。放課後の教室でこっそりあの子の椅子に座って、あの子みたいになれないかなぁなんて思ってた。

    でもタンポポはバラにはなれない。

    それでも大人になってからピアノを習った。バレエも習った。
    どちらも難しかったけどすごく楽しかった。ずっと憧れてたから。
    あの子は子どもの頃にこれをやってたんだなぁ。
    きっと忙しくて、私みたいに気楽に漫画なんか見ている暇もなかったかもしれない。
    あの頃はうらやましいだけだったけど、私はなんにもない分、とっても気楽な子ども時代を過ごせていたのだ。

    同窓会であの子の噂を聞いた。
    音大の声楽科に進んで、オペラ歌手になるためにイタリアに行ったんだって。でもまだ芽は出てないみたいね。そんなに甘くないよね。いつもツンとしてたよね。あたし嫌いだったな…。

    そんな声がいやで、私は早めに帰ってきた。

    あの子をうらやましいと思ってた。でも好きだった。
    素敵すぎて友達にはなれなかったけど。
    声をかけられないくらい、きれいなバラだったから。

    …あの子が今も、イタリアで大輪のバラでありますように。
    しあわせでいますように。素敵なオペラ歌手になれますように。

    もしいつか会える時があったら、今度は声をかけてみよう。
    タンポポはバラにはなれないけど、
    タンポポもバラも価値は等しい、って今は知っているから。


    おわり

    (2023/5/21 作)

    イシノアサミさんのひと色展のコラボに参加させていただきました。
    二色めです。ぎりぎりセーフ~。この色が素敵で書きたくて。
    ありがとうございます☆
    オペラ歌手にもピアニストにもバレリーナにも憧れてなれなかったのは実話です(;・∀・)大人になって習ってみたのも…(挫折してますが)


     
     
     

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    ごく短いお話や、詩のようなものを書いています。 お題に沿って書く時、1つの単語から何が生まれてくるのかは自分でもわかりません。 自分で作った宝箱を自分で開けて楽しんでる感じです。 週イチくらいでこつこつ更新中ですので、読んでいただければうれしいです☆

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