
【未発表】久慈須島取材ノート エピローグ
本城の封筒は、所属する編集社の先輩、山田直継宛への手紙だった。
山田さんへ
久慈須島の取材記録を送ります。
山田さんのように社会にインパクトを与える記事を書きたくて、島に来ました。動物虐待反対みたいな薄っぺらい考えで。
でも、この島には、獣も人間もそれぞれを敬いながら、魂というものを大事に天に戻す文化がありました。
それを踏みにじっていたのは、戦争であり、自分のような興味本位の人間だった。
島に来て初めて気づきました。記者として、表面しか見ていなかった。人間の価値観だけで、全てを判断していたということを
この島を壊した責任は、全部自分にあります。
これから色々言われるでしょう。
興味の対象として、いいように語られるとおもいますが、
でも、真実はこの取材ノートに記したとおりです。
まだまだ山田さんには追いつかないけれど、自分の最後の取材ノートを、好きに使ってください。
一つの島と、島が守ってきた尊い魂を、自分が壊しました。
この記事は、僕の贖罪です。
本城駿
また、宿に残された本城のスマホには、送信されなかったDMの下書きが残っていた。
宛先は、@luna_shima_2026だった。
おばあちゃんの島のことを、取材しました。
島には、大切なものが守られていました。
それを壊したのは、自分です。
本当にごめんなさい。
おばあちゃんがどれだけ大事にしていたか、島に来て初めてわかりました。
僕は、愚かな人間です。
マヤちゃんを大事にしてください。
命尽きるまで、愛してください。
この記録は、山田直継記者から提供されたものである。
久慈須島は、現在無人島となっている。
島民は2019年の事件後、全員が島を離れた。
それ以来、戻った者は一人もいない。
2019年のインスタライブの動画は削除されないまま残り、ネット上で拡散され続けた。
再生回数は数百万回を超えた。
「猫に呪われた島」として都市伝説化し、廃墟探訪や心霊目的で島を訪れた者が後を絶たない。
島には今も、赤い紐が吊るされた木が残っているという。
訪れた者が撮影した動画には、森の奥で光る二つの目が映っていたという報告もある。
夜になると、島のどこかから猫の鳴き声が聞こえるという者もいる。
2023年以降、島を訪れた者のうち、7名が行方不明のままとなっている。
島が守ってきたものが何だったのか、知る者はもう誰もいない。
@luna_shima_2026
2019年XX月XX日
昨日、転んで指を切っちゃったんだけど、マヤが血を舐めてくれた🐱
優しい。
#猫 #保護猫 #マヤ
完