
抱っこして
娘が20kgを超えた。
外で抱っこをせがまれても、
疲れている、と断ることが多くなってきた。
成長はありがたいことだが、反比例してこちらも老いるので、その点少し寂しい。
とはいえ、
まだまだ10トン程度なら持てる。
でも、20キロの子どもとなるとなかなか大変、と言う話だ。
なんの話か。
もちろん育児の話だ。
私たちのいる地上0mから遥か上空まで、地球は空気に包まれている。
私たち親子はその底にいる。
彼女の身体には上空の空気の重さが全てかかっている。
それが約10トンだ。
娘にはいつもその力がかかっている。
すべての角度から1平方メートル辺り10トンの力だ。
なぜ娘は潰れないのか。
それは内部からも10トンの力で押し返しているからだ、
と、
よく言う。
ただ、それは人間と空気の間に、皮膚、と言うラインを引いた場合だけの話だ。
そんな線は無い。
原子には輪郭が無い。
H₂OとO₂、
CとCO₂。
娘と空気の違いは、成分の濃淡に過ぎない。
だから10トンの力は、娘の皮膚でとどまらない。
骨にもかかっている。血管にもかかっている。脳にも、内臓にも、細胞一つ一つにも、
あらゆる分子にも。
そして、親にも。
空気自身にも。
世界は10トンで満たされている。
だから潰れない。
私たちは空気の底にいるのか、
それとも、私たちが空気の底なのか。
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10トンで満たされた世界の中を、
水の濃い部分が近づいてくる。
酸素の濃い部分が振動する。
「抱っこして!」