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薄い世界

    キノメノ

    限界点、というものがある。

    最近、エベレストなど雪山登山の動画にはまっている。

    平地の3分の1の酸素環境の中で、時に重大な遭難に見舞われながらも、山頂を目指す。生身の人間の限界点はここだ。

    極限の限界に挑戦する人々の姿は、やはり美しい。


    ところで、エベレストの標高は約8,849mだ。

    そして、地球の直径は約12,742,000mだ。

    キロメートルにすると、それぞれ約8.8km、約12,742km。

    言うまでもなく、エベレストは圧倒的に巨大だ。しかし、地球全体と並べると、急に縮尺がおかしくなる。
    エベレストの高さは、地球直径に対して約0.07%しかないのだ。

    地球を直径1mの球に縮小すると、エベレストは高さ約0.7mm程度になる。砂粒くらいだ。

    つまり、宇宙スケールでは「世界最高峰」ですら、その程度の凹凸になる。

    人間が普通に生活できる範囲を、地表から7km程度とすると、それは地球半径6,400kmに対して約0.1%でしかない。

    想像してほしい。

    八畳の部屋いっぱいに直径4mの地球を描く。人類のほぼ全ては、外周から約4mm程度の線の中に収まる。人も、物も、歴史も。

    想像してほしい。

    30cmのスイカを。これが地球なら、7kmは約0.16mmになる。
    スイカにティッシュをふわりとかける。そのちょうど表面をジャンボジェットが飛んでいる。

    人類の世界は、驚くほど薄い。

    世界地図を見ると、海も大陸も巨大に見える。

    しかし、紙の地図で「地球の厚み」まで表現するなら、それは十数cmの分厚い板になる。
    クレヨンで線を一本引く。
    その顔料の厚みだけで、エベレストの高さは再現できてしまう。

    地球をビー玉サイズに縮めた時、地球は多分あなたが思うよりもつるつるだ。
    逆にビー玉を地球サイズに拡大すると、そこには30000m級の山々が広がっている。

    私たちの「極限」は、地球の輪郭線の中の出来事でしかない。
    この薄い膜のような世界は、温度、酸素、水、気圧など、かなり限られた条件の下で、かろうじて成立している。

    それなのに、人間はその膜の中で、「世界は広い」と感じながら暮らしている。

    山は高いし、海は深いし、隣町ですら遠い。

    想像できただろうか。

    私たちは、思ったよりずっとギリギリのライン上で生きているのだ。

    もし、スイカの上にティッシュがふわりとかかっていたら、たぶん、そっとしておいた方がいい。

    息を吹きかけるだけで、

    スイカの上の私たちは、全員死ぬ。


     
     
     
    いろいろなことに興味が向きます。なんと日本から出たことがありません。

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