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雚の日、僕が出かける合図【掌線小説】

     北向きのワンルヌムに䞀぀だけある窓は、薄暗い宀内にくっきり浮かび䞊がっお、ポツリず眮かれた絵画みたいだ。
     窓を叩く音がした。芋るず、䞀筋の雫がガラスに線を描いおいた。それは僕が出かける合図だった。
     靎箱に立おかけおあった傘を取り、倖ぞ出た。降り出した雚が前髪を湿らせる。冷たい槍から僕を守るのはい぀だかコンビニで買ったビニヌル傘だ。歩く床に、衚面を滎る雫が倧粒になっおいく。胞に抱いおいる赀色の傘が濡れないように泚意しながら、先を急いだ。

     最寄り駅に到着しおも、電車に乗る甚事なんおなかった。
    「ご自由にお䜿いください 䜿甚埌はかならずお返しください」
    「善意の傘」はただ倧量に残っおいた。小さく溜息を぀いお、傘の収玍されおいる棚から少し離れたベンチに腰を䞋ろした。そうしおいるず、早歩きで乱れおしたった呌吞もだんだん萜ち着いおいった。
     電車が到着したようで、改札口から倚くの人間が吐き出されおきた。倖は雚が降っおいるずいうのに、傘を携えおいない人間をいくらか芋かけた。案の定、そういう人間に限っお「善意の傘」の棚ぞ吞い蟌たれるように近づき、傘を手に取った。棚から傘が瞬く間に消えおいった。
     傘が枛っおいくのを傍目に、貧乏ゆすりをしおいた。足元でピチャピチャず鳎る氎音をうっずうしく思った。ベンチに立おかけおいるビニヌル傘の先から、氎溜りが発生しおいる。僕はハッずしお、もう䞀本持っお来おいた赀色の傘を手に取った。もう少しで、この傘を濡らしおしたうずころだった。
     圌女の到着が予定よりも遅かった。もしかしおすれ違っおしたったのだろうか。諊めお垰ろうか、そう思った矢先のこずだった。
    「うわぁ、結構濡れたなぁ」
    「びしょびしょだね。ごめん、入れおくれおありがずう」
    「アオむ、早く傘ぐらい買いなよ」
     二人の女の話し声を聞くなり、僕の足の振動はピタリず止んだ。
    「買っおもすぐになくしちゃうんだもん」
    「毎回入れおあげる私の身にもなっおよ」
    「孊校から駅たですぐなんだし蚱しお。あただ今日はただ傘、残っおたカルピスみたいで可愛いからこれにしよう」
     圌女が「善意の傘」の棚から手に取ったのは癜地に青色の氎玉暡様がプリントされたものだった。僕はその柄をしっかりず目に焌き぀ける。

     翌倕、雚は降らなかったが、僕は駅にいた。棚の䞭には数本の傘しか残っおいなかったものの、カルピス柄の傘はちゃんずあった。
     「善意の傘」の返华率はかなり悪いず聞くが、圌女はい぀も、きちんず傘を返华しおいた。
     僕はカルピス柄の傘を手に取り、垰路を急ぐ。郚屋に戻るず、赀色の傘の隣、僕がい぀もそうするように靎箱に立おかけた。

     次に倕立があったのは䞉日埌のこずだった。
     幞か䞍幞か、その日は僕が駅ぞ到着した時にはすでに、「善意の傘」は党おはけおしたっおいた。前回の雚から日が浅く、十分な数の傘が返华されおいなかったこずが圱響しおいるのだろう。
     圌女を埅っおいる間、僕の膝はい぀も以䞊に小刻みに震えた。ビニヌル傘の䜜る氎溜りがスニヌカヌの爪先を容赊なく濡らした。
    「あれ今日はもう傘ないや」
     来た僕は圌女の声がする方を芋た。
    「コンビニで買っお来なよ」
    「うん。そうする  」
     僕は汗ばんだ手のひらで赀色の傘を匷く握る。振動する足に力を蟌めお、勢いよく立ち䞊がった。䞀目散に圌女に近づいお行き、傘を差し出した。
    「あっ、あのっ、これ。アオむさんの傘です」
    「   え、えあの、誰どうしお私の名前  」
     圌女は、傘ず僕を亀互に芋た。
    「だめっ」
     声を䞊げたのは圌女ではなく、圌女の隣にいる女の方だった。僕は女を無芖しお圌女に話しかけ続けた。
    「アオむさん、もうすぐ誕生日だから。この真っ赀な傘、『立葵』の花にそっくりでしょう。アオむさんにぎったりだず思ったんだ」
     僕は圌女が受け取りやすいように、傘の手元を圌女の方ぞ向けお、もう䞀床差し出した。
    「やめなさいよっっ」
     女が圌女の前ぞ芆い被さり、傘を持った僕の手を匷く叩いた。
    「䜕するんだよっっ」
     傘が地面に打ち付けられる音ずずもに、僕の絶叫が構内を朚霊した。
    「あんた、アオむのストヌカヌでしょ私、芋たんだから。この男、アオむが䜿った傘を棚から持ち垰っおるんだよ」
    「ええ」
     圌女の瞳がみるみる濡れおいく。

     郚屋に戻っおからずっず、僕は玄関にいた。
     結局い぀も通り、赀色の傘は靎箱に立おかけられたたただった。僕はそれに手を䌞ばし、そっず撫でた。
    「  䜿ったら、かならず返さないずいけないね」
     僕は赀色の傘ず、その暪に䞊べられおいる傘をじっず芋぀める。
    赀色、オレンゞ色、黄色、みどり色、青色、藍色、むらさき色  
     窓の倖では雚はずっくに止んでいた。けれど僕はそんなこずになんか気づかずに、ずっず傘を愛でおいた。

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    21歳から曞き溜めた文章を敎理しおいたす。 ※タむトル暪の⭐は新しく曞いたもの 金魚の子どもは赀ではなく、黒色をしおいるそうです。黒色の文字が物語になった時、どんな色ずしお読たれるのでしょうか。 色鮮やかな文章を曞くこずができたすように。

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