寓話、人間を憎んだ男
※連絡事項、この記事だけだと、あまりにもダークサイド過ぎるので、同時公開でミラクルラッキー教団の新記事を書き上げました!
むかしむかし、
あるところに、人間を憎んでいる男がいました。
男は、これまでに何度もひどい目に遭わされてきました。
信じた人間に裏切られました。
助けを求めた人間に見捨てられました。
親切にした人間から、利用されました。
正直に話した人間から、笑われました。
男は、何度も傷つきました。
ついに男は、人間を信じることをやめました。
「人間は、みんな同じだ」
男は、そう思いました。
けれど、本当は違いました。
男は、人間を信じることをやめたのではありません。
人間を信じたいという気持ちを、捨てられなかったのです。
男は、人間を憎みました。
愛していたものほど、憎しみは深くなるものだからです。
⸻
やがて男は、奇妙な病気にかかりました。
誰かが笑っていると、自分を笑っているように感じました。
誰かが話していると、自分の悪口を言っているように感じました。
誰かが親切にすると、何か企んでいるように感じました。
誰かが黙っていると、自分を嫌っているように感じました。
世界中の人間が、男を傷つけようとしている。
男には、そう思えました。
男は、家から出なくなりました。
窓の外を歩く人間を見て、男は考えました。
「あいつも敵だ」
道の向こうで笑っている人間を見て、男は考えました。
「あいつも自分を馬鹿にしている」
男の世界から、敵が一人ずつ増えていきました。
⸻
ある日…
男は、一人の人間を殺めました。
その瞬間、世界が静かになりました。
誰も笑いません。
誰も話しません。
誰も男を見ません。
誰も男を裏切りません。
男は、初めて安心しました。
男は、その安心の中に、奇妙な感覚を見つけました。
万能感でした。
男は、その瞬間だけ、世界の中心にいるような気がしました。
自分が決めた。
自分が実行した。
世界はそれに従った。
男は、生まれて初めて、誰にも支配されない自分の本来の力を感じました。
「自分は…何でもできる」
男は、そう思いました。
⸻
男は、人間を殺めるようになりました。
一人殺すと、世界が静かになりました。
二人殺すと、もっと静かになりました。
三人殺すと、男は、もっともっと力を得ました。
男は、人間を殺すたびに万能感を得ました。
それでも、その感覚は、長く続きませんでした。
しばらくすると、また不安になりました。
また誰かが、自分を狙っているように感じました。
また誰かが、自分を裏切ろうとしているように感じました。
また誰かが、自分を笑っているように感じました。
結局、男は、また人間を殺しました。
殺す。
万能になる。
安心する。
また疑う。
憎む。
殺す。
男は、その繰り返しから、抜け出せなくなりました。
⸻
やがて、男は気づきました。
自分は、人間を殺したいのではない。
自分を傷つけた人間を、殺したいのでもない。
自分は、ただ、
「誰にも傷つけられない存在」
になりたかったのだ。
人間を殺すたびに、男は万能感を得ました。
けれど、万能感が消えると、男はまた、無力な自分に戻りました。
男は、また殺しました。
男は、人間を憎んでいました。
人間がいなくなれば、自分が万能であることを証明できません。
男は、人間を殺しながら、人間を必要としていました。
そのことに、男は気づいていませんでした。
⸻
ある日…
男は、最後の一人である人間を殺しました。
これで、世界から人間はいなくなりました。
男は、静かな世界を見渡しました。
誰もいません。
誰も笑いません。
誰も裏切りません。
誰も男を傷つけません。
男は、ついに完全な力を手に入れました。
男は、笑いました。
そして、初めて、自分が万能ではないことに気づきました。
もう、自分の万能を証明してくれる人間が、一人も残っていなかったからです。
男は、一人きりになりました。
男は、世界中の人間を憎みました。
結局、世界中の人間を殺しました。
男は、最後まで、自分は人間に傷つけられた被害者だと信じていました。
けれど、男が最後に殺した人間は…
殺されるまでに一度も、
誰一人として傷つけたことはありませんでした。
※連絡事項2、引き続きうたれ病発症中につき、積極的に交流できません。
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