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第3話 闇枡りの忍びず、光る緑のサむコロ


    

    【眠らない盀面】

    倜は、ただ終わっおいなかった。

    街で䞀番高い宿の、䞀番広い郚屋。

    窓の倖には、倜の街の灯りが现く揺れおいる。
    遠くでは銬車の音がし、どこかの酒堎から遅い笑い声が流れおきた。

    けれど、郚屋の䞭だけは静かだった。

    お台所係は、隣の郚屋で垃団をかぶっおいる。
    実況官は、長怅子の端に半分沈むように眠っおいた。
    荒野の盞棒は、ただ起きおいた。

    テヌブルの䞊には、圌の革鞄が眮かれおいる。

    札束。

    領収曞。

    倜間サヌビスの控え。

    そしお、修繕費になりそうな予感のする、ただ癜玙の玙。

    荒野の盞棒はそれを芋お、静かに垜子の぀ばを䞋げた。

    「  どうにも、マネヌが眠らせおくれない倜だ」

    小さき補䜐官は、神授のゲヌム具を膝の䞊に眮いたたた、箱のふたを芋぀めおいた。

    先ほどから、緑のサむコロが淡く光っおいる。

    それは、ろうそくの火ずは違う。
    月明かりずも違う。
    生き物の呌吞のように、光っおは匱たり、たた光る。

    「䜕か、来たす」

    補䜐官が小さく蚀った。

    荒野の盞棒の目が、すっず现くなる。

    「王子か」

    「いいえ」

    補䜐官は銖を暪に振った。

    「これは、王子さたの気配ではありたせん」

    その瞬間。

    郚屋の灯りが、ひず぀消えた。

    次に、窓際の圱が濃くなった。

    そしお、床に萜ちおいた现い圱が、ひずりでに立ち䞊がった。

    黒い圱は、人の圢をしおいた。

    顔は芋えない。
    けれど、額に巻かれた垃のようなものず、背に流れる長い垃だけが、闇の䞭でわずかに揺れおいる。

    「  闇枡りの忍び」

    補䜐官が、名を呌んだ。

    圱は答えなかった。

    ただ、静かに片膝を぀き、䞡手を構える。

    荒野の盞棒は、ゆっくりず立ち䞊がった。

    「客なら、フロントを通しおほしいずころだ」

    圱の口元だけが、わずかに笑った。

    「客ではない」

    䜎い声だった。

    「拙者は、詊しに来た」

    

    【荒野の䞀撃】

    荒野の盞棒は、䞀歩前ぞ出た。

    「詊し、か」

    圌は肩を回し、垜子を指先で少しだけ抌し䞊げた。

    「なら、悪いが手加枛はできないな。ここは高い郚屋なんだ」

    闇枡りの忍びの圱が、床を滑る。

    次の瞬間、圱は䞉぀に分かれおいた。

    窓際。
    倩井の梁。
    扉の前。

    どれも同じ姿をしおいる。
    どれも同じ気配をしおいる。

    荒野の盞棒は、笑った。

    「なるほど。面倒なや぀だ」

    その瞬間、神授のゲヌム具が開いた。

    ぱちり、ず音がした。

    箱の䞭に、䞀枚のカヌドが立ち䞊がる。

    そこには、荒野の盞棒の姿が描かれおいた。

    垜子。
    スヌツ。
    革の鞄。
    そしお、たっすぐ前を芋る青い目。

    カヌドの䞋に、透明な緑のサむコロが五぀転がり出た。

    ただし、そのサむコロは赀いオヌラをたずっおいる。

    実況官が、寝おいたはずの顔を䞊げた。

    「さあ始たりたした」

    荒野の盞棒が振り返る。

    「寝おたんじゃなかったのか」

    実況官は目を半分閉じたたた、声だけははっきりずしおいた。

    「寝おいおも、勝負は聞こえたす」

    荒野の盞棒の足が、床を蹎った。

    その動きは、速いずいうより重かった。
    荒野を駆ける銬のように、逃げ堎そのものを螏み朰す勢いがあった。

    「ブロンコ・チャヌゞ」

    䞀撃。

    盞棒の拳が、真正面の圱ぞ突き出される。

    赀いオヌラをたずった五぀の緑のサむコロが、盀面の䞊を転がった。

    止たる。

    けれど、目は揃わない。

    実況官が叫ぶ。

    「おおっず、荒野の盞棒、初撃は䞍発 五぀のサむコロ、しかし求める目には届いおおりたせん」

    忍びの圱は、するりず拳の先から逃れおいた。

    「ふふふ  」

    圱が倩井ぞ移る。

    「同じ技に䜕床もやられる拙者では  」

    「ただだ」

    荒野の盞棒は、䜎く蚀った。

    二撃。

    赀いオヌラが、もう䞀床盀面を走る。

    盞棒の拳が、窓際の圱を远う。

    五぀のサむコロが、再び転がった。

    䞀぀。
    二぀。
    䞉぀。

    同じ目が䞊びかける。

    けれど、ただ足りない。

    「惜しい 惜しいずころたで来おおりたす しかし、四぀目が揃わない」

    実況官の声が熱を垯びる。

    忍びの圱の口元が、勝ち誇るように歪んだ。

    「そこたでだ」

    「ただ終わっおない」

    荒野の盞棒は、垜子の぀ばを抌し䞋げた。

    䞉撃目。

    それは、このラりンド最埌の振り盎しだった。

    「枟身の䞀撃だ」

    床が鳎る。

    テヌブルの䞊のグラスが震える。

    盞棒の拳が、最埌の圱を远い詰める。

    赀いオヌラをたずった五぀の緑のサむコロが、盀面の䞊で跳ねた。

    実況官が叫ぶ。

    「荒野の盞棒、最埌の振り盎し これが決たれば、荒野の䞀撃、成立でありたす」

    サむコロが止たった。

    同じ目が、䞉぀。

    そしお、あず䞀぀。

    最埌のひず぀だけが、わずかにずれおいた。

    「足りたせん あず䞀぀、あず䞀぀が足りおおりたせん」

    忍びの圱が、静かに笑った。

    「惜しかったな」

    その蚀葉は、最埌たで続かなかった。

    神授のゲヌム具の奥で、緑の光が匷く灯った。

    

    【補䜐官の手】

    二枚目のカヌドが、静かに立ち䞊がった。

    小さき補䜐官のカヌドだった。

    その姿は、い぀もず同じ小さな姿をしおいる。
    けれど、カヌドの䞭の補䜐官は、盀面のすべおを芋䞋ろしおいた。

    赀いオヌラをたずった五぀のサむコロの暪に、小さな緑の札が珟れる。

    文字が浮かぶ。

    補助。

    実況官の声が䞀段高くなった。

    「ここで補䜐官 ここで補䜐官です 小さな手が、盀面を倉えようずしおおりたす」

    補䜐官は、迷わなかった。

    「盞棒さん   そのたた、少し」

    「あず䞀぀、足りないんだろう」

    荒野の盞棒は、盀面を芋ずに蚀った。

    補䜐官は小さくうなずく。

    「はい。けれど、届きたす」

    盞棒は、口の端を少しだけ䞊げた。

    「出たな、知将」

    補䜐官は、盀面に手を䌞ばした。

    觊れたのは、サむコロではない。

    最埌の䞀぀の目に残っおいた、わずかなずれだった。

    緑の光が、ひず぀のサむコロに流れ蟌む。

    ころり。

    そのサむコロだけが、静かに向きを倉えた。

    同じ目が、四぀揃う。

    盀面の䞊で、赀いオヌラが䞀盎線に぀ながった。

    実況官が叫ぶ。

    「揃いたした 揃いたした 補䜐官の補助により、荒野の䞀撃、成立でありたす」

    だが、闇枡りの忍びの圱も、ただでは終わらなかった。

    䞀瞬、圱の足元に青いオヌラが灯る。

    透明な緑のサむコロが、今床は青い気配をたずっお転がった。

    防ぐための目。

    逃れるための目。

    しかし、それらはばらばらだった。

    青いオヌラが、ふっず消える。

    荒野の盞棒は、もう䞀床床を蹎った。

    今床は、迷いがない。

    䞉぀に分かれた圱のうち、ひず぀が逃げ遅れる。

    「悪いな」

    盞棒の拳が、圱を貫いた。

    「宿代の分くらいは、働かせおもらう」

    闇枡りの忍びの圱が、黒い玙片のように砕けた。

    ぱらぱらず、闇が散る。

    それは、本䜓ではなかった。

    闇枡りの忍びが眮いおいった、薄い圱人圢のひず぀。

    その足元で、黄色いチップがひず぀、光を倱った。

    残った二぀の圱は、少しだけ距離を取った。

    片方の圱が、䜎く笑う。

    「芋事」

    もう片方の圱が、倩井の隅ぞ沈んでいく。

    「今宵は、ここたで」

    「埅お」

    荒野の盞棒が蚀った。

    だが、圱はもう薄くなっおいた。

    「神具を持぀者。盀面を読む者。荒野を駆ける者」

    忍びの声は、郚屋のあちこちから聞こえた。

    「いずれたた、闇の䞭で䌚おう」

    最埌の圱が、窓の倖ぞ流れる。

    倜の街に溶けるように、闇枡りの忍びは消えた。

    

    【黄金の小片】

    戊いが終わった郚屋には、沈黙が残った。

    いや。

    正確には、沈黙だけではなかった。

    倒れた怅子。
    ずれたテヌブル。
    床に萜ちたクッション。
    少し裂けたカヌテン。

    そしお、荒野の盞棒の革鞄から飛び出した札が、ひらり、ひらりず床に舞っおいた。

    実況官は、その光景を芋お、なぜかただ実況しおいた。

    「勝負は終わりたした しかし、郚屋の被害は終わっおおりたせん これは宿偎ずの第二詊合が予想されたす」

    「やめおくれ」

    荒野の盞棒は、垜子の぀ばを䞋げお苊笑した。

    「考えたくない珟実を実況するな」

    その時、隣の郚屋の扉が、そっず開いた。

    お台所係が、垃団を肩にかけたたた顔を出す。

    「  終わりたしたかぁ」

    補䜐官がうなずく。

    「はい。ひずたずは」

    お台所係は、ほっず息を吐いた。

    「怖くお、お垃団かぶっおたら  寝おたしたぁ  」

    そう蚀っお、少しだけ頬を赀くした。

    実況官が感動したようにうなずく。

    「たさに平和の蚌です」

    「違うず思う」

    荒野の盞棒が蚀った。

    補䜐官は、神授のゲヌム具ぞ目を戻した。

    さきほど光を倱った黄色いチップの暪に、小さな黄金のチップがひず぀増えおいた。

    それは、光っおいるわけではない。
    けれど、ただの金属ではないように芋えた。

    実況官が身を乗り出す。

    「これは  勝利点、でしょうか」

    荒野の盞棒は眉をひそめた。

    「勝利点」

    「詊合や勝負で、勝ちを瀺す点です」

    「勝利っおのは、財垃に入れお数えるもんじゃないず思うがね」

    盞棒は、床に萜ちた札を拟いながら蚀った。

    補䜐官は、黄金のチップを芋぀めたたた、静かに答えた。

    「はい。私も、そう思いたす」

    盀面の奥で、緑のサむコロがたた少しだけ光る。

    「ですが、この神具は  勝利の圢を、䜕か別のものずしお集めようずしおいるようです」

    「䜕か、ずは」

    実況官が尋ねる。

    補䜐官は、しばらく考えた。

    王子が消えた郚屋。
    萜ちた箞。
    牛䞌。
    地䞋マッスルバヌ。
    垰る堎所を倱った実況官。
    そしお、今の戊い。

    それらを぀なぐものは、ただ蚀葉にならない。

    けれど、神授のゲヌム具は、それを盀面に刻んでいる。

    「たぶん」

    補䜐官は蚀った。

    「友情を呌ぶための、蚘録です」

    荒野の盞棒は、黄金のチップを䞀床芋お、それから荒れた郚屋を芋た。

    「友情で宿の修繕費が払えたら助かるんだがね」

    その蚀葉に、実況官が深くうなずいた。

    「名蚀です 今倜の締めにふさわしい」

    「締めるな」

    盞棒は、飛んでいた最埌の札を拟い䞊げた。

    「ただ請求曞が来おいない」

    

    【盀面ログ】

    蚘録名闇枡りの忍びず、光る緑のサむコロ

    確認された人物
    小さき補䜐官
    荒野の盞棒
    実況官
    お台所係
    闇枡りの忍び

    初めお確認された神具の動き
    盞棒カヌドの出珟
    攻撃時、赀いオヌラをたずった五぀の緑のサむコロが転がる
    䞀床の攻撃で、最倧䞉回たで振るこずができる
    同じ目が四぀揃うず、荒野の䞀撃が成立する
    補䜐官カヌドによる補助
    補助によるサむコロの目の調敎
    忍びの圱による青い防埡の気配
    黄色いチップの枛少
    黄金チップの増加

    未解決事項
    闇枡りの忍びの本䜓はどこにいるのか
    黄色いチップず黄金チップは䜕を瀺すのか
    神授のゲヌム具は友情パワヌを量っおいるのか
    王子の倱螪ず、この詊緎の関係

    備考
    お台所係は寝おいた。
    実況官は寝おいおも実況できた。
    赀いサむコロは、ただ出おいない。
    宿の修繕費は、ただ䞍明。

     
     
    King's Court ずいうサヌクルで1994幎からコミケにおボヌドゲヌムを頒垃しおいたした。 キャンペヌン型TRPGコンベンション、猫公囜、フェルムヌムシリヌズを4-5幎皆様ず楜しみたした。 この床同じ䌚堎ぞ垰っおたいりたした。 新芏ボヌドゲヌム制䜜䞭

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